オジサンのつぶやき
   【偽救出劇】

3月20日にイラク侵略を開始した米国だが、当初豪語していた思惑とは
異なった事態の進行に3月末にはブッシュ政権は追い詰められていた。
経済制裁のために弱り果てた貧困国の軍隊が執拗な抵抗を見せた。
米軍は混乱し、兵士は疲れていた。作戦が批判され、「誤爆」や「誤射」が
追求された。こんな状況下で4月2日午前3時、カタールの中央指令本部で
緊急の発表があったことは既にご存知であろう。
今ではすっかりバレてしまった「国防総省」の脚本・監督の「ジェシカ・リンチ救出劇」である。
「リンチ」とは日本では物騒な名前に聞こえるが、彼女は19歳の白人の上等兵である。
この「大本営発表」は全米はおろか世界中を駆け巡った。
しかしこの「戦場のヒロイン」に関しては報道と異なる様々な事実が明らかにされ、
英BBCテレビは5月18日に現地での調査に基づき、救出劇はペンタゴンによるプロバガンダ
と結論したのである。しかし米国防総省はこの件に関しては全く沈黙を続けている。
現在、米国次期大統領候補として民主党からは9人の候補者が出現しているが、知名度から
「9番目の候補者」と言われた人物が、6月2日国防総省のラムズフェルド長官に対して公開の
質問状を出した。先ほどその全訳を入手したので以下に紹介する。

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下院議員:デニス・クシニッチ

ラムズフェルド長官殿
私はジェシカ・リンチ上等兵の救出をめぐる論争にピリオドを打つために、あな
たからのお力添えをいただきたく、この手紙を書いています。

アメリカ特殊部隊がイラクの病院からリンチ上等兵を救出してしばらく、多くの
アメリカ政府当局者は、全国のマスコミにこの出来事をめぐる状況を話しました。
そしてマスコミは、リンチ上等兵は銃弾とナイフによる傷を負い、イラクの担当
官からは虐待され、敵の砲火の中へと連れ去られたと報道しました。

また、リンチ上等兵は記憶喪失になっており、自身の救出も思い出せないとも報
道していました。アメリカ政府筋は匿名を希望しましたが、彼らの報告は国防省
が修正することなく広範囲にわたって報道されました。実際、記者団に公表され
たものは軍専属のカメラマンが暗視装置を使って撮ったビデオテープを編集した
もので、国防省はその報道を正確なものとしたかのように見えました。

また、このビデオを発表するに当たり、ドーハ滞在のアメリカのスポークスマン
であるビンセント・ブルックス軍司令官は「何人かの勇者たちが命を危険にさら
して救出したのだ」と話したとされています。(注:1)

しかし、つい最近、逆の報道記事が浮上してきました。根本的に、この新たな報
道は、彼女の救出が元々テレビ向けに計画されたものだということを論じていま
す。特に、実際はリンチ上等兵が弾丸もナイフによる傷も受けていなかったこと
を明らかにしています。

またこの記事は、米軍は救出行動を起こす前にイラク軍が全く病院を警備してい
ないことを知っていたと伝えています。イラクの医療スタッフは、献血してまで
もリンチ上等兵を慈悲深く手当てしたと伝えているのです。

さらにイラクの医療スタッフは、本当はリンチ上等兵を2日早く救急車で運ぼう
としましたが、米軍の射撃に遭ってしまったとも伝えています。そしてまた、イラク軍は
リンチ上等兵を救出した米軍に対し、発砲はしていないということです。

このショッキングな内容の報道は、国防総省の演出劇が「今までで最も驚くべき
報道操作のひとつ」であるということを主張しているのかもしれません。
(注:2)

そして、リンチ上等兵の父親グレッグ・リンチは、記者団に「ジェシカは記憶喪失に
などなっていない」と話しています。そして父親はリンチ上等兵を救出した
軍の行動について詳しい話を求められると、こう言いました。「今はこのことに
ついて話さないことになっているのをご存知でしょう」。

これでおわかりのように、最初に報道された事実と今回の報道方法とでは、大き
な違いがあります。国防省の立場はわかりますが、この最近の報道は「事実から
すれば法外であり、明らかな虚偽であり、根拠のない報道」です。(注:3)

同時に国防省職員は、今になって彼らが当初述べていたことを修正しているよう
です。例えば、同省のスポークスマン、ブライアン・ホイットマンは、「米軍は
病院に突入した時、アメリカ軍が銃火を浴びたとは言っていない」と話したとさ
れています。(注:4)

私は、国防省が起こったことを全て明らかにする時がきたと確信しています。

まず、リンチ救出時の軍行動で専属カメラマンが撮影したビデオテープを未編集
で一般公開するよう命じて下さい。
今回の国防省が行ったビデオテープ編集、公表のやり方には多くの論議が巻き起
こっています。

いくつかのメディアの代表はアメリカ国民がこれら双方の対立した主張に対し、
それぞれ個人が独自の見解を持てるようテープの最初から終わりまで全てを公開
するよう求めています。国防省にこの要求を拒否する理由はないでしょう。

それから正式に答えていただきたいと思います。リンチ上等兵の健康状態と救出
行動についての質問です。

--米軍は病院内でイラク軍に遭遇したのでしょうか?

--米軍部隊は救出行動の間に発砲したのですか?もし、そうならば、交戦の内容
を具体的に述べて下さい。
--米軍はイラク軍が病院を明け渡したという情報を持っているのですか?

--リンチ上等兵は銃弾、またはナイフによる切り傷を負ったのでしょうか?

--政府当局はイラクの医療スタッフがリンチ上等兵をアメリカ軍に引き渡そうと
したという情報をつかんでいるのでしょうか?

--米軍は時を選ばずに救急車に発砲したのですか?


最後になりましたが、私はイラク軍がリンチ上等兵を捕らえたことについての調
査を命じたのは、国防省だと理解しています。
しかしまた、その一方で調査団はリンチ救出時の状況の検証については命じてい
ないとも思っています。

この事件についての論争に照らせば、国防省が現在行っている調査は、同時にリ
ンチ救出を取り巻く事実調査を包含するべきではないかと思います。

もし、このお願いについてお聞きになりたいことがあれば、こちらの立法補佐官
であるジャロン・バークに連絡して下さい。お返事をお待ちしております。

敬具

デニス・J・クシニッチ (国家安全保障、テロ、国際関係委員会委員長)

(注釈)
1 The Truth About Jessica, The Guardian (May 15, 2003)
1 ジェシカの真相 ガーディアン紙(2003年5月15日)
2 ibid
2 同紙
3 Pentagon Aims Guns at Lynch Reports, Los Angeles Times (May 29, 2003)
3 国防総省、リンチ報道を操作 ロサンジェルスタイムス(2003年5月29日)
4 U.S. Rejects BBC Lynch Report, BBC (May 20, 2003)
4 米 BBCのリンチ報道を棄却 (2003年5月20日)

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<2003.6.22>



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