今井議長留任、新事務局長に鋤柄さん(新聞労連)を選出

 MICの第38回定期総会が10月16日、千代田区のエデュカス東京で開催された。岩崎副議長の開会あいさつと議長団に中島さん(広告)、笹岡さん(出版労連)を選出して議事に入った。幹事会を代表して今井議長と、二人の来賓・熊谷事務局長(労働法制中央連絡会)、小部事務局長(自由法曹団)からごあいさつをいただいた(要旨別掲)。その後、葛西事務局長が今年度の経過報告と来期の基本方針提案をおこない、白石事務局次長が99年度決算報告と来年度の予算案提案を、また会計監査が欠席のため、監査報告も白石事務局次長が代読した。質疑応答の後、午前の部を終了させ休憩に入った。
 午後の討論は茶本代表委員(日本ジャーナリスト会議)のごあいさつと、21人の発言をうけ、葛西事務局長がまとめの発言を行って討論を終了した。続いて報告と決算・予算の承認、総会宣言、特別決議の採択を済ませて、役員選出の報告を碓井副議長より受けた。今井一雄議長(出版、留任)、鋤柄誠事務局長(新聞労連書記長、新任)をはじめ、今期役員(別掲)を選出した。今期で降板される岩崎さん(民放)、杉崎さん(映演)、葛西さん(新聞)からのあいさつ、徳山副議長の閉会あいさつで総会を終了した。(参加者79人)


 
【開会あいさつ】

●今井さん(MIC議長)
 昨日のMIC地方代表者会議で2つ議論があった。一つは、東京のMICの動員力がひどく落ちているが、それは正確に地域にも反映しており、どの地域のMICにも共通した 悩みとなっている。日本中がどうにもならない状況に沈み込んでいる。傘下単産の大きな組合では、MICが何か知らない人がいる。MICという言葉も組織の内容をわかりにくくさせているらしい。MICの存在を東京と地域のマスコミの仲間に知らしめる必要がある。二つ目は機関誌の問題だ。毎月発行をめざしているが、今年は4回の発行だった。1500部印刷しているが単組内にも行き渡っていないのであまり見られていない。世間の方がMICをすごい組織だと思っている反面、MICの内部がこれでは困る。昨日も地域の人と広報のセクションをつくりたいと、話をしたところだ。マスコミ・文化・情報の共闘組織を何とかしなければならない。世間の過大評価の中で、MICの役割について議論していきたい。来期は体制を一新して望む。課題は、悪法にどう抵抗するか。靖国護持法案、憲法改悪が残されているくらいだ。市民の注目が得られるような組織にしたいし、また方向を出したい。今日の議論をそれぞれ職場に持ち帰って欲しい。



 
【来賓あいさつ】

●熊谷金道さん
(労働法制中央連絡会事務局長)
 我々の反対運動にもかかわらず、女子保護規定の撤廃、派遣法・職安法の改悪など次々と労働法制の改悪が成立した。しかし阻止できなかったものの国会での追及、決議などで一定の歯止めをかけることができた。またこ の反対運動の中でははじめて連合と共同行動を取り組むことができた。これは大変重要なことだ。連日リストラの話が世間をにぎわしている。雇用問題は300万人を越える失業者を抱える大問題だ。座敷牢をつくったり、見せしめ的な出向など人権侵害が大企業で横行している。企業の勝手放題を許さない本格的なたたかいを強める必要があるし、働くもののルール確立をめざすためには二つの分野での闘いが重要だ。@職場・地域から働く者の権利を守るルールを確立していくことだ。改悪された労基法や労安法を職場に入れさせない、リストラ、合理化に対処する事前協協議制・本人同意制を求める労働協約を結ぶ闘いが一層重要だ。A社会的に働くルール確立をめざす運動を広げる世論作りが重要だ。企業が勝手にリストラできない「解雇規制法」といった法を整備させる運動が必要だ。企業には「産業再生法」などでリストラをやった企業には公的資金の導入など優遇措置が取られるようになったが、働く者の雇用を守る法的規制はない。あるのは判例くらいだ。欧米ではそれぞれ解雇制限法や定年延長、年齢による差別禁止の法律がある。こうした運動の更なる発展をめざしてともにがんばっていきましょう。

●小部正治さん(自由法曹団事務局長)
 MICは日本の文化・自由に関わる職業に携わる人々の労働組合であり、文化・表現の自由を守る権利意識を持ち、闘う組織として期待されている。いま国家的規模で規制緩和が推進されている。予想もしなかった銀行合併や人減らし等々が行われ、弱肉強食の国民切り捨ての政治、それを押し進める中央集権国家づくりが行われようとしている。
 自自公の政権合意のもと、PKFの凍結が解除されようとしている。日本の軍隊が海外に出かけていけるようにする法案が出されようとしている。ガイドラインは第1陣でアメリカの有事であり、日本有事は日本軍が出かけて行くことだ。このための法律が作られる。まさにこれからが始まりで、闘いである。
 憲法調査会ができた。数年かけて憲法改悪を発議し、9条の改悪を進める、こうして新しい国家づくりの完成といえる。我々もこの間改めて憲法を学習し、力を蓄えたい。ここ2年間で、司法の改悪を進める動きがある。政府が進める司法改革は、これまでの護送船団での内部調整から、市場競争の結果、大企業間の喧嘩を裁判所で争うことを予想して、今より早く解決できるようにさせようという動きである。我々にとっても司法改革は要求であり、もっと良い裁判所にと司法総行動を行っている。
 また労働委員会が労働者、労働組合の救済機関から、使用者側も使える中立的機関に変えられようとしている。経営側が考える中立とは、使用者にも(労働者の)不当労働行為を認めるという本質の違う話だ。現場の闘いとともに大切な法律の場を守る必要がある。

●茶本繁正さん(日本ジャーナリスト会議代表委員)
 この2,3日議案書をしっかり読ませていただいた。さすがによく整理されている。現状は合理化がすさまじく確かに厳しい闘いになっている。加えて新ガイドライン関連法や日の丸・君が代法などが制定されたが、これは有事立法だ。憲法改定までスケジュール化されている。このような状況下で我々はどうすべきなのか? MICに期待されているのは、マスコミ関連労働者の現状に対するたたかいと的確な情報の提供だ。翻ってジャーナリスト会議はどうか?反省すべき点は多々ある。先日横須賀の軍港を海上からはじめてみた。それで成るほどと思ったのは米軍基地が海上自衛隊の2倍もあることだ。まさに今の日本を象徴している。「ニュース23」で筑紫哲也氏が「1999年は戦後史のなかでも特筆すべき年になる」といっていた。それだけにジャーナリスト会議もがんばらなければならないと思う。ともに手を携えてがんばっていきたい。


 
【総会発言】

●井戸さん(民放労連)
 MICの女性の働き方アンケートについて報告する。このアンケートは、女子保護規定撤廃後初めての大規模なものとして高い評価を受けている。本日の赤旗にもその概要と10月9日のシンポジウムが報道されている。取り組むきっかけは、若い女性の働き方が長時間・過密化し、深刻になっているということを時短労災委員会で話し合ったこと,実施は女性連絡会と共同で行った。単組から163、個人から2401通を回収した。単組アンケートでは、女子保護規定撤廃に伴い就業規則の変更提案が4割のところで行われていることが明らかになった。内容は、年間150時間の残業規制撤廃と22時以降の深夜労働禁止条項の除外。この改悪でははね返したのは5組合3.1%にすぎない。36協定の締結率は63.2%で全国水準より低い。内51.7%は、協定が守られておらず、結局4分の3で協定そのものがなかったり、守られていないことになる。また、組合員の残業時間を正確に把握している組合は4割にすぎず、時短を言いながら労働時間を把握していないのは問題がある。個人アンケートでは、女子保護規定撤廃を知っていたのは80%、但し非組合員では42.8%が知らなかったと答えている。撤廃についての評価は、賛否相半ばしている。残業規制については、男女共通の年間360時間より短い規制を望む人が42.1%に達した。強い要求は5つ。@人員増 A年次有給休暇増 Bフレックスの導入 C産休・育休、介護休暇を有給に D育休、介護休暇を取り易く。結局のところ、女性が働き続けられる環境が何ら整備されていないことが問題である。罰則なしの均等法と罰則付きの女子保護規定が引き換えにされたわけで、「白人にだまされたインディアンの心境」とアンケートにもあった。労働組合は本当に女性組合員の要求を汲み取れているのかが、今問われれている。職場から女性の要求に根ざした運動が必要だ。

●吉田さん(出版労連)
 「教科書は贖罪パンフレット」という認識の文部省社会科主任教科書調査官は、いったん解任されたが4月には資格官に昇格している。少子化に伴い教科書の価格問題は深刻である。教科書を扱う出版社の多くは犠牲を強いられる一方で寡占化が進んでいる。  教科書攻撃の最近の特徴は、彼ら自身が作る教科書を採択させるように変わってきている。各学校でどの教科書がよいか先生方が投票する「学校票制度」というのがあるが、これをやめさせて、教育庁の責任で選ばせるべく、地方議会に請願を出して働きかけている。 国民や専制の手から採択権を奪う動きである。 第3次教科書攻撃の中心である扶桑社(サンケ系列)は、10月29日に彼らの教科書のパイロット版「国民の歴史」を出す。すでに350万部の予約があるとのこと。  8月に成立した国旗国歌法により、文部省は教科書編集者を呼んで「日の丸」は「日章旗」にしろというような教科書改訂要求を出してきている。音楽の教科書では1年から6年まで君が代が記載されているが、段階に応じて歌詞の意味を教えろと要求してきている。文部省の攻撃は記述内容にとどまらず、著者、編集者、営業担当の経歴を登録させ、記述箇所までチェックできるような要求をしてきている。「従軍慰安婦」という記述にしても「従軍」を取れというような攻撃も強まっている。自自公政権は憲法改悪を成立させるためには、教育基本法の改悪が先決であると考えている。「教育基本法の改悪」は「憲法改悪」につながっているという認識を持つ必要がある。「教科書問題」は単に教科書会社や出版だけの問題ではなく、MIC全体に関わることとして捉えて欲しい。

●利元さん(広島MIC)
 4年ぶりに職場に戻って世代交代の様変わりを感じている。執行委員の平均年齢は30歳くらい。「MICてなに?」「NHKにも組合があるの?」という声が組合三役からさえ聞かれる。97年5月の定期大会以来ほとんど活動をしていない状況だ。これは何とかしないと、昨年から広島MICの再建を考えている。広島は、日の丸問題で校長が自殺するなど、様々な面で注目を浴びている。  また一方では、職場の合理化が進んでいる。中国新聞では県外の縮小、管理職の削減、社員寮の廃止などがあり、民放ではRCCのなかに新しく認可されるコミュニティFMのスタジオを作るなどの動きがある。背景はデジタル化を前に、人員削減はもちろんのこと、 AMラジオのデジタル化とリンクさせれば経費削減になるということらしい。こういう状況で、今こそ横断的に問題点を出し合い、励まし合う必要がある。外の状況を見て初めて自分の職場も見えてくる。世代交代した若者たちがこうした地方MICの場を通じて全体を知っていくことになる。合理化、青年対策、平和の問題、これらを地域MICの課題として発展させていきたい。早急に幹事会を開き、広島MICを再スタートさせたい。

●友利さん(沖縄マスコミ労協)
 沖縄マスコミ労協では、賃金闘争とともに平和の問題にも取り組んできた。この8月以降の取り組みだけを見ても、抗議集会など5〜6回行った。いま一番問題になっているのは、「新平和祈念資料館」の展示で、県は日本軍の残虐さを薄めようとしている。また普天間基地の県内移設問題では、代替地として絞り込んだ名護の辺野古地区で、海上ヘリポートについての市民投票の結果、反対多数でとん挫している。県では辺野古に「基地を受け入れさせたら振興させる」とのふれこみで、実際に買収に近いことや不在者投票への動員等を行ったが、これにも反対投票が多数を取った。それでも県は、ここに基地を移設する意向で、「住民投票は、ヘリポートに関してのものであって、基地そのもに対するものではない」と強弁している。これには言葉も見つからないほどの憤りを覚えている。名護の市民は、いのちか金か生活かの選択を迫られ、平和を選択したのだ。これからも保守県政と国に対峙していかなければ、と覚悟を決めてやっていきたい。それは第1に私が沖縄に生まれたから。沖縄では県民の4分の1が犠牲になっている。その教訓をもとに先輩たちが続けた平和運動を継承する義務があると思っている。第2に、私がマスコミに関わっているからだ。かっての大本営発表の時代、マスコミが言いなりになったことへの反省を忘れてはならない。真実を明らかにすることが必要だと思う。がんばって、勉強しながら世論を作り出すことに力を尽したい。

●小林さん(西部マスコミ)
 西部マスコミでは、(昨年度)映画「南京1937」、(今年度)「教えられなかった戦争・沖縄編」の上映し、戦争と侵略の問題について取り上げてきた。いま報告があったように、沖縄では新平和祈念資料館(2000年3月開館予定)の展示問題が起きているが、我々も沖縄ツアーで現地に行き、この問題を肌で感じてきた。展示説明が住民虐殺から住民犠牲と言い換えられたり、事実を薄めるようなことが、沖縄という先端の部分で行われている。教科書検定で語句の変更が行われているのと同じようなことが沖縄でも今現実に起きているということだ。マスコミでももっと鋭く追求して大々的に取り上げてほしい。

●横山さん(電算労)
 労働者派遣事業体・スタッフフォーラムを東京ユニオンと共同で設立する。年内設立、来年1月事業開始の予定で準備を進めている。15年前に始めた労働者供給事業にはSEプログラマー110名、OAスタッフ20名が組織されているが、供給先で社会保険の適用をされることはほとんどなく、国民健康保険、国民年金に加入しているのが現状であった。しかし、労働者供給事業で労働組合の事業者性を認めよとの要求に対し、労働省が供給事業を行っている労組が自ら派遣事業体を持ち、そこから派遣ができるという方向を打ち出したため、その事業体で社会保険に加入することができるようになった。大きな成果である。派遣労働者自らが会社を作り、派遣事業を行い、問題ある派遣を牽制することに寄与したい。派遣労働者は増え続けている。この派遣労働者の組織化が大事である。スタッフフォーラムの設立趣旨に賛同して、単産単位による出資をお願いしたい。またマスコミ、文化、情報関連の職場には派遣の労働者がたくさんいるはず、各職場でスタッフフォーラムで派遣するスタッフを受け入れていただきたい。

●中川さん(新聞労連)
 9月28日の中央委員会で副委員長になった中川です、本日は書記長が、イタリアでの会議でいないので、私より5点について発言する。第1は、新聞の特殊指定をめぐる動き。 公取委は「合理的な価格差を認める」に至った。特殊指定が廃止されると安売り合戦となり、テリトリー制が崩れ、資本力のある販売店の寡占化が進む。99春闘で特殊指定守る運動をとりくみ改廃は阻止したが、9月1日に改定されてしまった。長期、大量の購読者には価格差を認めるとの改定だが、条文が拡大解釈されないために引き続き監視の目を強めていく。第2は、「盗聴法」。国会で報道機関除外の答弁はとったが、明文化されなかった。ニュースソースの秘匿に注意を払いながらこの悪法の廃止を目指したい。第3は、日の丸・君が代問題。現在首相官邸と7つの省庁の計8個所の記者会見場で、日の丸が設置されている。記者会見は国の行事ではなく記者クラブの主催であり、「強制はしない」との政府方針に反する。不当な要請拒否を呼びかけたい。第4は、9月30日に発生した茨城東海村での臨界事故。事業者・科学技術庁・国の責任は重大である。2年前の動燃事故との違いは放射線漏れが止まらなくなったという異常事態。茨城新聞労組が事故取材のあり方で協定書を労使で取り交わしているが、新聞労連としても協定後の初の事故であり、この問題を検証していく。第5は、衆院の比例定数削減問題。民意を反映しない選挙制度を更に推し進めることに対し反対していきたい。

●宮木さん(出版労連)
 出版労連では一昨日の中央委員会で、秋季年末闘争の方針を決め、その夜すべての争議を勝利させるための決起集会を700名規模で開いた。出版業界での特徴は争議が多発していることだ。どうして争議がそんなに多いのか。業界の成長が止まったことにより、各社ともに急激な再編・合理化進んでいるためである。再編は銀行、証券の大型合併に見られるように、業界、形態、国の如何に関わらずインターナショナル規模で進んでいる。出版でも、婦人画報社と仏のアシェット社、中央公論と読売、角川書店のように今までにない動きだ。 デジタル化は、角川書店に見られるように、出版からコンテンツ企業へと業務内容を変化させている。一方書店の廃業も増えている。出版の本質が問われるような産業構造になっている。DTPが推進され、24時間体制で職場でも家でもMacに追いまくられて、それと同時に就労形態の激変が進んでいる。労働者は将来に不安を持ち始めている。これまでの労働者像を新たに問い直す必要があるのではないか。教科書会社は、2002年の教育制度改定に向け、日の丸・君が代に見られるような右からの教科書問題がでてきており、背筋が寒くなるような草の根からの反対運動が展開されている。とにかく問題は山積みである。

●長崎さん(全印総連)
 私自身のえん罪事件と印刷産業の状況について発言をしたい。印刷の状況はまさしく大変な状況だ。15万人の印刷健保の組合員が一年間で4000人も減少した。今までなかった女性の深夜労働が、大手の下請け企業ではじまり、質的、量的変化が起こっている。99春闘では出版労連をはじめ、上部団体を越えた共同の取り組みを進めてきた。銀行の貸し渋りの問題、自治体の印刷予算の問題、また印刷大手にはダンピング中止の申し入れなど様々なとりくみをしたが、とりわけ産業秩序の回復が大きな世論となっている。 二つ目は、昨年10月朝、西武池袋線の中で私が痴漢に間違われて、池袋書に21日間拘留された問題だ。今裁判闘争を行っているが、 私はただ立っていただけなのに、突然前の女性が「やめて」「さわらないで」と叫んで、私のネクタイをつかんだ。やってきた警官に「私はやっていない」といったら、逮捕され、警察につれて行かれて拘留・起訴されたのです。
 裁判は10回開かれたが、その証言で彼女は、「なぜ私か」の問いに「込んだ電車の中で腕も手も見えなかったが、さわられ方が左手に感じられた」と、答えた。左側にいたのが私だった。昨年1年間に250人が痴漢で検挙されて、うち20人が裁判を行っている。私の裁判も結審間近で、来年2月に判決が予想されている。5万円の罰金だが、私と家族には一生の問題で、傷ついた子どもに無罪を証明するためにも、本日の資料の団体・個人署名、守る会への加入などご支援・協力をお願いしたい。

●豊田さん(新聞労連)
 解雇されてから闘いは5年になろうとしている。今年1月に、東京地裁で不当判決が出たが、皆さんのご支援を得て社前抗議行動などを行ってきた。東京高等裁判所での職権和解が進んでいる。一方、都労委でも和解が進んでおり、次回11月2日には、地裁・都労委の両方に双方が返事を持ち寄ることになっている。司法の反動化が進んでいる中、大変厳しい状況だが、がんばるので最後までご支援をお願いする。

●朝日さん(明治書院)
 7月16日に10名が解雇された。明治書院は高校の教科書を発行しており、創業130年を迎える。国語の教科書でのシェアは、第1位だ。ここの三樹一族の同族経営の専制に異を唱えて組合を結成したが、会社側は「整理解雇」を主張、現在9名が闘っている。整理解雇をする背景、要件はあるのか?我々はそうは見ていない。教科書ガイド(虎の巻)を発行している真珠書院という関連会社があるが、編集の2名以外の仕事、販売や管理は全て明治書院でやっている。ここは神田錦町に120坪の土地とビルを所有しており、抵当価値は10億円以上ある。だから、今回の解雇は「市場環境の悪化に乗じた組合潰し」であることは明白だ。10月7日に支援共闘会議が結成され、大きく運動を広げていけると確信している。解雇撤回・現職復帰をできるだけ早く実現したい。その為に署名等をよろしくお願いしたい。いま大きな輪で支えられていることを実感している。

●尾形さん(出版労連)
 子どもの本の偕成社では、17年に渡り労働者に対する差別・使い捨てが行われている。組合結成当時、社員の倍ほどの臨時労働者が働いていた。労働条件の改善を目指して「タオル一本の支給、時給10円のアップ」等の要求を掲げたところ、執行部全員を解雇してきた。組合側が労働委員会に提訴すると和解を申し入れてきて、いったんは職場に戻した。しかし半年後、埼玉県戸田市への商品管理部門移転を口実に再び解雇してきた。団交の場で「戸田に行ってから労働条件を明らかにする」と言いつつも、すでに解雇通知を送っていたことが判明、明らかに組合つぶしの為の解雇と言える。現在、偕成社臨労の「解雇撤回・職場復帰」を求める闘いは大きく広がり、社の内外から一日も早い解決を願う声、また17年という長期争議は単なる労使紛争の枠を超えて、人権問題という声が大きく聞こえるようになってきた。偕成社・今村正樹社長にこの声が届くよう、さらに運動を大きく広げていきたい。今後とも宜しくお願いする。

●長松さん(長崎MIC)
 8月のMIC長崎フォーラムではMICの役員の方々、関係者のみなさんにお世話になった。この場を借りてお礼を申し述べたい。長崎マスコミの活動では、・MICフォーラム ・雲仙集会の二つの集会が中心である。雲仙は災害当時とはずいぶん変わっているが、災害を忘れないため崩壊した一部の家屋をそのまま残している。雲仙に行くことがあったら是非見て欲しい。復興は進んでいるが、今後の問題としては目に見えない部分、心のケアが大きな問題になっている。災害時に子どもだった人が未だショックから立ち直れず心に傷を残している。
 今年の長崎フォーラムでは、国会議員の保坂展人氏を招いて開催した。どちらの集会にも共通することだが、継承という部分では若い人たちにわかりにくい、従って関心を示さないということがある。被爆された方々の高齢化も進んでいる。数が少なくなった語り部の方々もがんばっている。われわれも今後の運動の強化を図っていきたい。

●磯崎さん(民放労連)
 第26期の中労委労働者側委員の統一候補として一言発言する。8月18日付日経新聞に「連合独占崩れる、全労連に労働者委員実現」という記事が出た。これは国公、医療などが独立行政法人化することに伴い、中央労働委員会に国営企業担当のポストが2つ増え、この一つが全労連になる可能性が高いいうものであった。今回中労委関係では、MIC、純中立、全労連の三者から初めて統一候補として推薦され、行政裁判も取り下げており文字通り背水の陣で臨んでいる。4月に、埼玉県で埼玉労連が地労委のいすを1つ獲得したこと等いくつか有利な条件が生まれている。愛知の裁判では裁判所が「系統別任命の考慮と公正な任命基準をつくり、公表せよ」と判決文の中で愛知県知事に求めている。また、千葉地裁は「特定の系統の候補だけの任命を続け、他系統を排除するということは推薦制の主旨に反し、裁量権の逸脱となる」という画期的な判決を出した。9月21日の労働省交渉で、労働省は国営企業担当の任命は2001年4月、26期の任命は2000年10月ということを明らかにした。この闘いは偏向行政を正し、国家的不当労働行為をただす闘いである。私が任命されれば、最低賃金審議会委員などにも波及することになり、連合だけがナショナルセンターではない、ことを証明することになり、全労連が結果的に認知されることにもなる。暮れから来年3月までが勝負と考えており、日比谷・労働省包囲の1万人総行動や1万団体署名の超過達成など、MICの更なるご支援をお願いする。

● 高鶴さん(角川文化振興財団)
 角川財団争議支援のお願いである。親会社の角川書店は東証一部上場を契機として、財団を閉鎖し、3月には14名の解雇を通告してきた。闘いに立ち上がった10名のたたかいの成果で和解にこぎつげたが、かっての期限なしから、3年の有期契約を提示してきた。この背景には、日経連の提唱する「新時代の日本的経営」の労務政策がある。この争議は、日経連の意向を出版産業に導入する手始めであり、大変重要な闘いとなる。まだ支える会の運動は出版を中心に始めたばかりだが、その内MICレベルにも広げたいので、その節は是非支える会への参加をお願いしたい。

●山田さん(関西MIC)
 関西MICのこの1年の活動報告とお願いをしたい。昨年同様今年も明るく楽しく活動ができた。ガイドライン反対の会への加入、大阪府知事への質問状提出とその回答をMICの組合員に知らせ選挙の参考にできたこと、女性を中心にした「愛と平和の集い」の活動、また第3回サマーキャンプのとりくみ、などを行ってきた。しかし、若い人がなかなか出てこないのが悩みだ。国民平和大行進は、印刷と出版のみの活動だったが、昨年からMICとして取り組む方向で議論をしており、今年は短期間、少人数ではあったがMICとしての参加もあった。  一方で萬年社・大有社が自己破産をし、萬年社では360名全員が解雇され、大有社は破産申請から2〜3日のうちにロックアウトされた。これらを見ていると、弱いものはつぶせという資本側の意思を感じる。萬年社では労働債権確保、背景資本の責任追及等の要求を掲げて署名に取り組んでいるが、目標として、この秋までに1000団体、10,000人を集めたい。また、ガイドライン関連法は通ったが、民放近畿が中心の「スコーポ」が、近畿の基地・軍港をビデオにとって訴えていく運動を関西MICとしてやっている。すでにいくつかの注文も来ているが、300万円の制作費が必要だ。11月中に製作し、3000本販売したい。こちらの方への協力もよろしく。

●岩崎さん(民放労連)
 国際交流について提案したい。来年の2月から3月にかけてスイスのジュネーブ、ILOで「マスコミ芸能産業における情報技術―雇用・労働条件・労使関係に与える影響についてについて」というシンポジウムが開かれる。特定の職能についてこうしたシンポジウムが開かれるのは30年に一回とのこと。10〜15ヶ国に指名して、政労使三者の代表が参加する。日本からは政府の他に日経連と連合に話しがいくかもしれないが、連合なら日放労というおそれがある。日本でマスコミ芸能産業唯一の共闘組織であるMICは、ぜひこの機会に参加すべきだ。これを逃がすと30年間機会がない。賃金や労働条件など、各単産のレポートを持ってILOに行くように、是非各単産で議論を深めて積極的な参加の方針を出してほしい。

●徳山さん(広告労協)
 萬年社闘争について、いま関西MICの方が詳しく本社状況をご報告いただいたが、萬年社の支社と労組支部は東京にある。ここでは対策会議をMICの幹部の方々やOBの方のお知恵を借りながら2回やった。また東京独自に激励集会も開いた。しかし東京支部の方は、現在ちぎれ状態になっている。また、支援共闘会議も関東では結成されるにいたらなかった。広告労協が抱えているもう一つの東陽社闘争の方は、現在中労委にかかっている。朝日新聞社は都労委命令に対して、不服の申し立てを裁判所におこし、中労委の和解勧告もいっさい拒否している状態である。来る11月24日に予定されている「MIC争議支援1日行動」にできるだけ多く参加して、東陽社闘争をはじめMIC関連の争議の解決にご協力をお願いしたい。

●三谷さん(京都MIC)
 京都MICの活動報告をしたい。99春闘では、大きな柱として映画や音楽の仲間とともに楽しい集会を開催した。3.19ミュージックの日として、昼は清水寺の奥でコンサートを開き、音楽家の待遇向上を訴えた。また、マスコミ文化フォーラムでは、放送のデジタル化について法政大学の須藤春夫氏の講演と日放労、地域、京都放送などの現場からの報告を受けた。現場からはデジタル化に向けて、労働強化がなされているとの報告がされた。私が働く京都放送では、更正法の下でたたかっているが、デジタル化の先行投資ということで、更正変更―(社屋のある土地を欲しがっている者がおり)の動きがでてきている。また支援を要請することになるかも知れないのでよろしくお願いしたい。また平和と人権を守る闘いとして、自由法曹団、京都総評と連帯し街頭宣伝等を行い、7月21日には市民約200名が参加した、「盗聴法案の廃案を求める市民パレード」の呼びかけを行った。動きの激しい政治状況なので情報を交換し共有していくことが重要と思われる。各地方MICと連帯し、ネットワークづくりをして共闘していきたい。また平和と人権を守る闘いについて、マスコミ労働者として世論を励ましながら活動して行くべきだと考える。

●柴田さん(民放労連)
 民放労連の委員長の柴田です。出版をはじめ各産業に構造上の問題があるとの報告を聞いていると、この経済状況を含めてかなり厳しい21世紀がくるのを感じる。従って今後のMICの活動の中でも、産業政策委員会、賃金プロジェクト、労働法制の委員会の役割は特に重要になると思われる。産業構造上の問題となると一組合、一単産だけではどうにもならないことが多い。「21世紀のメディア」を考える上で、この一年はかなり重要な年になると思う。民放でいうと、「21世紀の情報通信ビジョン」を本年度中に打ち出そうという話がある、通信と放送が2010年までに相互の参入を解禁することで、放送業界の規制緩和となる。デジタル・多チャンネル化は、ソフトの深刻な不足を招き、コストが掛かるソフトはダメ、となり、これが安い契約単価の労働者−おびただしい派遣労働者が一層増えることになろう。また、地上波のチャンネルプランについて、郵政省、民放、NHKで検討されているが、技術主導下の検討では「ソフトの問題」は置いてけぼりの可能性があり、民放労連としてもどれだけものがいえるか重大な時期を迎えている。

●杉崎さん(映演共闘)  映画・演劇は構造不況で企業も労働組合もメディアミックスに対応しきれないという問題にも直面している。「争議予備軍」の映演共闘になると思われるがよろしくお願いしたい。今年3月、松竹富士が突然解散、28名の組合員が全員解雇という攻撃が起きた。映演共闘はいち早く支援共闘を立ち上げ(MICの岩崎さんが議長)、8月30日に解決した。19名は松竹に転籍、9名は転職した。この闘争にあたってはMICのバックアップが効果を発揮した。改めて御礼を申し上げる。 悪政の影響は映画にも現れており、その例が昨年の映画「プライド」であった。この映画には上映反対運動を展開し、この運動をベースに「映画の自由と真実を守る全国ネットワーク」が作られた。このネットワークにMICのみなさんが入ることをお願いしたい。ま た、11月8日には映倫委員長でもある青山学院大名誉教授・清水英夫氏を講師に招いて「日本国憲法と映画の自由」についての学習会を開くことにしており、こちらへのご参加もお願いしたい。産業状況は依然として厳しいが、映画の自由を守り、映画の復興のためにMICに依拠して引き続きがんばりたい。
(文責 事務局)


 

 MIC時短労災委員会と女性連絡会では、この夏にMIC内の組合と女性組合員を対象に「女性の働き方」アンケート調査を実施し、女子保護規定撤廃以降の職場や女性たちの  現状把握に取り組みました。
 最近MIC内の女性の働き方がますます長時間・過密化しているなか、今年4月の女子穂撤廃がこうした傾向を産業全体に拡大させるのではないかという危機感から取り組まれたものです。
 このほど、その集計結果がまとまったため、本号では結果の一端をご紹介します。

 調査の概要
 1.調査時期 1999年7月上旬〜8月下旬
 1.調査対象 MICに加盟する新聞、印刷、放送、出版、映画演劇、広告、電算の組合と、組合に加入する女性組合員及びその周辺の非組合員
 1.回収数 組合用 163通        個人用 2,401通

【個人アンケート回答者の年代別・産業別内訳】 (人・
20代以下 30代 40代 50代以上 合計
全体 856 35.7 696 29.0 401 16.7 359 15.2 2,401 100.0
新聞 144 42.9 100 29.8 52 15.5 40 11.9 336 100.0
印刷 52 49.1 16 15.1 17 16.0 20 18.9 106 100.0
放送 252 38.0 201 30.3 123 18.5 88 13.3 552 100.0
出版 134 24.3 151 27.4 136 24.6 130 23.0 552 100.0
映画演劇 61 30.7 69 34.7 22 11.1 45 22.6 199 100.0
広告 80 32.5 101 41.1 35 14.2 29 11.8 246 100.0


 既に4割の組合に就業規則・36協定の変更が提案されている

 4月の女子保護規定撤廃以降、既に約4割の65組合に就業規則や36協定の変更が提案されています。このうち、提案どおり改定されたのが46組合にのぼり、提案をはね返して拒否したのは5組合にとどまりました。変更内容は女性の残業時間上限延長が50%、女性の深夜業の導入や範囲拡大が28%となっています。
 そもそも36協定の締結率は今回の調査では全体の63%に過ぎません。しかも協定の上限時間が守られていると回答したのはそのうちの4割。全組合中、36協定を結び、かつその上限時間が守られているのは全体の4分の1しかないことになります。
 36協定の内容は男女同一の上限時間で結んでいるのが既に7割、男女別の上限時間で協定しているのは3割となっています。
 組合員の残業時間を把握している組合に残 業時間の月間平均を尋ねた質問では、男女全体の平均が月間33.3時間でした。もっとも男女別により細かく把握している組合の平均では男性25.4時間、女性16.3時間となっており、詳細に実態把握につとめている組合ほど時短の取り組みが進んでいるように推察さ れます。
 また、女性の深夜労働がすべての職場で既に解禁されているところが44%にのぼっています。ただし、深夜業が導入されているところでも、小学生のいる場合や本人同意が前提になっているなど、4分の1には法定を上回る免除措置があります。

 女子保護撤廃に対する評価はほぼ拮抗

 個人対象のアンケートでは、80.5%の人が4月に女子保護規定が撤廃されたことを知っていたと答えました。もっとも契約社員やパート、派遣など正社員以外の人は38.9%、 の42.1%に達しています。「男女共に年間150時間に規制すべきだ」という人は24.6%、「男女共通で年間360時間にすべきだ」という人は14.2%でした。「男女別の上限時間で規制すべきだ」という人は全体の4.5%に過ぎず、男女別のダブルスタンダードを求めていく方針は、女性組合員の心情にあまりフィットしていないようです。

 直近の残業時間は意外と少ないが、半数の人にサービス残業がある

 直近1カ月の残業時間は、私たち調査担当者の予想とは異なって以外に少なく、10時間未満という人が全体の42.6%を占め、25時間未満という層まで含めると全体の8割になります。調査時期が夏休みとちょうど重なっていたことや、印刷・電算など受注産業への不況の影響もあるかと思われます。地方からの回答者の比率が比較的高く、東京や大阪ほどは女性の労働実態が深刻化していないとも思われます。
 もっとも女子保護規定適用外の職種と答えた人の間では月間50時間を超える人が20.6%にのぼっています。
 また平日に手当の支払われないサービス残業があるという人が全体の44.3%。深夜にもサービス残業があるという人が12.5%もあります。

 規定撤廃の影響が出てくるきざし?

 4月以降、深夜や休日の残業、泊り勤務などが増えたという人は減ったという人に比べ、それほど多くはなく、撤廃の影響はこの調査時点ではさほど顕著ではありません。ただし、MICの中では女子保護規定対象の職種の比率が高い印刷と電算に変化のきざしがうかがえ、印刷では14.2%、電算で12.4%の人が平日の残業が4月以降増えたと回答しています。とりわけ電算では、深夜残業が「増えた」という人が10.6%で、「減った」という1.2%と対照的な数字となっています。経営が女子保護規定撤廃を「有効活用」し始めているようすがうかがえます。

 休暇や人員増についての要求が強い

 今、MIC女性たちにとって、職場の人員増と各種の休暇を実際に取れるように条件整備してほしいということが共通した強い要求になっています。いずれの産業、職種、年代でも「人員増」「有給休暇を取りやすく」「フレックスタイムの導入」「産休・育休・介護休暇の有給化」「育休・介護休暇を取りやすく」の5項目が要求の上位を占めています。
 今回のアンケートでは最後に均等法改正に関連して、採用・昇格・配置における男女差別やセクハラの問題についても尋ねましたが、ここではもうご紹介するゆとりがありません。詳しい報告書は各単産本部にお届けしてありますので、単産本部かMIC事務局にお問い合わせください。
 調査票に書き込まれた自由記述欄まで読み込んでいくと、「男性に負けないように仕事をしたい」と苦闘する若い女性や、出産や子育てを前にして逡巡する女性たちの姿が鮮明に浮かび上がってきます。仕事のうえでも充実した毎日を送りながら、自分自身の生活やいのちと健康を守りながら働き続けるにはどうしたらいいのか、女性の働き方を確立していくことが重大で急がれるテーマになっていることを痛感します。(MIC事務局)


 
MIC特別シンポ 99.10.9

 女性の働き方のアンケート結果の報告を兼ねて、10月9日、エデュカス東京でシンポジウムが開催された。
 まず、井戸MIC事務局次長からアンケート結果の概要が報告された(詳細については別掲・レポートを参照されたい)。
 続いてウェブ・コラムニスト名塚紀子氏が「21世紀の女性の働き方について思う」と題して基調講演を行った。名塚氏は外資系銀行総務課長という立場にもあり、講演後のパネルディスカッションでも,労働市場の真っ只中にいる管理者としての視点からの発言も随所にあった。
 講演後、葛谷晴子(広告労協)、鈴木薫子(映演共闘)、栗田文恵(民放労連)、難波弘美(新聞労連)の4氏に名塚氏もパネリストに加わり、「いま,私たちの職場は?」というテーマで実態報告があった。各パネリストからほぼ共通して報告されたことは、やはり個人の内部でも職場・組合レベルでも、「保護」か「機会均等」かという葛藤に悩んでいる実態である。「女子保護規定はキャリアの障害ととらえる人が多い。クライアントによっては女性の方が仕事がしやすく、男性と同等の処遇を受けているが、回答者60人中子どもがいる人は1人だけ。本当に働きやすいのか(葛谷・広告)」。「舞台は男の世界。女性は長時間働いて一人前の仕事ができると認められる。協定で女性は午後10時までと規定しているが、一緒に『上がりたい』という熱意を消すことはできない。しかし、深夜残業をできる人がスタンダードになり、できない人はマイナス評価される(鈴木・映演)」。「家庭を持つ人に女子保護規定撤廃反対が多く、均等法直後に入社した人たちの方が撤廃に賛成で、門戸が広がったと評価する。しかし、子どものいる40代の女性に突然宿泊勤務命令がされたり、転勤に対して『男だったら従う』という意識で迫られると、不安や疑問の声も上がってきた。女性であることを忘れてほしく はないが、女性であることをわからせなくするような働き方はマイナスではないか(栗田・民放)」。「女性の長時間労働、深夜・宿泊勤務が常態化している。保護は足枷となるという意識がある。奥尻地震の際、女性記者を前線に派遣しなかったのは差別ととらえた。また、自分だけ抜けることには罪悪感がある。しかし、女性が宿泊勤務をするようになっても、男性を含めた全体の労働実態に風穴が開いたわけではない(難波・新聞)」。このようにある時は「女だから」と言われまいと気負って、ある時は「男性と同等に仕事をして当然」と淡然として、そしてまたある時は仕事に対する純粋な思いから働くそれぞれの姿を語った。
 コーディネーターの服部孝司氏(MIC副議長・新聞労連)は「従来は女性の問題を男性 が『考えてあげてきた』が、女性自らが自分の権利を守ろうとする姿勢に変わってきた。価値観の違いをどう要求化していくかが課題となる。女性が宿泊勤務をするようになってから、会社の一人勝ちではないか。会社側に利用されないよう、より賢くならなければならない」と提起した。これに関して「女子保護規定が撤廃されたのに、なぜ男性の働き方、生き方を見直さないのか(名塚、栗田、会場)」「男女ではなく、個人が自分の生き方・働き方を選択する自由を認めてほしい(難波)」という発言もなされた。(出版労連:小林和徳)