リストラを推進し、不安定雇用を拡大する

 これまで労働者派遣事業や有料職業紹介事業は、特別な技術や専門的な知識・技術、経験を有する職業、事業に限定されていた。昨年の労働基準法改悪に続いて、政府はまたも労働者派遣法と職業安定法の改悪をこの国会で通過させようとしている。政府や財界の言がどうあろうと、企業が派遣労働者を求める真の理由は、常用労働者に比べて派遣労働者のコストの方がはるかに低いため、いずれ常用から派遣に切り替えて人件費の大幅減を行うことにあることは間違いない。また、職業安定法の精神は、国が責任を持って国民に就労の機会を提供するとともに、公的職業安定機関が紹介する仕事は、労基法で定められた基準を下回らない労働条件を確保するという、憲法が定めた国民に対する労働権保障の具体化そのものであった。こうした法の精神を骨抜きにして、派遣対象業務や有料職業紹介を自由化して労働力を流動化することは、「不安定雇用・低賃金・無権利の労働者を拡大して、正規雇用労働者とおきかえる法的条件の整備をする」ことに他ならない。
 4月28日から衆院労働委員会ではじまった、労働者派遣法「改正」法案と職安法「改正」案の審議は、これらの問題点が十分審議されないまま、政府自民党は6月17日の国会終了日から逆算して国会での成立を目論んでいる。(衆院労働委員会は19日午前、労働者派遣法「改正」法案を共産党を除く与野党5会派による共同修正のうえ賛成多数で可決した)個人・団体署名を積み上げ、国会審議傍聴、要請行動を大至急強化してほしい。

 5月11日の参考人質疑、14日の委員会審議を傍聴した組合員の国会レポートを掲載する。
慎重な審議を!!
 政府は今回の派遣対象業務の自由化は、あくまで「臨時的・一時的な業務、同一の業務への派遣期間は一年を超えない」のだから、歯止めになるとしている。しかし、ここでいう「臨時的・一時的な業務、同一の業務」は、定義は全く不明である。派遣法「改正」で派遣対象業務は従来の「専門的な26業務」と専門性のない「臨時的・一時的業務」の二本立てとなる。従来の26業務は更新すれば3年までの派遣期間が可能だが、今回追加した「臨時的・一時的業務」は1年である。派遣労働者は派遣元の都合によって使い分けされる危険がある。
 共産党を除く民主党、公明党、社民党は、派遣労働者を1年以上使用し続けた場合には、派遣先に雇用を義務づけることなどを盛り込んだ共同修正案をまとめ、政府と協議する予定だという。しかし、「登録型派遣の自由化禁止が最大のポイント、野党の安易な妥協ではいかなる政党も信じるわけにはいかない」(笹森・連合事務局長/毎日新聞5月13日)というように労働者保護を曖昧にしたままの派遣法成立は何としても阻止したい。
 また、本格的な審議が行われていない職安法の「改正」では、有料職業紹介事業が一層自由化され、「求人者のプライバシー保護はなく、紹介手数料は野放し、リストラ合理化の手段」として、利用されるなどの危険性がある。今後の慎重な審議を期待したい。(出版労連労働法制特別委員会堀根)


 

中央労働委員会の労働者委員に
今度こそ磯崎さん(民放労連顧問)を送ろう

 5月15日午後、労働委員会民主化対策会議の総会が開催された。全国の地労委、中労委での労働者側委員は一部を除いて、連合が独占するという偏向任命を改めさせ、2000年10月に改選を迎える中労委の労働者委員にMIC、純中立懇、全労連が統一しての候補・磯崎弘幸さん(民放労連顧問、元MIC事務局次長)をなんとしても送り込もう、との意志を確認した。

磯崎さんの決意表明
 三たび中労委の労働者委員の統一候補に推薦を受けて、99年2月から異例の早い立ち上がりで、26期の候補者活動を開始した。4月13日に埼玉県労連から朗報が届いた。もう偏向任命の時代は終わらせなければならない。今度こそ中労委でも確実に任命されるよう、候補者としてもがんばる。今後、総理大臣への1万団体署名、労働省への要請行動、労働委員会のあり方を問う提言運動など、偏向任命に終止符を打ち、流れを変える運動にお力添えをお願いする。

磯崎さんのプロフィル
 1937年11月1日生まれ、現在61歳。1956年南海放送に入社。1960年から97年まで37年間、民放の組合活動を続け、うち35年間は本部役員として書記長や副委員長を歴任。民放の26組合の争議解決と40を越える労働組合の結成に携わる。津軽・南部民謡の名取り。血液型O型。


 

放送のデジタル/多チャンネル化と創り手の権利

 去る2月、MIC・民放労連の共催でひらかれた「放送のデジタル/多チャンネル化」をテーマにした興味深いシンポジウムを紹介しながら、デジタル/多チャンネル化が進行する現状のなかでの映像・音声ソフトとその創り手(実演家やスタッフ)の「権利」について考えてみたい。
 興味深いといったのは、このシンポジウムで行われたパネルディスカッション『デジタル・多チャンネル時代の製作者、実演家、放送局』のパネリストに、重延浩(テレビマンユニオン社長=番組製作者)、棚野正士(芸団協専務理事=実演家団体)、牧田昭一(JASRAC業務本部総務=音楽著作権者団体)、高橋幸雄(放送ソフト流通促進協議会事務局長=放送局)と日本の放送ソフトと著作権問題で各界の第一線で活動している人たちががそろったからで、このメンバーが文化庁の会議や団体間の協議の塲でならともかく、開かれたシンポジウムで一堂に会して議論するのははじめてのことだったのではないだろうか。

デジタル/多チャンネル化とは
第1部「多チャンネル化の基礎講座」では九州朝日放送の東京支社勤務の早川裕章さんが、デジタル/多チャンネル化について短時間で手際よく解説してくれた。
 その受け売りになるが放送のデジタル化とは、さまざまな情報の伝達手段をアナログ(信号)からデジタル(信号)へ転換して、日本を「高度情報通信社会」にしようとする国の政策の一環である。たとえばレコードがCDやMDになり、携帯電話がデジタルになる。光ファイバーが全国にはりめぐらされインターネットで情報が飛び交う。これに放送のデジタル化がすすめば、放送と通信とのシームレスな「トータルデジタルネットワーク」が実現し(国民に?)多彩なサービスができるというのが郵政省の説明である。
 そうなれば、いまのテレビ(受像機)は使えなくなり、デジタル対応の受像機に買い替えるかコンバータをつけなければならない。デジタル化にかかる莫大な費用をだれが負担するのか、そもそもデジタル放送は消費者(国民)に受け入れられるのかという根本問題があるが、CS(通信衛星)放送(1996年パーフェクTV、97年ディレクTV放送開始)を皮切りに、2001年春にはBS(放送衛星)放送、2003年末から地上波テレビのデジタル放送開始が予定され、郵政省のタイムスケジュールでは、テレビのアナログ放送停止(完全デジタル化)の目安は2010年となっている。
 デジタル化の特徴は「高画質(高音質)」(画像や音声が劣化しない)、「高機能」(双方向送信機能など)と「多チャンネル」である。現在すでに、スカイパーフェクTVのテレビ放送163チャンネル、音声放送106チャンネル、ディレクTVはテレビ153チャンネル、音声35チャンネルと、テレビだけでも合計316チャンネルのCSデジタルテレビ放送が日本の空から降り注いでいる。BSデジタル放送がはじまれば、さらにテレビ25チャンネル、音声放送も超短波放送で22チャンネルふえる。放送はもはや多チャンネル時代に突入している。

「著作権」がキーワード
 これだけ多くのチャンネルの番組をまかなうには大量の放送ソフトが必要になる。しかし有料放送であれ広告放送であれ、限られた収入を数多くのチャンネルでわけ合う関係で番組にお金をかけられない、したがって必要な放送ソフトを過去の映画や放送番組に求めることになる。ところが現状では、シナリオライター、作曲家、実演家など放送ソフトの権利者と利用者の間のルールが確立していないことが障害になって、放送ソフトを衛星放送などで自由に使うことができない。国際的にもWIPO(世界知的所有権機関)において、視聴覚実演の保護に関する新条約などが議論されている。デジタル/多チャンネル時代は「著作権」がキーワードなのである。
 パネルディスカッションの焦点もここにあった。
 テレビマンユニオンの重延さんは、テレビ番組製作会社の立場からデジタル時代の契約のあり方について、権利を独占しようとする放送局のオールライツ主義を批判し、独占でなく共存的な方向で契約を一からみなおし「メディアが共生する」よう、また放送ソフトを経済性のみではかる傾向をいましめ産業と文化の両立をはかるよう提起した。
 最近、番組の最後に「製作著作○○○」(○○○は局名)と表示されることが多くなったが、あれはその番組ソフトの著作権をその局がもっていることを示すものである。ところが、実際にその番組を企画から資金繰り、制作現場の制作実務、権利処理まで責任をもって行っているのは、番組クレジットの最後に「制作協力」と表示される製作会社である場合が少なくない。これらの番組ソフトの著作権は法律上は製作会社に帰属することになっているのに、圧倒的な力関係を背景に著作権を局がとりあげたケースである。窓口権という意味不明な「権利」を放送局がにぎり、実質的に著作権を放送局が支配するケースも多い。
 芸団協の棚野さんも、権利処理のルールづくりは対立関係では解決できないとして「対立から協調へ」と提起した。同時に著作権法が、映画における実演家の権利を「音」については一定の範囲で認めているが「映像」については認めていない点を改めるよう映画著作権のみなおしを強く訴えた。
 JASRAC(音楽著作権協会)の牧田さんは、音楽を利用する事業を開始する場合、事前に 権利者側に相談してほしい。著作権使用料はコストとして捉えてほしい。の2点を提起した。
 放送ソフト流通促進協議会の高橋さんは、キー局で20年間も著作権業務を担当し5年前まで著作権部長だったひとで、現在も民放連著作権専門部会委員であるが、その立場から、放送局と制作会社が公正な取引慣習づくりの協議を重ね、放送局、番組製作会社は権利者団体と権利処理のルールを策定し放送ソフトの流通環境の整備に取り組むべきだと提起した。
 このようにパネリストの発言は、放送局、製作会社と権利者団体の間の公正なルールをつくる必要性と、それを対決でなく協調の方向ですすめるべきだという点で一致したが、放送局や大手映画会社のかたくなな姿勢を軟化させるのは容易なことではない。
 実例をあげると、日俳連(日本俳優連合)は、アニメ製作会社の事業者団体日本動画製作者連盟、音声製作会社(録音スタジオ)の事業者団体日本音声製作者連盟(音声連)との3者間の協約にもとづき、アニメ製作における声優の出演協定を音声連と締結している。この協定では、TVアニメがビデオ化された場合、声優に転用料(追加報酬)が支払われることになっているのだが「小公子」などを製作している老舗のアニメ製作会社日本アニメーションが、協定を無視して転用料の支払いを拒否しているため、日俳連は裁判所へ調停申請をしようとしている。
 森繁さんが「ボカァ、ただじゃないですよ」といい「デジタル時代にふさわしい著作権法が、いま、必要です」と訴えている芸団協・著作隣接権センターのポスターを思い起こす。

労災保険適用や製作条件改善も
 シンポジウムの会場では、主催者側であることを意識し配慮して発言しなかったが、私は実演家やスタッフなど映像・音声ソフトの創り手たちは、著作権確立と労働基準獲得を車の両輪にして運動をすすめるべきだと思う。
 フリーの俳優やスタッフは、労働基準法の労働者として認められないという理由で、国の労災保険制度から事実上排除されている。とかく危険な製作現場で安心して仕事ができないで、いい作品ができるわけがない。最近親しい俳優が私にこういった。「朝6時に幕張に集合、28時(翌朝4時)撮影終了。これでいいテレビドラマができると思う?」 (MIC幹事・映演共闘副議長緒方承武)


 

MIC賃金学習会 盛況
「どう向き合う? 能力・実績主義」

 4月3日(土)、出版労連・会議室でMIC賃金プロジェクト主催で賃金学習会が開かれました。各マスコミの職場には一昨年あたりから賃金体系変更提案が具体的に現れはじめていますが、MIC全体で状況を交流する機会はありませんでした。しかし、今春闘では評価制度の提案や中高年齢層の賃金を抑制する変更提案が急増し、能力主義、成果主義の動きが顕著になっています。そこで「能力主義と企業社会」=岩波新書の著者である熊沢誠先生(甲南大学教授)を講師に依頼して賃金学習会を開きました。
 最初に熊沢先生は戦後の日本の経済的な状況と電算型賃金が定着した背景を説明しながら、現在の能力主義、成果主義といわれる賃金体系に変遷する過程を、職場の実態と関連づけて述べられました。特に高度経済成長期を経て、技術革新や雇用形態の変化、長時間・ノルマ増大などのなかで職場に生じている矛盾とその流れについていけない弱者への差別化などが複雑に絡み合っている「賃金」のあり方について検討することの重要性が強調されました。
 また、バブル以降の特徴として一人ひとりの労働者に課せられた仕事の範囲が広くなり、例えばこれまでの仕事に営業のノルマが課せられるなどの状況がでていることや、職種ごとの賃金がいわれる一方で、いわゆる「一般事務」と呼ばれている仕事についても曖昧にせずに位置づけることが重要であるという指摘もありました。
 講演のあとの質疑で参加者からは一企業内で職種の異なる場合の組織運営や要求の統一のありかた、また、賃金や権利に対する世代間のギャップをどのように考えていくのかなどの質問が出されました。 予定時間を延長しての学習会は多様化と専門性が進行しているマスコミの職場で、仕事の内容・共通性を軸にした賃金要求や組織運営をどのように考えていくのかという悩みを抱えている状況にフィットした有意義なものとなりました。(MIC幹事・出版 橋田源二)


 

MIC争議多発!解決に向けて次々と支援共闘会議が結成される

 戦後最大の不況を反映して昨年末から、MIC関連の単産に争議が発生している。
 一日も早い争議の解決に向けて、MIC幹事会ではそれぞれの争議団・組合、単産の要請に応えて支援共闘会議の役員を派遣している。争議の概要と共闘会議代表の紹介をする。

●三一書房争議(出版労連)
 昨年秋、三一経営は団交を重ねている途中から出社しなくなり、突如11月14日になって本社をロックアウト、三役を懲戒解雇、執行委員4名を停職処分、残りの組合員を自宅待機の命令を通知してきた。組合つぶしのために会社ごと整理をたくらむ経営陣に多数の株主が決起、1月14日、新経営陣はロックアウトを解除、すべての処分を解除した。真の再建・業務再開に向けて職場を確保するために泊まり込みを続け闘争中。 「許すな組合つぶし、守ろう表現の場」三一書房争議支援共闘会議を1月14日に結成。(議長:渡辺起造出版労連顧問 副議長:服部孝司MIC副議長)

●萬年社争議(広告労協)
 1890年(明治23年)創業の広告代理店の老舗・萬年社(本社大阪)が、2月24日、自己破産申請。3月12日破産宣告・全員解雇(360名余)となりました。萬年社労組は、全従業員の労働債権確保、雇用保障・就職斡旋を獲得することを基本に、萬年社経営、背景資本の毎日放送、毎日新聞社、三和銀行などの責任追及の闘いを開始しています。また要求実現にむけて、たたかいの輪を広げるために、4月1日「萬年社労働組合支援共闘会議(関西)」を結成。(議長:村上茂全毎連代表幹事、事務局長:安井克己広告労協関西副議長)なお、大阪の大有社も3月12日自己破産、15日全員解雇の攻撃がでています。

●松竹富士争議(映演共闘)
 松竹系の洋画配給会社として、かっては「ラストエンペラー」や今現在も「シン・レッド・ライン」、「ライフ・イズ・ビューティフル」等のヒット作を配給している「松竹富士株式会社」は、去る3月5日突如として「8月末をもって会社解散、社員28名は全員解雇」を一方的に通告してきました。松竹富士労組はMS(管理職)を含めて全体が団結して、早くも4月27日「松竹富士支援共闘会議」を結成して、たたかう体制を固めた。(議長:岩崎貞明MIC副議長・民放労連委員長)

●ロイタージャパン争議(新聞労連)
 1月29日、東京地裁は「(会社側の弁明を)疑わしく、信用できない」としつつも、豊田典子さんの解雇撤回、職場復帰の訴えを棄却しました。豊田さんは東京高裁に控訴して、不当判決を跳ね返して早期に争議の解決をはかるために3月31日「ロイター豊田解雇事件支援共闘会議」をつくってたたかう体制を強化しました。(議長:今井一雄MIC議長・出版労連委員長)

●角川文化振興財団争議(出版労連)
 「角川日本地名辞典」など大型文化図書の編纂で知られる財団法人角川文化振興財団は、3月末日で編さん室を解散して、従業員14人の解雇を強行しました。うち10人は組合(出版労連ユニティ・角川財団班)をつくり、財団と親会社の角川書店を相手に裁判闘争を開始するとともに、5月11日「角川書店グループのリストラ・不当解雇撤回争議支援共闘会議」を結成。(議長:碓井邦夫MIC副議長・全印総連委員長)


 

春のMIC争議支援総行動をにぎやかに展開

 恒例のMIC争議支援総行動が取り組まれた。有楽町駅の朝ビラから午前5経営、午後5経営の10争議の抗議・要請が音楽ユニオン・メンバーによるデキシーランド ジャズの演奏を交えて、天気にも恵まれて多彩な1日行動となった。
 午前中は、朝日新聞本社(東陽社分会支援)、ピアワンインポーツ(暁美術印刷)、昼休みのロイタージャパン前抗議行動。代表団コースは、ストアーズ社、と読売新聞本社(上村過労死事件)。午後のAコースはオールスタッフ社、ほるぷ社、Bコースは日本テレビ(ラジオ日本争議支援)、ED社、最後に偕成社前で再び合流して、まとめの集会を行った。