原告の松木さんは課長代理になって十数年です。その間、チーム内の役割はメンバーだったりリーダーだったり、いろいろだそうです。この日の尋問で取り上げられたプロジェクトの場合、東和システムの下請けメンバーとチームを組み、松木さんをリーダーとして客先に常駐しました。松木さんは、下請けの選定はしていません。

松木さんがこのプロジェクトを担当していた間の出勤時間は定時は 8:40 です。客先の進捗会議が 9:00 からで、それに間に合う時間ということで、プロジェクト全体で決めていたそうです。

客先に常駐する場合、出勤時間を客先に合わせるというのは、IT業界では珍しくありません。また、多くの社員を客先に常駐させている会社の場合、自社の定時出勤時間を決めてその通りに実施するのは無理がありますから、フレックスだということにしておいたりします。ちなみに、私の場合、客先もフレックスです。

松木さんといっしょに仕事をされていた東和システムと下請けとの間の契約についての詳細は、この裁判の本題でもないこともあってお聞きできませんでした。作業場所が東和システム社内ではなく客先ですから、派遣法に基づく派遣は想定外とします。もし、派遣法に基づく派遣だったとしたらこの作業形態は違法です。

それで、受託・委託などの名称の契約だったとして、松木さんは東和システムの下請けを含むチーム全体に対して指揮・命令をしたのか?とか、下請けの中にもリーダーがいたはずだよな?とかいろいろ疑問がわいて出てきます。どうだったとしても無理な形態になっていることには相違ないのですが、多重請負はこの業界の常態です。

「本当の会社」

また私の話をしてしまいますが、私の場合、今 ( 2008年 ) 、常駐している客先でありプロジェクトの総元締めである大手電機メーカーから見ると、下請けの下請けの下請けの下請けになります。で、プロジェクトの中では、メンバーがたった一人しかいない、つまり私だけのサブチームのリーダーです。システムのある基盤技術についてサポートする特殊な役割で、自分の仕事の内容の具体的なところは自分で決めています。そのため、日常の仕事ではあまり矛盾を感じなくて済むのですが、そんな特別な人はこのプロジェクトでは私だけです。他の外注さんたちのうち半分くらいは、 2次請け(下請けの下請け)であることが公になっています。さらにその半分くらいは、おそらく 3次請けです。もしかすると私と同じような 4次請けの人もいるかもしれません。

IT業界では、どの客先に行っても、「本当の会社」という言葉は禁句です。

 
現場で上司と部下が逆転 目次 50数人の課長が登場