35周年を契機に、MICの組織化を

第37回定期総会、記念講演、「祝うつどい」を開く


 去る10月17日、MIC第37回定期総会が千代田区のカンダパンセで開かれた。
 碓井副議長の開会の挨拶の後、議長団に石川さん(広告労協)、関根さん(映演共闘)を選出して議事に入った。幹事会を代表して挨拶に立った今井議長は、前日の地方MICの代表者会議の参加が、固定化・困難化していることに触れつつ、MICのこの一年の活動も再販制撤廃阻止、労働法制改悪反対の闘いに一定の前進面はありながら、MICへの期待に十分こたえられなかった。マスコミ関連の組合活動が自らの仕事にどこまで反映できるのか、35周年を迎えて今の閉塞状況を打ち破る方針を確立して欲しいと訴えた。
 来賓の挨拶は総会後の「35周年のつどい」にお願いしたため、直ちに経過報告・方針案の提案(葛西事務局長)、決算・予算の提案(白石事務局次長)、会計監査報告(田島会計監査)を受けて質疑応答、討論を開始した。午前中5人、午後10人の発言を経て、総会宣言、特別決議を採択、役員選出の報告を岩崎副議長より受けた。三枝、江草両幹事の退任あいさつの後、今井議長が新役員を紹介、新しく副議長に選出された服部副議長(新聞労連)が、閉会の挨拶を述べて総会を終了した。(参加者82人)総会を終わらせた同じ会場で、石川真澄さん(新潟国際情報大学教授)による35周年の記念講演を聞いた。(要旨別掲)
 記念講演後は会場を日本教育会館に移して「MIC35周年を祝うつどい」を開催した。
つどいには、来賓、新旧幹事をはじめ、組合代表など185人が出席、旧交を暖めあった。




総会発言
●石井さん(茨城新聞)
●水久保さん(新聞労連)
●小林さん(電算労)
●田島さん(電算労)
●福山さん(東陽社分会)
●葛西さん(新聞労連)
●岩崎さん(民放労連)
●瀬間さん(出版労連)
●鎌田さん(全印総連)
●緒方さん(映演共闘)
●山田さん(関西MIC)
●磯崎さん(民放労連)
●屋宜さん(沖縄マスコミ労協)
●豊田さん(ロイタージャパン)
●西川さん(偕成臨時労組)
●岩間さん(音楽ユニオン)
●吉田さん(出版労連)
<閉会のあいさつ>
●服部さん(新聞労連)



●石井さん(茨城新聞)
 出版センターで働いていた村上靖夫さんが 均等 20桁 88年2月になくなった。88年11月、12月の2ヶ月の休みが一日もなく、本作りに携わっていた。残業は11月―208時間、12月―190時間である。持病として高血圧であった。過労死として申請したが却下され、再審査も却下され95年から裁判に入っている。過労死の認定の幅が狭い。亡くなる前の一週間の過重労働がないと認定されない。もっと労働者の側に立って、解釈してほしい。何のための法律か、全国各地で過労死がおき、家族の悲しみ、働いているものの不安もある。12月の20回目の公判で結審となり、来年2〜3月にも判決が予想される。流れはさかのぼって認定される方向にある。勝訴は他の事件にも希望を与える。水戸地裁宛の個人・団体署名にご協力をお願いしたい。


●水久保さん(新聞労連)
  MIC関連の労災(過労死)認定運動を報告する。新聞労連東日印刷労組の三浦恒夫さんのケースでは、三田労働基準監督署は不当にも控訴したが、東京高裁は今年3月26日、高裁判決が確定し「業務上」が認められた。スポニチ労組の清水理義さんの事件では、遺族が弁護団、スポニチ労組の支援を受け再審査請求を行っている。毎日新聞西部支部の上尾昌人さんの事件では昨年12月の泊まり込み執行委員会直後の移動中にくも膜下で死亡したが、近々労災認定を申請予定。新聞労連の時事通信の堺裕介さんが96年4月に過労死したケースで遺族が労災認定申請を行い、労災認定を訴える署名活動を始めた。
 朝日新聞池上販売店に廃業を通知した事件では、突然廃業をいい渡され、19名のうち5名が組合に加入し、朝日新聞に対し操業継続を要求する団体交渉を申し入れたが拒否された。このような状況の中、過労死に関する基準作りの勉強会が裁判所でもたれたが、中心は原因説の排斥の方向で検討され、あわせて労働基準法改悪と関わってきており、今後のたたかいが重要だ。



●小林さん(電算労)
 労働者派遣法の改悪がねらわれている中、組織内労働者、組合組織率が下がっている。
 組織の問題についてMICはどう対応しているか。議案書42ページでは、「体制が確立できず、ほとんどの課題を積み残した」とあり、54ぺ−ジでは「積み残した課題を引き続き取り組む」と述べているが、以下の点で質問と意見を述べる。
1 各単産の組織拡大運動の交流会―オルグ学校の開催・・・というが、各単産の組織拡大の把握の実態、仕方はどうなっているか。
2 フリーや不安定雇用の労働者の組織化をめざし、その受け皿作りの研究や・・・とあるが、MICの大手〜中小企業の中でどう組織化するか、具体的なイメージを。
3 デザイナーの組織化・・の中で、対象の幅 広い「デザイナー」とはどういう人を指すか。
4 職能的、横断的組織化を念頭に入れた運動をしなければならない、と思う。


●田島さん(電算労)
 MICホームページに「MIC会議室」を用意した。この会議室は、各単産の活動やイベント、最新情報など堅い話、柔らかい話題も何でも自由に書いてもらうコーナーだ、是非活用してほしい。今日の総会に配布した議案書やたくさんの資料も、いずれホームページで見られるように成るので組合員に宣伝してほしい。


●福山さん(東陽社分会)
 朝日新聞社の専属広告代理店・東陽社の「解散・全員解雇」事業を引き継いだ新会社朝日エージェンシーへの組合員の雇用を求めて闘って4年7ヶ月。
 10月2日、都労委より救済の勝利命令が出された。内容は東陽社の解雇は撤回し、東陽社の社員でなくなるまで賃金の支払い。もう一つは、朝日新聞社は組合が朝日エージェンシーへの採用条件について団交を申し入れた場合は、誠意を持って応じなければ成らない、と命じています。異例で、性急な東陽社の解散・解雇は組合運営への支配介入であるとし、朝日新聞社にも「労組法」でいう「使用者」と認めた画期的なものです。
 組合いの団交申し入れに対し、朝日新聞社は拒否の回答で、さらに都労委命令の取り消しを東京地裁に提訴する伝えてきた。私たちは朝日新聞社が都労委命令に沿って、早期全面解決を図ること、社説で読者・国民に示している立場で解決を図るよう強く求めて闘っていく決意だ。MICでも最重点争議として位置づけていただいた。引き続きご支援をお願いしたい。


●葛西さん(新聞労連)
  「新聞が消えた日」という本を新聞労連・産業政策部が発行し、販売店などに大変売れている。先月、北海タイムス、石巻新聞の二つの新聞が経営危機でなくなった。広告の落ち込みは東京の大手紙が前年比95%で、地方はより悪く、東北は85%〜75%、6兆円の総広告費のうち新聞の占める割合は、4〜5年前で25%、昨年は21%、新聞離れが起きている。クライアントの信用度が低下している。単価が高い割に効果がないと。新聞紙面の信用度も低下している。全国的に経営危機が浮上し、このまま契機低落が続くといくつかの新聞が消える。
 経営者は「パイは大きくならない」と徹底的な合理化をはかっている。縮小再生産、技術職のリストラ、外注、分散工場、労働強化が推し進められている。技術革新の中、上からの押し付け、下からの反発で中間管理職が板挟みで自殺も増えている。なかなか有効な対策が取れないでいる。大手紙は懸賞付きで新聞を売る事態で、これでは再販制は守れなくなる。再販制は守らねばならない。MICでの共闘の構築に努力したい。
 労働法制改悪で裁量労働が広がる。みなし労働、変形労働を新聞は繰り返してきていて、過労死などを生み出してきた。時間で働くのだ、というようにしないと新聞労働者のようになってしまう。


●岩崎さん(民放労連)
 民放労連では組織内で“デジタル化時代の民放労連の視座"という本を今年の夏に出し、大幅増刷をしている。このデジタル化の問題だが、地上波デジタル化については、郵政省が21世紀、2010年にもアナログ放送を廃止するという、はじめにスケジュールありきのデジタル化が民意的、国民的にどうなのか意見書を提出した。デジタル化の問題は民放各社の経営問題に関わり、働くものにも最大の課題である。
 そして、和歌山の「毒入りカレー事件」だが、8月の末からある家族の保険金詐欺疑惑となって現在に至っているが、当初は無差別殺人ということで、狭いある地区の全員が疑われて、その顔が撮影され、保険金詐欺疑惑が出ると今度は、Xデーがいつかで24時間の張り込み取材が行われた。この報道の被害は想像を絶するものがある。なぜこういう事態になったのか―(1)報道の横並びの問題があり(2)松本サリン事件や神戸少年殺人事件のように、報道機関が特定の人物を犯人視していくーそういう報道が問題で、こうした「報道被害」を続けていると、国民の信頼を失うことになり兼ねない、この事件でもこのことが問われている。
 また、テレビの子供の有害な放送を規制するという「Vチップの導入問題」がある。そして一方で、自民党が問題のあるテレビ番組をを事前にチェックするという「全国モニター制度」をつくった。これは当局の放送の内容への介入である。先程述べた国民の信頼が失われていれば、権力の放送内容への介入を容易に招くことになる。本当に信頼される報道をしていくためにどうあるべきか、どうすべきか、広く議論をしていきたい。


●瀬間さん(出版労連)
 3点に絞って発言したい。(1)は、労働法制改悪とのたたかいと今後の運動あり方の問題だ。MICが主催した2.28の「労働法制シンポ」は画期的なものだったが、その後の運動を振りかえると、全体として幹部の運動で終わった感じがする。出版の場合は特別委員会を設置してがんばったが、これからも引き続きこの委員会を存続させて、法改悪の中身や政府答弁の中身を再度検討し直し、労働現場の実態を踏まえて出版としての一つの基準作りをやっていきたい。(2)出版産業は大変深刻な状況だ。アルバイトや不正規雇用者の切り捨てのみならず、正社員の賃金カット、一時金のカットなども出てきた。倒産等も予想されるが、労働組合が働く人の雇用を守れなければその存在を問われる。中小経営が多いこともあって、いびつな産業状況のなかで正常な労使関係を築くくことが中心の問題だ。労働組合として産業への提言もしていけるよう努力したい。(3)労働組合として、組織問題はなかなか遡上にあがりにくい問題だ。ご存知のように講談社労組の脱退問題もあり、出版労連としての今後の組織のあり方をまじめに前向きに検討していきたい。


●鎌田さん(全印総連)
 印刷は消費に直結した産業であり、産業構造の変化に伴う倒産も多く、実に7.5%の事業所がなくなった。大きな要因として長期不況とデジタル化があげられる。特に印刷産業そのものを変えていこうとする凸版と大日本の動向がある。この2社は、マルチメディアに対する設備投資を年間各300億円近くかけ、近々くるといわれる第2次著作権ともいえるデジタル情報を含めた情報加工産業への転身を準備している。たとえば著名な小出版社の印刷に参入して、利益を度外視して本の内容を自社のデータに取り込む。またヨーロッパの美術情報も独占し、許可なくしては開示できないなど、デジタル化をどんどん進めている。それに伴いコミックなど取り込んだフィルムをページいくらで切り売りも企画されており、返品なし流通なしの新しいネットワーク化をめざしている。また出版社の頭越しに著者と接触し、直接版権を持つ形も現れている。デジタル化しないと仕事がないこの時代では、アナログの製版会社など倒産が相次いでいる。今後デジタル化7兆円市場の大半を大手2社で独占する可能性もあり、印刷産業は大きな変化を求められているだけでなく、国際的な視野も含めた時 代の波が大きく迫っている。きわめて厳しい状況にあるといわざるを得ない。


●緒方さん(映演共闘)
 MIC幹事で時短・労働時間・労災担当として労働基準法改悪反対闘争などについて感じていることを発言したい。映画の現場では長時間労働がひどくなっているが、この本質は裁量労働と変形労働時間でもある。大部分の労働者は労働条件を決めるのは労働協約で労働基準法が決めるとは思っていない。裁量労働は再来年の実施となっているが、マスコミの職場には既に入ってきている。MICでも労働時間問題をどうするか、みんなで集まって考えることが必要だろう。ヨーロッパではインターバルがきめられており、例えば仕事年毎の間は10時間以上と協定されているように。
 映画産業では、東映が始めて経常利益が赤字となった。一方、シネマコンプレックス=シネコン(複合映画館)が急増して、ヒット作品もあり入場者数は増えている。通産省もうまくいっている例としてみているが、さらに映演共闘として研究し十分対応できるようにしていきたい。


●山田さん(関西MIC)
 関西MICでは、月一回幹事会を開き、関西フィルなどの対策会議も持っているが、産業政策委員会は開店休業状態であるのが残念だ。98春闘の取り組みの大きな特徴は、大阪春闘共闘委員会に加盟して2年経過しMICとして活動した。3月19日をミュージックの日として、コンサート、ミュージックを開催した。98春闘では春闘特集号を発行した。労働法制改悪については、現場の実態調査に取り組んだが、MIC全体としての協力、共闘がかけていた。今期の人権と報道シンポジウムでは、神戸須磨事件の検証を行い、12月5日には、和歌山カレー事件を取り扱う。7月の愛と平和のつどいでは、助成連絡会を中心に取り組んだ。更に6月は船つり大会、12月には歌う忘年会も開催した。今後のMICの課題としては、ジャーナリズムのあり方、相互の職場連帯、産業政策委員会の充実などがあげられる。


●磯崎さん(民放労連)
 中労委労働者委員25期候補、自称“風穴候補"といいながらやってきた。昨年のMIC定期総会で民主化対策会議に正式参加を決め、MICでも民主化プロジェクトをつくり、かってない取り組みをしてきた。もしかしたら25期はいけるのではないかと思われたが、結果は連合独占に終わった。5期10年にわたる偏向任命となった。連合の中でも世襲制批判の声が上がり、連合全国一般労組の松井氏が新しく委員に任命され、鉄鋼労連の候補が外された。津軽民謡に「小石流れて、この葉沈む」という歌詞があるが、中労委任命ではまだ正義が引っ込んでいる。
 しかし今回の取り組みは無駄ではなかった。複数の記者から「労働省内でも悩みがあった」「26期は風穴が開けられそうだ」という話しを聞いた。26期に向けて労働省内では
1 系統別の組織調査のやり方を改める
2 公益委員の任命に関する同意見を「多数 決」制に改める方向を検討している
3 地労委の問い合わせに「自判」(自分で 判断)で行うよう対応する
ことなどを検討している模様である。
 26期には風穴を開けることができそうだ。信頼の置ける労働者委員を中労委に送り出すために、更なる取り組みを進めていこう。


●屋宜さん(沖縄マスコミ労協)
 時間がないとのことで、一言だけ。沖縄マスコミ労協としては米軍の基地の問題を発言しておきたい。政府はあらゆる手を使って基地を維持しようとしている。昨年は地元の新聞に政府広報を掲載するなど、国民の税金を使っての介入があった。一地方だけではこれらの攻撃を打破するのは難しい、全国の皆さんのご支援を受けながらがんばっていきたい。


●豊田さん(ロイタージャパン)
 英国通信社ロイタージャパンでは労働者いじめ、人の入れ替えが盛んに行われている。
最近では複数の社員にコンピュータのモニターをあげておきながら、組合の元委員長と前委員長にだけ「会社の機材を持ち出した」と言い掛かりをつける事件があった。前委員長が退職に追い込まれた後、元委員長は五日間の出勤停止処分となった。元委員長の雇用が守られたのは運動のお陰だ。ロイター社がこうした暴挙に出た理由は、1春の2ヶ月連続昼休み社前集会への報復2争議を亡き者にして、会社のイメージをクリーンにしたい等の説 がある。おりしも都労委、地裁での審理がこの秋終了する。これからの動きが注目される。


●西川さん(偕成臨時労組)
 私たちは最初、社員で組織する組合に加入を希望したのですが、難しいというのでやむなく臨時労働者のみの組合を作りました。30 数名で結成した直後に会社からの攻撃で9名が解雇されました。この件は一応解決したのですが、その後職場―商品管理部門を埼玉に移す、ということで全員が解雇され、現在まで17年に及ぶ争議になっています。都労委、裁判と敗訴になったが、その後出版、マスコミ、地域の支援を受けてたたかいは大きく広がって、社内外からも早期解決の声があがっている。引き続きのご支援をお願いしたい。


●岩間さん(音楽ユニオン)
 私たち東宝オーケストラは、宝塚の東京公演の演奏に長く携わってきたが、一昨年当方より「東京宝塚劇場の立替えに伴い、オーケストラを解散・解雇する」という通知を一方的に受けた。それを機に、今年から自主運営のオーケストラとして新しい一歩を踏み出し、2001年の新劇場のオープンに当たって再び参入すべくがんばっている。
 各組合で催しや集会があれば是非演奏と訴えの場を提供してほしい。


●吉田さん(出版労連)
・教科書攻撃の現状ー報道では沈静化しているといわれているが、以前より悪質に成っている。靖国神社の記述について、参詣新聞が2社を名指しで攻撃、従軍慰安婦の問題でも同様。地方自治体でも取り上げられ、版元・著者宅に脅迫状が郵送されている。最終的には憲法改定をねらったものだと考えられる。
・教科書検定ー検定も緩和されたといわれているがそうではない。家庭科や書道といった落とす理由が見えないものまで落とされている例もあり、再提出を断念出版社も出てきた。其れと同時に自主規制もどんどん進んでいる。しかし、家永判決がよい影響を与えているのも事実である。また横浜訴訟では、現在の検定に問題があるという点で画期的な判決も出ている。
・2002年問題―2002年から学校は週五日制になる。時期を同じくして4年サイクルで行われていた検定が、小中高同年に行われることになる。これにより過密日程を強いられ、人手不足となり発行断念、貸し渋り等で会社経営も悪化することは明らかである。これらすべてを考え合わせると、教科書点数を減らし国定教科書に近いものをつくろうとする文部省の最終方針に近づいているといえる。また教科書予算も年々減り、今後つくり手の根源的な意識の問題にぶつかっていくのではではないだろうか。


<閉会のあいさつ>

●服部さん(新聞労連)
 総会に一日参加して、MICが抱える広さと深刻さは日本が抱えている問題でもあるとの危機感をもった。我々の一つ一つの取り組みがひいては、21世紀の日本を引っ張って正しい方向にむかわせる道でもある。35周年の節目の年に就任してやる気が出たし、日本を引っ張る産別組織にするためにがんばりたい。今日の総会で出されたことを問題提起として受け止めて、解決に向けてお互いに努力をしていきたい。今後ともよろしく。


 

(1963.11.9〜1998.10.17)
「MIC35周年を祝うつどい」    盛大に開かれる

 朝からの雨もやっと上がって、つどいの会場となった日本教育会館はMIC定期総会を終えた代表たち、直接駆けつけた来賓やOBたちで、にぎやかな歓談の輪があちこちにできた。開会の挨拶に立った今井議長は、この10年間のMICの活動と時代背景に触れて、昭和天皇の死去当時にMICの存在の大きさを感じたと述べ、現在の厳しい状況のもと、MICの組織の存在そのものが問われているとの危機感を持っている。簡単に展望は開けないが、労働組合が現状をリアルに認識し、自らの保守性を打破して、労働者の人権と民主主義を確立するために、組織と運動のあり方を見極める必要がある。今日の記念のつどいを明日からの再生の道を探る契機にしたいとの決意を述べ、参加者へのお礼の言葉とした。続いて、日本ジャーナリスト会議(JCJ)代表委員の橋本進さん、全労連副議長の熊谷金道さん、自由法曹団事務局次長の中野直樹弁護士より連帯のご挨拶をいただき、MIC初代議長(現名誉議長)の上田哲さんの乾杯の音頭で、懇談・交流に移った。

 橋本 進さん
 MICのできた1963年―当時の出版労協にとって、大問題の「教科書の国家統制法」を抱えており、日比谷で集会を開いたが、そこに民放の仲間が手作りの「教科書の国家統制反対」というのぼりを持って駆け付けて来ているの見て、大変感動したことを思い出す。またその当時、民放労連には「ひとりっこ」放映中止の問題(62年)があり、自衛隊宣伝番組の阻止運動を映画や放送の労働者たちと一緒にたたかった(64年)。こうした運動を共にたたかう中で、連帯が生まれ、MICの運動の基礎が築かれたのだと思う。
 いまの政治、経済、マスコミ・ジャーナリズムの現状を見るとき、MICの果たすべき役割はきわめて大
きい。JCJは、これからも一緒にがんばっていきたい。

 熊谷金道さん
 MICの皆さんが、言論・報道の自由だけでなく民主主義の擁護のために先頭に立ってがんばってこられたことに敬意を表したい。また、規制緩和万能論の中で「再販制撤廃」阻止の闘いで、この攻撃を跳ね返してこられたことも教訓としたい。
 現在は情報があふれている。その中で何が本当で、労働者にとってどういう意味を持っているのか。私たちが本当に知りたい情報が報道されているのか。MIC35周年を契機に、日本のジャーナリズム、マスコミが本当に労働者の立場にたった報道への発展方向に向かっていっそう努力されることを期待してお祝いの言葉とさせていただきたい。

 中野直樹さん
 自由法曹団は、昨年の秋以来三つの憲法課題にとりくんできた。
@労働法制改悪反対、定期借家法案の問題
A新ガイドライン、有事立法反対の運動
B私たちの日常生活に影響ある盗聴法反対のたたかいである。
21世紀の国づくりの根幹となる課題であり、これまでの共同の闘いの輪をいっそう広げて、これらの悪法反対の運動をいっしょにやっていきたい。ひとつPRをさせていただきたい。憲法施行50周年を記念して「憲法判例をつくる」という本を出版した。21世紀に向けて、自由と人権の運動を強めなければと考えており、そのための教材にぜひ活用していただくことをお願いしたい。

●上田哲さん(1963年〜75年)
 結成総会は千代田区の小さく薄暗い麺業会館という建物で行った。マスコミ各単産の代表が集まり、自分たちの組織をはじめてつくったが、その時にはこんなすばらしいパーティが開けるようになることなど想像できなかった。MICがBICになって、40年、50周年が開けるよう、後輩のみなさんにがんばっていただきたい。

●田村徳章さん(1986年〜88年)
 私の議長当時は、国家秘密法ースパイ防止法ー反対のたたかいの2年であった。各単産が総力をあげてたたかった。印象深いことはMICという組織は名前は労働組合だが、日本の文化を様々な形で担っている人たちが集まっていることだ。私たちはいま、創造力・感動を失っている。他者に対する思いを失っている。MICの運動は、労働運動の側面と文化運動でもあることを忘れないでほしい。

●鈴木孝夫さん(1988年〜92年)
 歴代議長をみていると、インテリでファイトある人たちが並んでいる中で、異質な議長だったと思う。いろんなことを教えていただいて、MICの会議に行くことが楽しかった。なかでも被爆40年の大イベントを行って、大変な赤字をつくったこと、オイルショック後の国民春闘をMICが先頭でがんばったことなども印象深いものがある。労働運動が大変難しいときだが、がんばってほしい。

●藤森研さん(1993年〜95年)
 懐かしいお顔を拝見して大変うれしい。21 世紀の前半はデジタル化で、通信を中心にメディア全体が大きく再編されていくと思う。好むと好まざるとに関わらずそうなると思う。その中でゆるやかではあるが、しなやかで大変強いMICという組織がこれまでにもたくさんの経験を積み重ねてきたが、もっと力を貯えて本当の力を開花させてほしい。



 


MIC35周年記念講演(要旨)

「日本の進路を考える」

いまマスコミに求められるもの

新潟国際情報大学教授 元朝日新聞編集委員  石川真澄 さん 

 朝日新聞に25歳で入社して63歳で定年になるまで、私はずっと組合員で管理職になったことがありません。しかし組合の役員もやったことがなく、(笑)「〜長」という肩書きがついたことがありませんでした。それがこの春から大学で唯一の学部、情報文化学部の学部長ということになって、「情報文化学」という講義をもつ羽目になりました。
 そこでは、私は「表現の自由とは何か」ということについては学生にぜひ言わなければならないと考えてやっているのですが、テストで「表現に自由について思うことを自由に書きなさい」と出題して、その答案を見て非常に驚きました。学生のほとんどが、「表現の自由は制限されなければならない」と答えているのです。たとえば、「ポルノについては国際的規制が必要」「ワイドショーのプライバシー侵害には取締りを」「松本サリン事件の河野さんに対する報道は人権蹂躙だった」など…。私がそんなことを教えたと思いますか?(笑)どうも、中学・高校の間に、秩序を守ることが社会生活への訓練で、自由というのはあまりよくないことだという教育がされているのではないか、教師に迎合しようとすると、自由は制限すべきという発想になるのではないか、そうとしか考えられません。これは学生の「でき」が悪いのではなくて、社会の趨勢がそうなっている。私は、「ポルノの抑制は権力が必ず最初に仕掛けてくることだから、自己抑制でやっていくべきだ」ということを言ったつもりだったのですが。
 今、政治家も、「テレビの内容はけしからん、監督官庁は何をしているか」ということを平気で言う。監督官庁が監督することが当たり前だと思っているのです。これは椿発言以来の流れで、そういう意味では政府当局は望みをほぼ達しつつあるのではないでしょうか。「狼」はもう来ているのではないかと思います。
 パソコンやインターネットの普及で情報量やスピードが圧倒的に増大しました。20年前は、選挙で候補者が有権者の中でどれだけ得票したかという得票率を計算するのに、電卓で計算して翌日の夕刊用に分析を書いていましたが、今はコンピューターで結果がものの10分ほどで出る。それをどさっと持ってきて「さあ、朝刊に分析を書け」とくる。(笑)ひとつひとつ見て計算していく中で、全体像がつかめていくのです。「あの大臣経験者、落っこちてざま見ろ」とか。(笑)数字だけまとめて出されても、頭が追いつかないのです。直感に優れた人、反射神経のいい人にはいい社会かもしれませんが、試行錯誤することが非常にムダに思えてくる。マスコミも、瞬間的にわかるものは追求していくが、長時間考えるようなものは徐々に少なくなってきているのではないでしょうか。
 確かに、わかりやすさは大事です。しかし、瞬間的にわからなければいけないのでしょうか。テレビのお笑い番組でも笑い声の挿入が早くなっていたり、音楽会でも演奏が終わるや否や声をあげたり拍手するなど、世の中の反応が早くなっている一方、ゆっくり考えることがなくなってきているのではないでしょうか。
 パソコンは、双方向性と個別性ということで驚異的な変化をもたらしました。そうなると、代表制への疑問が沸き起こってきます。つまり、一般の人に代わって取材・報道することへの疑問です。阪神大震災でもインターネットが活躍し、サッカー選手のホームページに直接質問して返事をもらえば、スポーツ記者はいらなくなってしまう。電波も何百チャンネルになれば、個別の視聴者に対応しないといけなくなる。

● 反射神経に訴えるマスコミ
 そして、間接民主主義、議会制民主主義への疑問として、住民投票(=直接民主制)が各地で行われるようになった。私の大学のある新潟の巻町で、原発建設の賛否を問う住民投票が行われました。巻町の町議会で投票すると原発賛成になるが、住民投票では有権者の9割が投票して6割が原発反対と出た。こうした動きに対しては自民党などはたいへん危機感を抱いていて、「代表民主制を突き崩すものだ」と反発している。しかし、自分たちが本当に民意を反映しているかを反省すべきなのに、直接民主制を敵視しているだけです。すでに、電子投票のシステムはできあがっています。自治体が採用しないから行われていないだけで、これができれば国民投票も可能になります。
先の参院選では投票率が上がりました。しかし、次の総選挙が行われても、私は投票率はまた下がるのではないかと思っています。一般の人は代表制に重きをおかなくなってきているのではないでしょうか。これは、電子技術の発達とは直接関係がない、同時的に発達していることとしてとらえるべきで、まさに「歴史の狡知」という気がします。そういう意味では厄介な世の中ですが、代表制の衰弱ということで政治は変わらざるを得ません。
 今、未来予測で「次は何が出てくるかわからない」と平気で言えるようになりました。たとえば、金融恐慌に60兆円の公的資金を投入したらどうなるか、書いた本が見当たりません。昔の「国家独占資本主義」などを引っ張り出して、(笑)「中国は社会主義市場経済か、日本は資本主義統制経済か」などと考えております。
 これほど情報量が増えたのに、先のことがわからない。これは反射神経だけに訴えるマスコミに責任があるのではないか、と思います。


 

韓国言論労働組合連盟訪問記

MIC議長 今 井 一 雄

 去る10月31日(土)に、私たち(出版労連三役)は、全国言論労働組合連盟を表敬訪問しました。訪問の理由は以下の通りです。
(1) 昨年(97年秋)韓国出版労協は言論労連に加盟しました。加盟のお祝 いとその後の経緯を聞きたい。
(2) 言論労連の現在のたたかいの課題を聞きたい。
(3) IMF体制下で苦闘している韓国の労働組合を激励したい。
(4) 言論労連−新聞労連、韓国出版労協−出版労連のシンポジウムが延期に なっているので、その件について話し合いたい。
  以下簡単に会談の内容を報告します。

1.言論労連がいま最も主要なとりくみをしている課題は何ですか?

@言論改革−これについては資料をもらってきました。時間の関係でその資料を見てくれということでしたので、翻訳が終わり次第報告します。
Aマスコミ関連労働者の雇用の安定
Bメディア産別への転換−現在の言論労連への加盟方式は、新聞、放送、出版ともそれぞれの単産を解体して、ここの単組が加盟する方式をとっているそうです。その企業別組合の加盟方式を個人加盟の方式にしたいということです。
(なお、内部では業種別グループになっている程度の緩やかさということです。)

2.韓国出版労協の加盟は言論労 連にとってどういうメリットが ありますか?

@組織拡大の余地、可能性の増大。
A新聞と放送の組合の閉鎖的な意識を克服する可能性が生まれた。
B産別組織にしていく過程で、日本マスコミ文化情報労組会議のようになる可能性が生まれた。

3.昨年末の大統領選挙に民主労総の委員長が立候補しましたが?

@破れはしたが政権交代の可能性の大きさに賭けた。1.3%、30万票しか取れなかった。
Aしかし、ウルサン、マサンといった労働者の多い地区では10%を超える票を得た。
B地方選挙−区長に当選などで希望を生んだ。
C労働者の政治勢力化(具体的には政党の設立)を続けている。

4.民主労総の委員長が交代した のは何故ですか?

 97年10月に権永吉委員長(大統領候補)が辞任、翌年2月まで主席副委員長が代行、その後委員長選挙があり、「労・使・政委員会」への参加をめぐって論議、参加方針が2月9日の代議員会で否決、非常委員会が生まれ、3月30日に李甲用(イ・ガビョン)新委員長が誕生した。
 IMF体制下、金大中大統領は労使の協力を得るために、大統領直属の「労・使・政委員会」を設置した。韓国労総も参加しているが民主労総(58万人)は、これへの参加をめぐって論議になり、不参加を掲げた李甲用氏(現代重工業労組委員長)が支持されたということである。この委員会は一応機能はしているが、大きな期待は持てないというのが民主労総の見解である。

5.民主労総での言論労連の役割は?

@作る段階から、初代の委員長を出した。
Aたたかいの主体は金属産業だが、内部の議論をリードし期待をされている。
B財政的に支えている。

6.IMF体制を克服するには、どうすればいいとお考えですか?

 政治家、官僚、財閥など既得権勢力の責任は重い。民主労総としては、政府・財界は苦痛を100%労働者に押し付けているが、彼らに責任を取らせて、徹底的な社会改革が必要としている。

7.現在の韓国の言論界の問題点 は何ですか?

@われわれの側に、政権との癒着がまだ続いている。特に放送に。
A政権交代護少しは良くなったともみれるが、金大中大統領はまだ独立できていない。BKBS,MBS幹部など、大統領任命を改 めるというが積極的でない。
C個別にあった「放送法」が統合される。その中に権力との癒着を認めない条項を入れようと努力している。
D新聞の社主が、編集にも口を入れ私有化している。読者から批判がある。
E「定期刊行物法」を作り、財閥の新聞所有を禁じるたたかいを来月からはじめる。
F新聞は、中央日刊紙10紙のうち2紙は倒産状態。放送は赤字で記者への賃金遅配等の弊害が出そう。

8.日韓シンポジウムを継続したいのですが

 年内に新聞労連と、執行委員レベルの会合を持つ予定。それはそれとして、言論労連とMICとのシンポジウムということであれば、こちらに異存はない。

 全国言論労連は、55組合、17,000人放送労組連合・ソウル新聞労組協議会・韓国出版労協で構成されている。主要な組合はKBS(4,800人)、MBS(2,000人)。新聞の最大手は韓国日報(650人)で、放送に比して弱いとのこと。

 なお、言論労連の委員長は6代目の崔ムンスン氏(MBS労組委員長)が9月22日に誕生。前委員長の李亨模氏はKBSの副社長に就任されたとのことです。