労働基準法改悪法案の今国会での成立防止!
廃案を目指して、引き続き行動を強化しよう!

 衆議院労働委員会で審議されていた労基法改悪法案は、5月20日の理事懇談会で修正案の提案も強行採決もできないまま、今国会での成立を事実上見送りとすることになった。しかし政府自民党は、この法案をあきらめたわけではなく、最終的に廃案と決めるか国会解散でもない限り、次の国会で冒頭成立に持っていかれかねない状況である。なぜならこのまま新聞報道のように「継続審議」になれば、“時限爆弾付き火種”を残すことになり、万一7月の参院選で自民党が勝利するようなことにでもなれば、臨時国会では実質審議抜きでのスピード採決(衆議院は、採決残すのみ。参議院は数日で通過)の可能性があるからである。従って、法案が不成立になったからと言って「良かった」と喜んでばかりおれず、署名も国会請願も議員・政党要請も引き続いて行うことになった。
 MIC、純中立懇談会で構成する「労働法制特別委員会」は、裏面に記載の「緊急アピール」を発表して、傘下組織・個人への行動参加を呼びかけた。なお、MICも加盟する労働法制中央連絡会、「女子保護」均等法中央連絡会・合同闘争本部では、6月4日の昼の国会請願デモ、夜の中央総決起集会(日比谷野外音楽堂)への結集を呼びかけている。



磯崎さん(前MIC事務局次長、民放労連顧問)を中労委へ送ろう!

 5月15日、南大塚ホールで「〜磯崎さん任命で『偏向行政』にストップを!〜中労委労働者委員実現、労働委員会民主化をめざす5.15中央集会」が開かれた。この日は、昨97年に、第21期〜23期任命に関する損害賠償の地裁判決を得た記念の日でもある。
 89年の労働戦線再編以降、中労委労働者委員(13人)が「連合」に独占される事態が続いた。それまで20年に渡って、ナショナルセンターに加盟しない純中立労組懇は、独自に中労委に労働者委員を送る運動を行ってきたが、全労連の誕生で「連合」独占の一角を崩すべく共闘を開始した。新しい闘いの手段として、「連合」独占が決定した90年(21期)以来、処分取消及び損害賠償の行政訴訟を起こしてきた。処分取消は任命後の期替わりに取り下げてきたが、損害賠償は継続し、その間の法廷闘争を決着させるために、敢えて地裁の判決を仰いだのが昨年の5月であった。
 判決は敗訴だったが、「判断」としては、@訴えの主張に関して理解を示す、A独占的な任命は、中労委の運営に重大な支障をきたしている。従って適切な任命のあり方を検討すべきである、という一定の成果を得られた。この判断を無にすることなく、さらに闘いを進める必要があるということで、純中立労組懇と全労連は、候補者の一本化を模索し、第24期から磯崎弘幸・民放労連(当時は書記長)顧問を推薦することになった。しかし、24期は立候補の出遅れがあり、結果的には任命が叶わず現在この件も地裁で係争中である。
 それから2年、この秋10月の改選(25期)に向けて、何としても私たちの代表を中労委へ送り込もうということで中央集会は開かれた。塚原英治弁護士の「中労委労働者委員任命取消訴訟5・15判決の意義と労働委員会制度のあり方」という講演、労働委員会民主化対策会議・遠藤事務局長の秋に向けての活動提起、名古屋・東京の地労委裁判闘争の報告、中労委係争中の争議団の報告が続く。最後に磯崎さん推薦の弁があり、当人の立候補の決意が表明された。
 中労委13人、地労委 276人の労働者委員のうち、「連合」以外の委員は地労委でたったの7人(東京3大阪高知和歌山沖縄各1) しかいない。千葉、長野、愛知などの地裁でも係争中であるが、何と言っても中労委で「連合」独占を打ち破ればその波及効果は大きい。一党一派に偏した委員会のあり方の不公正を是正し、労働委員会の機能に人間性を取り戻すために、全労連・純中立労組懇・MICの3団体が強力に推薦している磯崎さんを(内閣総理大臣に)任命させる必要がある。各組織の組合員に、全面的な支持・協力をお願いするものである。 (議長 今井一雄)




緊急アピール
MIC・純中立懇の組合員のみなさんへ!
労働法制「改悪」を阻止するために
直ちに行動に立ち上がろう!

緊迫する国会情勢

 5月18日に、衆院労働委員会は参考人質疑を行いました。通常この質疑が終了すると採決が行われ、その後本会議に送られることになります。しかし、19日は与党の修正案がまとまらず、継続審議の可能性が強くなっています。その背景には、参考人のうちでもこの「改正」法案に賛成なのは日経連の参考人だけという状況があること、委員会審議を重ねるに従って法案の酷さが明らかになってきたこと、そして何よりも適用される労働者の意向が全く無視されていることなどによるものと思われます。
 しかし政府は、あらゆる手段を使ってこの法案を成立させるべく、野党の切り崩しや取引に血道を上げていると言われます。いずれにしても国会審議は大きな山場を迎えています。仮にこの法案が成立するならば、労働法制の根幹をなす「八時間労働制」が崩されることになり、私たちの働き方、働かされ方が決定的に改変されることになるでしょう。
 私たちは、政府・財界の一方的なごり押しで、拙速にこの法案を成立させるのではなく、十分な審議を尽くした上で法案の問題点をさらに明らかにし、廃案に追い込まなければなりません。

何のための、誰のための「改正」か

 国会審議で明確になった政府の立場は、次のような答弁に見られます。
 「働く人たちの働き方への期待や希望の多様化に対応し、自律的に、あるいは効率的に働くことができるようにするものであり、国際的な流れに充分沿ったものと考えております」(4月21日、衆院本会議、橋本首相答弁)。「経済社会の活力を支えることができるよう、家庭生活との調和を考慮し、職場における労働条件や環境の整備をすすめる必要がある」(同衆院本会議、伊吹労働大臣の趣旨説明)。
 政府は79年前に労働時間の上限を規制したILO1号条約を批准していないことに関して、次のように述べています。「時間外労働は雇用の維持にバッファー(緩衝=やわらげる)効果をもってきた。長期的な雇用を安定させ、賃金を維持するため批准できなかった」(5月6日、衆院労働委員会、伊吹労働大臣の答弁)。
 また長時間労働に関しては、「時間外労働は、雇用調整機能、失業防止機能を有しており、画一的に罰則をもって対応することは好ましくない」(4月24日、衆院労働委員会、伊吹労働大臣の答弁)。「長時間サービス残業になるなら、それをどうチェックするかは労使で話し合うべきだ」(4月24日、衆院労働委員会、伊吹労働大臣の答弁)。その労使の自主的努力に関しては、「労使委員会の労働側委員を民主的に選出し、選挙で決めることを予定している。使用者の一存で設置し決めることについては、そうならないよう万全を期している」(5月6日、衆院労働委員会、伊藤労働基準局長の答弁)。
 以上は、キリがありませんが、この法案の趣旨及び関連事項に関する政府の考え方の一端を表明したものです。こうした考え方は私たちの労働現場あるいは労働の実態にそぐわない、あるいは実態を全く認識していないものであることは、私たちがいちばんよく知っているところです。また、事実に反するだけでなく、率直に言って「嘘」であります。
 5400万労働者全てにかかってくる、法「改正」です。全てのナショナルセンターが反対し、女性団体、法曹団体、地方自治体(270余)がこぞって反対の意志を表明しています。まさに民意を反映しない暴挙と言わざるを得ません。

直ちに行動を起こそう

 しかし、私たちはこの法「改正」の動きと内容が、きちんと職場に入っているかどうか不安を持っています。それは署名活動、労働委員会の理事に対するFAXでの要請、各種の集会やデモ、そして議員会館前の座り込みなどに、一部を除いて傘下組合員がこぞって協力・参加をしてるように見えないからです。
 学習も必要ですし議論も必要でしょう。しかし、机の前に坐っているだけではこの法案を廃案に追い込むことはできません。労働者・労働組合は自らの運動を通して、相手に、具体的にその意志表示をすることが必要です。そしてそれは「いま」必要な行動です。
 「改正」労働法制が、先取りされて実施されていると言われるマスコミの職場での無関心、また時代の流れだとか、自分だけは不利益から逃れられるといった評論家的対応はある意味で労働者の想像力の欠如と言わねばなりません。
 いますぐ、「労働法制特別委員会」の提起を受けて、街へ、国会へでかけましょう。
 労働組合だから立ち上がらなければならない、私たち自身の課題です。またそれは私たちの家族の問題でもあります。改めて緊急の行動要請とします。
                        1998年5月20日
                          日本マスコミ文化情報労組会議/純中立労組懇談会
                          労働法制特別委員会