メディアへの権力の介入を許さないたたかいを強化
 
第40回定期総会開催

 MIC第40回定期総会は、9月29日(土)全労連会館の2階ホールで開催された。各単産の代表、地方MICの代表など71人が参加した。総会は川村幹事の開会挨拶の後、議長団に池田さん(新聞労連)、澤谷さん(全印総連)を選出して議事に入った。今井議長の挨拶、来賓として国分武さん(労働委員民主化対策会議事務局長)、須藤春夫さん(メディア総合研究所所長)からそれぞれご挨拶(別掲)をいただいた。2001年度の活動報告と来年度の基本方針を鋤柄事務局長が提案、決算・予算の提案を井戸事務局次長が行った後、横山会計監査より監査報告がなされ、午前の議事を終了、昼食・休憩に入った。再開後、小口克巳さん(自由法曹団事務局長)、林豊さん(日本ジャーナリスト会議事務局長)から来賓のご挨拶(別掲)をいただいた後、討論に入り、14人の方から発言があった。討論終了後は鋤柄事務局長のまとめと活動報告と決算予算の承認、総会宣言・特別決議の採択がなされた。その後役員選考委員会の報告を碓井副議長が行い、今井議長の留任と新任の事務局長に池田さん(新聞労連副委員長)が選出され、女性連絡会議からも早い時期に幹事の選出を、との要望がだされた。今期退任される川村幹事(全印総連)、高橋事務局次長(出版労連)の挨拶の後、碓氷副議長(民放労連)の閉会挨拶で定期総会を終了した。
 なお、恒例の地方MIC代表者会議が総会前日の28日午後、MICの会議室で行われた。5名の参加で、各地方MICの現状、課題、MICへの要望などについて話された。

 

 

開会挨拶
 
  

MIC議長 今井一雄

 いま日本の労働運動と組合は、大きな転機に遭遇しているというのが、私の認識であります。MICには8つの単産が加盟していますが、その単産の中には、運動上の問題とは言い切れない危機的な状況を抱えている単産があります。組合員が減少している、執行体制が十分に確立しない、財政的な基盤が揺らいでいるなど、むしろ組織問題ともいうべき困難を抱えています。
 こうした事態は、何もMIC傘下の単産に限りません。いずこも組織人員を減らしておりますし、それに伴う人的、財政的基盤の不安にさらされているのが実情であります。
 それは、日本の社会の諸矛盾の反映と言えます。バブル崩壊から10年、日本の経済は低迷を続け、構造改革は成果を上げえないまま、逆に人心の閉塞感と焦燥感にあおられ、政治の動向も急速な右旋回を来たしています。そして政治・経済の急速な傾斜に対して、労働組合はなすすべもなく流されているというのが現状ではないでしょうか。
 こうした私たちにとっての全般的な危機は、一人一人の労働者を萎縮させ、その労働者の担う組合という組織は、展望を見失い要求を獲得するたたかいすらも十分に構築できないまま、自己崩壊の道を歩んでいるように、私には見えます。
 私たちはどこまでおとしめられれば、反撃を開始するのでしょうか。崖っぷちに追いつめられ、そのままおめおめと崖から落ちていくほかないのでしょうか。
 現今の、政治と経済の混迷、そしてIT革命の波は、明らかに一時代前の状況と異なります。かつての単純明快な社会の構造は、輻輳し、労働組合の果たすべき役割も大きく変貌してきていると言わざるを得ません。にも関わらず、私たちは旧態依然とした運動論、組織論に縛られ、時代の変化に対応できないままでいるのではないでしょうか。
 そういう意味で私たちの運動と組織は、過渡的に遭遇しているといえます。従って私たちは、本気になって運動と組織の建て直しを図る必要があります。
 MICには本来二つの役割が課せられていると、私は考えております。その一つは、組織の名称が示す通り、言論・出版・表現といったメディアとしての役割であります。そしてもう一つは、働く者の仕事と生活を保障する役割であります。
 否定的かつ悲観的なことばかり申し上げました。労働組合の成果がプロセスではなく結果で判断されるとするならば、客観的にはいま申し上げた通りであろうと思います。
 しかし、私たちは決して過去の栄光に甘んじていたわけではなくて、不十分ではあるにしても現実をリアルに認識し、運動と組織の再興のために必死に努力してきました。その努力は未だ報われないとしても、戦略的な方向は少しずつではありますが、見えてきたように思います。
 最後に、9月11日のアメリカで起きた同時多発テロについて申し上げます。
 細かいことは申し上げません。ただ一つ、私はこのことで日本と私が戦争に巻き込まれるのは真っ平御免であります。また私たちメディアが、戦争のお先棒をかつぐことだけは止めようとだけ表明して、挨拶にかえさせていただきます。
 

 
 
来賓挨拶
 
 

国分武さん(労働委員会民主化対策会議事務局長)

 教科書問題では、一部養護学校では採用されたが公立学校ではこれを認めさせてこなかった。地域の草の根運動で、こうした反動勢力の企てを跳ね返したことは大変高く評価すべきであると思うし、私たちの運動の成果であることをともに確認をしたい。その先頭にたってたたかってきたMICの皆さんに敬意を表したい。また、労働委員会民主化の活動に一貫してご尽力いただいていることに感謝をしたい。
 労働委員会民主化対策委員会にとってこの一年間は大変悔いの残る1年だった。昨年10月に26期中央労働者委員に民放労連の磯崎さんを擁立して、MIC・全労連・純中立懇の統一候補として推薦し、任命のための運動を盛り上げてきたが、不当にも拒否をされ、さらに今年4月に新たに2名増員された独立行政担当の労働者委員についても全労連副議長の熊谷さんを推薦しともにたたかってきたが、土壇場で任命を拒否された。中労委労働者委員15名は、この結果全員が特定の潮流からの推薦という事態を許すことになった。これは政府自らが発した54号通牒にも違反しており、私たちは政府が一貫して労働組合の特定の潮流に偏重した不公正な労働行政を続けていることに、改めて強い怒りをもって抗議した。同時に来年の27期中央労働委員の選任については改めて初心に戻って運動を強化していく必要がある。幸いにも、民間担当についてはMICの議長であり出版労連の委員長である今井さんが、民主化対策会議の統一候補として早々と擁立することができたし、国営担当についても現在着々とその調整が続けられている。来年の10月に向けて民主化対策会議としては、政府の偏向任命を国際的に糾弾すべく現在ILOの結社の自由委員会にも提訴しているが、そうした活動と結合し、今までの運動の蓄積に立って公正任命のために様々な行動を展開し、必ず中央労働者委員を獲得するために奮闘したい。地方でも愛知、長野、千葉など特定の潮流を突破できそうな県も幾つかあるので、中央、地方ともに共同して頑張りぬいていきたい。
 
 

須藤春夫さん(メディア総合研究所所長)

 日本社会がおかれている状況は戦後の非常に大きな転機になっている。平和と民主主義、言論・表現の自由、私たちのくらし、どれをとっても戦後の大きな転換期になっている。
 平和と民主主義でいえば、アメリカの同時多発テロに対する国際法と国連を無視した報復の戦争行為、それに一方的に加担する小泉内閣の在りようというのは、まさに平和をそのものを大きく破壊することになる。言論・表現の自由でいえば、このところ焦眉の問題になっている「3点セット」にかかわる問題も言論・表現の自由を崩すことになる。そして私たちのくらしの破壊についていえば、小泉内閣のすすめる痛みを伴う「構造改革」ということに集約される。とくに、規制緩和と競争原理そしてグローバリゼーションの進行は、私たちの仕事そのものを奪い取ってしまう、あるいは生存の権利そのものを奪い去るという大きな危機的な転機を迎えている。
 今の日本の、あるいは国際的な状況に対してメディア側はどういう対応をするのか。むしろその危機を助長し、そして危機を自ら招き込んでいく動きがある。
政府が目指すこれらの動きは、新しい市民社会を作るためというよりもその市民社会を崩壊させることで、権力側の意図する新しい国民像作りを狙っている。その端的な例が「3点セット」に記されるメディア規制だ。従ってメディア規制の問題それ自体はメディアのコントロールだが、その規制コントロールの先に示された姿は新しい国民作りということにつながる。それは構造改革国民会議や歴史教科書問題とセットになって起こってきている。従ってメディア規制のたたかいの彼方には新しい市民像作り、政府のやろうとする国家の枠の中に市民を取り込んでいくことの対抗軸としてとりくむという展望を持たなければメディア間の足並みの不揃いを生んでしまうことになる。
 メディア総研としては市民の立場に立って新しいメディア政策を打ち出していくことを目指す団体である。しかし、そこには労働組合との密接な協力関係のもとで、はじめて研究政策ができてその成果を労働運動の中に返していくという相互の中で産業政策、メディア政策、明確な対抗軸を打ち出していく能力を高めていくことが求められている。MICの中で、新しい視点にたったメディア政策、産業政策をどううち建てていくのか議論してほしいし、そのことが平和と民主主義、人権の確立、言論表現の自由を確立していくことにつながっていくことだ。
 
 

小口克巳さん(自由法曹団事務局長)

 自由法曹団は、賃金労働条件の向上とともに言論・報道の自由を守って国民の期待にこたえる国民の本位の報道を実現するために労働運動さらには国民的規模での闘争課題などで活躍される組合の活動に心から敬意を表する。とくに教科書問題での先進的役割は記憶に新しいところだ。
 自由法曹団は政府が率先して進めようとしているリストラ合理化、労働者の人権侵害に反対して、あるいはガイドライン法の具体化、明文改憲の策動、有事立法制定などの策動に反対して様々な人々と手を携えながらたたかっている。また国民生活と権利を守って発展させるため、大衆的な裁判闘争をすすめて国民のための司法改革を実現していくためにたたかっている。
 アメリカの同時多発テロで武力報復、そしてこれに対する日本の自衛隊派兵による加担が問題になっている。しかし、これはテロとともに平和に対する挑戦だ。暴力、武力による紛争解決を撲滅しようとしてきたのが国際社会の努力だ。これに明確に反するものだ。言うまでもなく幾たびにもわたる戦争の惨禍は人類を苦しめ続けた。1928年のパリの不戦条約、国際連盟の設立、そして国際連合、国際連合憲章などが戦争をなくす唯一の道として武力による解決を否定し続けてきた。国連憲章も自衛権の行使と安保理事会の制裁、この二つを除いては武器、武力の行使を禁止している。9月12日にあった国連決議も今回のテロに自衛権行使ができるものであると認めたものではない。そして日本国憲法も「暴力を否定することこそ平和を追求する唯一の方法」であるとしている。平和的解決のために力を尽くすことこそ 日本政府と日本国民の役割だ。暴力的報復に手を貸してはならない。
21世紀を迎えた今日、自公保の体制化で様々な法律が通過した。そしてみせかけの小泉内閣の高支持率のもとで歴史の大転換が来るかもしれない情勢になっている。こうした時こそ一時の雰囲気に惑わされることなく、冷静な判断が求められる。多くの国民が結集したたたかいとともに言論報道の自由、公正で国民本位の報道は絶対なくてはならないものだ。皆さんのたたかいに大いに期待するものだ。
 
 

林豊さん(日本ジャーナリスト会議事務局長)

 日本ジャーナリスト会議は職能集団であって、MICとはILO会議やIFJ会議に一緒に参加した。3月には「誰のためのメディアか」の集会を共同で開催したり、9月には「個人情報保護法をぶっ飛ばせ!2001人集会」を成功させるための力となった。アメリカの同時多発テロでアメリカが武力報復することをもって小泉内閣は自衛隊の海外派兵をしようとしている。そして個人情報保護法が臨時国会で成立されようとしている。日本のジャーナリズムは、これらをどういう立場で伝えたらよいのかブレている。儲かるメディアから、私たちのためになるメディアにするためにとりくまなければならない。視聴者、読者がメディア不信に陥っていることを助ける一助となればと思う。日本のフリーと組織されたジャーナリストが加盟できる組織をつくっていきたい。メディアは人権を守ることの一点によって成立して支持されるのではないか。
 

 
 
討論

篠塚さん(電算労)
 議案書の中で組織委員会の活動にふれられているが、その点でひと言申し上げたい。議案書には「いま必要なのは、一方的な犠牲の押しつけに対して泣き寝入りしないための『規制力』と『交渉力』を持つことではないか」とあるが、果たしてそれだけでいいのか。電算労にこの間労働相談があった中で、あるソフトウェア会社だが400人の従業員中、90人あまりがリストラで退職勧奨を受けた。会社は別の会社を紹介したが、斡旋ではなく必ずそこに就職できるという保障もない。しかも、1カ月以内に判断を迫りそれをすぎると自己都合退職扱いとなるヒドイ内容だ。ほとんどの社員がそれを受け入れ、相談に来たのはたった一人だった。もっと労働者に権利があることを知らせるべきだ。その点で宣伝活動を強めることも盛り込んでほしい。
 MICの労供委員会について、ぜひ機関紙発行を実現してほしい。他の単産では派遣などになじまない職種が数多くあると思う。そうした仕事への職場確保など幅広い運動を方針に盛り込んでほしい。
 決算について、外部監査を受けているが、2000万円規模の会計に20万も払って受ける必要があるのか。

三谷さん(京都MIC)
京都MICでは加盟者の労働条件の改善するために、情報交換を密にして各単産・単組の交流を図っています。春闘時には決起集会で活動しています。
また、一連の「ガイドライン法」、「労働法制改悪」、「盗聴法」、「国旗国家法」、「つくる会教科書問題」、「メディア規制」などに関してフォーラムを行い、多くの市民からも参加がありました。そういった場で、「今の状況では規制されても仕方がない」との発言もあり、今のメディアがこういったメディア規制に対してはっきりと発言をしていないのでないかと思います。
今後も平和と民主主義・表現と報道の自由を守るためにたたかいを続けたいと思います。

平野さん(長崎MIC)
 長崎MICの昨年の活動は大きく3つある。第1に普賢岳の噴火災害の市民との対話集会だが、今年は三宅島、有珠山の関係者も呼んで開催した。今年で10年になるので一区切りとして終了した。噴火被害者の方々からマスコミの報道姿勢についての不満が多く寄せられた。ずかずかと空家に入って取材したり、マスコミに先に情報が入るなど、不信感は強い。精霊船を、マスコミと遺族の合同で行おうという島原の人の提案があった。
 第2はMICフォーラムの開催。高校生を平和大使としてジュネーブへ派遣した。アウシュビッツを見てきた高校生二人が、自分たちでできることはないかと1万人の署名を集めて国連へ届けようと呼びかけ、運動に取り組んだ報告があり、参加者の感動を呼んだ。
 第3はNGO核兵器廃絶集会。MICからも含め5,600人が参加してくれた。チェルノブイリなど国内外から多くの参加者があり、県や市の行政もはじめて関わった点で画期的だった。今度のテロでも市民がいち早くビラをまいたり、市民の活動は活発で、長崎MICも広報として関われたことは意義深いと思っている。

金丸さん(関西MIC)
 今春闘で開催した学習決起集会は産業政策論議の強化を図るべく「IT革命と情報産業の行方」をテーマに行い好評を博した。反核平和の取り組みでは諸事情により恒例であったピースキャンプが開催できず残念であったが、今期は教科書問題や米国テロ事件に対する取り組みを行っている。10周年となった「歌う忘年会」はグランドチャンピオン大会として大いに盛り上がることができた。
 争議関係は「チボリ楽団員解雇事件」で高裁での闘いを進める中、会社側は楽団そのものの解散を発表し緊張が高まっている。新光美術の組合つぶし事件では会社側より和解提案が出され、対応すべく議論を重ねている。宝塚映像では、事業所移転を会社側が強行したため、現在組合が書記局に泊り込みをかけながら対応している。大阪東通では遂に民事再生が申請され、準キー局に対する闘いが重要となっている。
 今後とも連帯を深めながら一つ一つの問題解決に当たりたい。

羽原さん(民放労連)
 大阪東通は9月27日、大阪地裁へ民事再生法の手続き開始を申請した。負債総額は約35億円、社員150名余り。バブルの乱脈経営の不正をつかむ中で、4~5年前に民放労連に加盟した。これまで年何回か在阪の準キー局申し入れを行ってきた。準キー局では「雇用は確保できる見込み」といっているが、賃金、一時金に影響が出る可能性がある。経営責任を労働者に押し付けるなと、追及している。
 放送のデジタル化が進められ、2011年には現在のアナログ放送は中止されることが、電波法で決められた。視聴者を全く参加させない議論で、法律が変えられた。この影響は、労働条件、賃金の切り下げの面で制作会社、下請けにより厳しい形で出ている。TBSでは、分社化が進んでいる。民放労連として、デジタル化への対応の、20項目の提言をまとめた。今後民放連や各放送局に出していきたい。また下請け、プロダクション等の、賃金、労働条件引き上げる闘いをめざす。
 民放労連でも組合員が減っている。この年末には、500人の加入運動を、取り組む。個人加盟労組として、「放送スタッフユニオン」を各地に作っていきたい。
メデイア規制法反対、米国同時多発テロと米軍の報復攻撃、小泉内閣の憲法をふみにじる自衛隊派遣についても取組みを進める。

松本さん(音楽ユニオン)
 チボリジャパンの岡山地裁での闘争勝利への絶大なご支援に対して心からお礼を申し上げます。裁判の舞台は広島高裁岡山支部に移り、引き続き大きな支援をお願いいたします。 
 芸術文化基本法の中間まとめに関して実演家・音楽家が求める2つの柱があり、1つは国民が等しく文化にアクセスする機会を増やすこと、それと同時に大幅な芸術文化の助成、税制優遇、実演家の地位の向上を盛り込んでいます。MIC全体の支援力も借り、私達が希望する形での基本法の制定を目指していきたい。国と地方自治体の役割分担が必要で自治体間のホール設立競争により、ハコモノだけ立派で中味がお粗末な文化ホールが出来上がっているといった現状に対して、創造集団と施設が一体となった政策が進められる様な仕組みを作って欲しいということ、或いは、文化評議会を設置して、助成金の分配や文化政策に、もっと専門家が関われる様な仕組みを法律の中に盛り込んでほしいということを要望しています。公明党と自由党が法律を提案していますが、与党の党利党略で決まっていくのではなくて、全て超党派で、この基本法が実現するような方向が望ましい。
 もう一つは文化予算に関して昨年末に突如打ち出された補正予算60億の使われ方に至っては、活動の助成というより、景気対策の一環という傾向が強く、本当に必要としていることに充分使われているとは言えない。
 助成金全体が特別枠となり、大きく増えていると言えるものの、全体の予算の0.1%を超えるにすぎず、欧米先進国の1%というレベルにはまだまだ遠く及ばないというのが現状であるが、本当に必要としている所へ必要な形で予算が当てられるよう、監視していかなければならないし、一緒に運動を進めて頂ければと思っています。

大久保さん(出版労連)
21世紀の始まりにおいて、「つくる会」の教科書を521冊のみの採択に封じ込めることができたことは、(闘いの)勝利として報告することができます。今回の勝利は、民主的な草の根運動の成果です。この運動の立ち上げにMICの仲間たちが役割を果たしました。また朝日新聞の論調が運動の大きな後押しにつながりました。さらに韓国言論労連との共同も成果を挙げることができました。今回の運動において一定の役割を果たすことはできましたが、まだ第1幕にすぎません。結果的に弱いところへのしわ寄せを防ぐことができなかったことは、今後に教訓を残しました。「つくる会」の動きを封じ込めていく運動が引き続き必要になっています。また、年末に「教育基本法」の国会への上程が予定されている危機的状況にあり、(民主主義を)守るたたかいが必要になっています。

白石さん(全印総連)
 印刷産業の状況は議案書にもあるとおりだが、深刻な不況で供給過剰状態だ。しかも、大日本や凸版など大手が参入して、昨年は700〜800社が倒産し、賃金抑制が相次いでいる。全印総連にも今年の2月から労働相談が相次いでいるが、賃金の遅配も東京都の調査で5万件にもおよび、今年は7〜8万件になるだろうと言うことだった。今朝の新聞にもマイカル倒産の影響で関連の京都の印刷会社が倒産かという記事があったが、雇用の不安が押し寄せている。そうした中で、組織率の低下、非正規雇用が増えているといわれるが、果たして組織労働者は本気になっているのか。
 全印総連は出版労連との組織合同を相談しているが、一つ一つ共同行動を積み重ねる中で、成功させていきたい。MICの議案書にも組織議論の到達点が示されているが、MICがさらに産別合同を支援できるようお願いしたい。

寺田さん(新聞労連)
 岳南朝日新聞と奈良新聞の2つの争議について報告する。
 岳南朝日は片岡書記長が今年9月に職場復帰を勝ち取り、大きな節目となった。しかし争議解決に伴う労使協定締結などが済んでおらず、完全決着には至っていない。社側の組合敵視姿勢は相変わらずで、片岡さんが1面トップで署名記事を書いたら、社長が飛んできて輪転機を止め、署名を削除させるなどの嫌がらせもあったという。
 奈良・川筋副委員長の懲戒解雇事件は、解雇理由が販売店への「保証金」着服ということだが、直接の証拠もないまま懲罰委員会にかけ、組合の反対を無視し口頭で解雇を告げるという一方的なやり方で、解雇理由の明示もない。離職票も送付しようとせず、自分から(非を認めて)取りに来させるように仕向けるなど、陰湿なやり方をしている。
 川筋さんは奈良新聞の「偏向報道」を批判する先鋒で、狙い撃ちの解雇と言える。地裁での仮処分第1回審尋でも、会社は直接の証拠を示さず、川筋さんの人格攻撃をするなど、全面対決の姿勢を鮮明にした。関西MICを中心に支援をよろしくお願いしたい。

中島さん(広告労協事務局長)
 企業の合併や分社化が多いが、広告業界はその影響を強く受ける業界。2つの企業が1つになると、広告業者も一本化されたりして整理されてしまう。業界は柔軟ともいえるが、組織や待遇の変更をしたがる傾向があり、新人事制度や管理職形態の変更などが活発に行われている。広告労協としては規模や業態に応じた会議や大手委員長会議などを適宜開催している。地区別、代理店の委員長会議、関西地区での代表者会議なども開催して討論や情報交換を行っている。
 インターネットやBSデジタルといったデジタルメディア系のメディアが普及するか、どうなるかというような事が直接影響する業界である。第一人者を呼んでパネルディスカッションなどに取り組んでいる。

緒方さん(映演共闘)
 瀬川・佐谷労災事件とは労基法上の労働者であるかどうかを争う事件である。瀬川事件ではフリーのカメラマンに対し労基法を適用しないとする判決が1月に地裁で出された。これは瀬川氏個人の問題に留まらず実演家を含めた映画スタッフの労働者性が認められないに等しい。現在まで控訴をしつつ、証人申請を行っていた。MICとしての要請行動などを続けたところ1名の証人が高裁で認められ望みを繋ぐことができた。あとは運動によって後押しをしていきたい。
 佐谷氏は映画美術デザイナーで、日活の建具倉庫での転落事故が原因で一昨年亡くなられている。労基署の判断が3年ぶりに出されたが、正に瀬川事件の判断を待つかのように労働者性を認めないという判断が出され、こちらは行政訴訟の方針を固めている。
 これらの問題は映画現場のみならず、あらゆるフリー労働者にも関わる問題であり、労基法それ自体の形骸化にもなりかねない。今後とも是非ご支援をお願いしたい。

上西さん(明治書院労組)
 99年7月、経営悪化の整理解雇を理由に、11人が解雇された。実際は組合つぶしの解雇で、組合結成以来15年間、攻撃を受けつづけてきた。99年秋からの東京地裁が整理解雇の4要件を否認する判決が立て続けに出すもとで、仮処分申請は1人の賃金仮払いを認めるだけで、他は却下された。昨年12月には、このような判決・決定を出す裁判に対し、
「ヒューマンチエーン」行動を成功させた。この後、裁判の流れは変わってきている。
賃金仮払いを認められた組合員に対し、会社は「財形の取りくずしで生活が出来、賃金支払いの必要性はない」と「保全異議」の申し立てを行った。これを裁判が認めた。「貯金が無くなったら裁判を起しなさい」という。 
 今年も12月4日に「霞ヶ関大行動」を計画しています.ご協力をお願いします。
 明治書院の闘いを支える会に加入してください。私たちは、明日の勝利を信じて、闘っています。大きなご支援をお願いします。

高橋さん(金融経済新聞労組)
 私の解雇事件を含む不当労働行為について都労委に申し立てをしていた件については、26日に結審致しました。私の解雇問題については二度の仮処分と東京地裁、高裁でお陰様で勝利判決を頂いておりますが、現在経営側が最高裁へ上告しています。法廷闘争の方が一段落したというところです。私ども、MIC争議支援の総行動に正式に入れて頂いて大々的にやるというのは初めてのことです。法廷闘争が一息ついて経営側を安心させるようなことなく、運動の方で経営側を追いつめていきたいと思っております。
 また、解雇者は私一人ですが、社内に残っている組合員が相変わらずひどいいじめに遭っており、賃金カットを中心に日頃の仕事の取り上げみたいなことまであります。賃金カットについては、この問題を現在東京地裁に別途提訴していこうと準備を進めているところです。今後、また、皆さんの力をお借りしながら運動で追いつめていきたいと思っています。ご支援のほど宜しくお願い致します。

岡村さん(全印総連)
 909名全員解雇から1年10ヶ月、都労委の場で日販による計画的、系統的な破産への企てを明らかにさせてきました。住友銀行の不良債権処理として、経営陣と一体となり、組合排除の中で破産、新代理店の立ち上げを図ってきた事実が明白となっております。会社側の議事録を証拠として提出するなどして、都労委の場で会社側証人を答弁不能にさせることもできています。各支店への要請行動、朝ビラなどの行動も併せて、今夏、日販を和解のテーブルに着かせるまで追い込んでいます。しかし日販は使用者関係がないから解決金を支払う必要はないと主張するなど過ちを認めようとしていません。私たちはほるぷを労働者の力で再建し、子供たち、出版の文化を守っていきます。支える会は2000名にまで広がりました。こうした支援を支えにして、年内の解決を目指して都労委の場で日販のはるぷ支配を明らかにし、日販を解決に向けて追い込んでいきます。そのためにも10月5日の450名規模の決起集会を成功させていきたいと思います。これまでのご支援に感謝すると共に引き続きご支援をお願いいたします。

 

 
 
第39期 MIC役員

 

議 長
 
副議長
  〃
  〃
  〃
  〃
  〃
  〃
 
事務局長
 
事務局次長
   〃
   〃
   〃
   〃
   〃
 
幹  事
  〃
  〃
  〃
  〃
  〃
  〃
  〃
  〃
  〃
 
会計監査
  〃
 
顧  問
(名誉議長)
 
顧  問
  〃
  〃
今井 一雄
 
畑 衆
碓井 邦夫
碓氷 和哉
高橋 邦夫
高澤 正行
川本 眞理
小林 寛志
 
池田 泰博
 
大原 つくる
井戸 秀明
橘田 源二
梯 俊明
栗原  務
乙部 春彦
篠塚 芳教
 
 
澤谷 衛彰
森  直樹
新村  恭

藤井 勝敏
鈴木 稀王
吉原 英文
 
 
横山 南人
北原 桂子
 
上田  哲

 
加藤 親至
楢橋 国武
高橋 武
(出版労連)
 
(新聞労連)
(全印総連)
(民放労連)
(映演共闘)
(広告労協)
(音楽ユニオン)
(電算労)
 
(新聞労連)
 
(全印総連)
(民放労連)
(出版労連)
(映演共闘)
(広告労協)
(音楽ユニオン)
(電算労)
 
(新聞労連)
(全印総連)
(民放労連)
(出版労連)
(映演共闘)
(広告労協)
(音楽ユニオン)
(電算労)
(女性連絡会)

(電算労)
(全印総連)
 
(日放労)
 
 
(新聞労連)
(出版労連)
(全印総連)
※空白欄は、各単産の機関決定を経て選出される予定。


 

 
 
MIC総会宣言

 「戦争の世紀」と総括された20世紀が幕を閉じ、われわれは新しい世紀の扉を開いた。不安のなかにも少しの期待があった。何か変わってくれるのではないか。少しでもよい方向にと。
 しかし、21世紀最初の年も決して明るい展望は開けていない。政治や経済の混迷。加えて、2001年を象徴する出来事として歴史に記録されるであろう「米国同時多発テロ」事件が9月11日に発生した。一般乗客が乗った旅客機を乗っ取り、ニューヨークのビジネスビルなどに突入するという事件は、その悲劇的な映像とともに世界中を恐怖と不安に陥れた。罪もない市民数千人が犠牲になった現実は、単に狂信的なテロリストが起こした事件というだけでなく、民族や宗教の問題が20世紀の負の遺産として、21世紀も解決されていないことを示した。
 テロは決して許されるものではない、しかし武力による報復では解決しないことは明らかだ。テロの根底にある憎悪や怨念は人の心のなかに潜む。背景には抑圧や貧困、搾取などがある。われわれ日本人がそれらの問題にどのような関心を持ち、手を差し伸べようとしてきたのか。答えは明らかだ。グローバリゼーションなどという言葉は、まさに米国を中心とした一部の地域でしか通用しない概念であることをこの事件は見せつけた。
 米国・ブッシュ大統領はテロ事件の本質が明らかにされないままに、「戦争」と決めつけ、同盟国の支援を取り付けて戦争に突入しようとしている。「戦場での貢献」を求められた日本政府は、後方支援策として自衛隊派遣を表明した。戦後、初めて戦場で自衛隊が活動することになる。憲法九条や日米安全保障条約下で制約を受けていた自衛隊の行動規制が一気になくなろうとしている。自民党内でも疑問の声が上がるほどの問題を、小泉首相は強行しようとする。
 しかし、日本は報復攻撃を助長するのではなく、世界に誇る平和憲法を持つ国として、戦争突入を避ける役割を果たすべきだ。 
 一方、国内に目を移すと個人情報保護法や青少年社会環境対策法など、表現の自由、報道の自由を脅かす動きがさらに強まっている。国会での議論はいつスタートしてもおかしくない状況だ。報道被害や過激な性・暴力表現の問題は決して看過できない。マスコミへの批判は強く、それは不信へとつながっている。私たち日本マスコミ文化情報労組会議のメンバーはその対策に知恵を絞り、対応策を打ち出している。しかし、経営側はこの問題に真摯に取り組む姿勢を示していない。そこに行政が付け入る隙がある。報道の自由、表現の自由がない圧政の「暗黒時代」へ時計の針を戻してはいけない。
 バブル以後、この10年でさまざまな企業が放漫経営やスキャンダルで危機に陥った。その企業で労働組合は何をしていたのか。「雇用と生命、健康を守る」「従業員のやりがい、働きがいを失わせない」「仕事を通じて社会に貢献する」という基本的なスタンスを堅持し、経営の監視を怠らなかったか。もし、労働組合が正常に機能していれば雇用や企業そのものを守れたケースが少なくないはずだ。
 労働組合の弱体化が叫ばれて久しいが、世紀を超えて労働組合の存在と果たすべき役割はさらに大きくなっている。
 労働組合の可能性と役割は無限にある。とりわけMICの役割、責任は大きい。産別労働組合では限界がある平和や国内外の政治・経済問題に果敢に取り組む。結集された力は強い。さあ、ともに考え、声を上げよう。
 21世紀を平和と共存の世紀とするために。

2001年9月29日
日本マスコミ文化情報労組会議 第40回定期総会

 

 
 
労災・職業病の根絶と認定を勝ち取るための特別決議

 国際的にも知られている日本の長時間労働は、MICの職場においては、一向に改善の兆候を見せるどころか、この状態を放置したまま、裁量労働制の導入を図ろうとする経営者の強い姿勢が露わになっている。「自律的、創造的な働き方をすることによって、その能力や創造性を遺憾なく発揮する」という名ばかりの「自由」「裁量」を標榜する背景にあるのは、「とにかくテレビ局の人件費は高すぎる。固定費の圧縮は急務だ」という日本テレビ・氏家社長の言に明らかなように、時間外割増賃金の削減しか眼中にない経営者の姿勢である。
 労災認定の基準が変わりつつあり、とりわけ「過労死」「過労自殺」については、精神疾患を広く解釈するなど、基準緩和の方向にあると報道されている。事実、いくつかの事件を労災と認定する決定・判決が注目を集めている。2001年8月仙台労基署は、TV制作で過重労働により自殺した女性(98年1月当時23歳)について、仕事で精神的に追いつめられたことが原因と判断、労災と認定した。確かにこうした事例は出ているが、労働災害を救済・補償しようとする行政・経営者の姿勢が、私たち労働者の利益に傾いているわけではない。社会的に大きな注目を集めた電通・大島さんの過労自殺事件で最高裁は、裁量制や自己責任、両親の保護責任まで主張した会社に対し、使用者責任を厳しく断罪する判決を下した。ところが会社は、判決は「自由闊達に社員が仕事をする社風を逆行させるもので、会社の主張が認められず残念である」との談話を全社員向けに公表した。不見識極まりない発言と言わざるを得ない。しかし、こうした経営者の態度を後押しするのが現在の厚生労働行政の一貫した施策である。
 永井製本・金井さん過労死事件は、東京地裁(九九年八月)・高裁(2000年8月)で連続して全面勝利判決が出されたにもかかわらず、中央労基署は最高裁に上告受理申立てをした。既に1年を経過した現在も最高裁の判断は示されていない。また、共同プロセス・酒井さん過労死事件では、2000年10月に予定された労働保険審査会の公開審理で、直前になって申請していた意見陳述人の人数制限をしてきたため、審理期日が延期されたままになっている。フリー映画カメラマン・瀬川さん過労死事件では、今年1月25日、東京地裁が瀬川カメラマンを「労働基準法第九条の『労働者』と認められない」との不当判決を出したため遺族と支援する会は控訴し東京高裁で審理中である。瀬川事件と同じ「労働者性」を争点とする映画美術監督・佐谷さん事件は、労働保険審査会が今年7月、佐谷さんを「労働基準法第九条の『労働者』と認めず」との裁決を出したが、その内容は瀬川事件の東京地裁判決を下敷きにした不当裁決で行政訴訟の準備がすすめられている。
 このような厚生労働省の姿勢の中で、茨城新聞・村上さん過労死事件では、水戸地裁勝利判決後、労基署が不当控訴していたが、東京高裁で行政側に控訴を断念させる全面勝利判決が出され、労災と認定されたことは画期的な出来事であった。この認定の取り組みでは、遺族の粘り強い意志に裏打ちされた運動の成果によって、勝利判決を勝ち得たと言え、今後の労災認定の取り組みにとって大きな教訓となった。また、労災事例ではないが、新聞職場では、ローテーション勤務(変則)があるため、非ローテーション勤務の日勤職場でも年間休日数が少なく、休日増が時短の課題となる中、新潟日報労組は2001年春闘において、日勤職場の年間休日数を2001年4月より従来より10日間増やし年間126日にする成果を勝ち取ったことは注目すべき取り組みであった。
 2000年4月に施行された改定労基法では、裁量労働制の対象を「企画・立案・調査・分析」業務に拡大されたが、それには労使委員会の設置と決議、導入後の労基署への報告、さらには対象となる「労働者本人の同意や導入後の苦情処理、健康・福祉の確保措置」が義務付けられた。既に裁量労働制が導入された職場でもこの制度を大いに活用すべきことは言うまでもない。しかし留意すべきは、「裁量労働制」そのものが、産業革命以来、資本主義下の長時間労働を規制して1日8時間労働を勝ち取った人類の発展の歴史に逆行するものである(過労死弁護団・川人博弁護士談)という点である。その意味で、裁量労働制が導入された大手出版社・光文社で発生した過労死事件は、労基署・保険審査官が労災と認定しなかった決定理由に、「裁量労働制の職場なので、勤務時間を工夫できたはずだ」と挙げていることは、川人弁護士が指摘する「裁量労働制」の本質を顕著に表わしているものとして注目すべきである。
 私たちは、人間らしく生き、働く権利への侵害を断じて許さず、過労死・過労自殺事件根絶、労災保険補償制度の改善、労働行政の改革のために奮闘する。
右、決議する。

2001年9月29日
日本マスコミ文化情報労組会議 第40回定期総会

 

 
 
あらゆるメディア規制に反対し、言論・表現の自由を守る決議

 報道被害や事件に殺到しての集中豪雨的な取材、過剰な性・暴力表現に対する国民の厳しい声に乗じて、メディアに公権力による法的な規制を加えようとする攻撃が強まっている。
 「個人情報保護法案」は一昨年、与党が強引に成立させた改正住民基本台帳法をきっかけに、行政機関が保有する個人情報の保護を目的として、本来構想されたものである。しかるに先の通常国会に上程された同法案には政府、行政機関に対する具体的措置にはほとんど言及せず、民間分野への規制、とりわけ報道機関にも基本原則を適用するとして、メディアへの規制の狙いばかりがめだつ内容となっている。こうした法案が成立すれば、取材源の秘匿が脅かされ、情報提供者との信頼関係が崩壊し報道が萎縮する危険は一段と強まる。国民の知る権利に奉仕すべきメディアの役割を根底から損ねることにつながるものとなろう。秋の臨時国会での成立を断固として阻止する広範な取り組みが緊急に求められている。
 参院自民党を中心に準備されている「青少年社会環境対策基本法案」は『青少年にとっての有害環境』を規制するとして、『有害なるもの』の具体的な定義はなんら明らかにしないまま、放送番組や出版物へ総理大臣や都道府県知事が「必要な指導、助言、勧告、公表」をおこなうというものである。自民党案の言う「有害環境」を取り締まるための「青少年社会環境センター」が推し進めようとしているのは、国民への「文化浄化運動」の強制にほかならず、あたかも古代中国やナチス・ドイツの「焚書」をさえ連想させるほど前近代的な危険な発想としかいいようがない。
 政府の人権擁護推進審議会による「人権救済機関設置構想」もまた、本来国連の人権規約委員会から指摘されてきた公権力による人権侵害に言及するところきわめて薄く、もっぱら民間の「人権侵害」に行政機関が立ち入る道を開こうとするものである。とりわけメディアによる「人権侵害」を強調して、政府からの独立性のあいまいな公的機関が介入し、仲裁や勧告、公表をおこなうとしている。こうした構想が実現すれば、「過剰な取材」から「差別表現」に至るまで、任意とはいえ調査権限を持つ公的機関が表現・取材内容に深く立ち入ることとなり、報道の自由が大きく脅かされるであろうことは疑いをいれない。
 一方で私たちは、メディアによる人権侵害や報道被害、いき過ぎた性・暴力表現に対する世論の批判にはきわめて厳しいものがあることを十分に認識しなければならない。メディアによる自主努力の不足、自律の強化の必要性は私たちも機会あるごとに訴えてきたところである。私たちは「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)や新聞労連の提唱する「報道評議会」の確立、新聞各社の自主的委員会の機能をよりいっそう充実させることを求めるとともに、個々の報道機関経営者がこうした問題を、自分自身の問題としてより自律的な機能を発揮していくよう強く求める。
 しかしながら、公権力の監視を使命とするジャーナリズムにとって、公権力からの独立は絶対条件であり、公権力の規制の網がかかることはいかなるかたちであろうと決して容認することはできない。私たちは「個人情報保護法案」、「青少年社会環境対策基本法案」、「人権救済機関設置構想」のいわゆるメディア規制三点セットの法制化に断固として反対し、これを阻止する運動にメディアに関わる労働者の総力をあげて取り組んでいく決意を明らかにするものである。
 右、決議する。

2001年9月29日
日本マスコミ文化情報労組会議 第40回定期総会

 

 
 
すべての争議を勝利させるための決議

 不況が長期化し昨年の企業倒産は1万9千件、失業者は320万人を超え、いま小泉内閣のいう「不良債権の最終処理」が強行されると、新たに一〇〇万人の失業者が生まれると言われている。それにも拘らず、「リストラ」を奨励支援する自公保政権の下で、NTT、富士通、NEC、松下電器、東芝、日立などの大企業が相次いで大規模な人減らし「リストラ」計画を強行しようとしている。また、労働基準監督署などによると、一方的解雇件数が7,538件、決まった日に賃金が支払われなかった支払い不十分件数は25,693件に及んでいる。しかし、おもてに現れている数字は氷山の一角に過ぎないことは容易に推測される。
ワイドショー番組では「スーツ・ホームレス」が激増しているという報道がされ、小泉首相のいう「痛み」の中身について目が向けられつつある。
職場では賃金、一時金、労働条件の切り下げ、人員削減など新たな「合理化」が進み、雇用の危機も増大し、首切りや組合つぶしを狙った会社破産・全員解雇、リストラ解雇、子会社の切捨てや不当な賃金差別などが行われている。そして、今こうした理不尽な労働者イジメとMIC関連では一八の争議団が闘っている。
私たちはこの一年間の闘いで、「音楽ユニオン・東宝オーケストラ」「映演共闘・UIP映画」「映演共闘・照屋闘争」「出版労連・偕成社臨労闘争」の四つの争議を解決してきた。
 私たちは社会の矛盾が集中している争議支援の闘いで、大きな高揚をつくりだしている。この力をさらに大きくし、国鉄闘争をはじめ、MICに関わるすべての争議を解決させるために、引き続き全力で奮闘する。
 右、決議する。

2001年9月29日
日本マスコミ文化情報労組会議 第40回定期総会

 

 
 
9・2個人情報保護法案反対集会
常識を超えた一大イベント
 
及川道比古(出版労連副委員長)

 さる9月2日に日比谷野外音楽堂で常識を超えた集会が行われた。「個人情報保護法案をぶっ飛ばせ!2001人集会」である。午後二時から八時半までのロングラン集会で、6つのテーマごとに討論する形。テーマと発言者は以下の通り(肩書き・敬称略)。
 [1雑誌はいままで何をやってきたのか]進行・二木啓孝/世界、現代、ダ・カーポ等の編集長。[2きれいなメディア、きたないメディア]進行・元木昌彦/佐高信、鈴木邦男、日名子暁、森達也、辛淑玉、田中康夫。[3あなたはいかに狙われ、奪われるのか]進行・魚住昭/斎藤貴男、宮台真司、有田芳生、安田好弘、江川紹子、切通理作。[4笑い・記憶・権力]進行・吉岡忍/井上ひさし、澤地久枝、島田雅彦。[5表現よ、限界へ向かえ]進行・大谷昭宏/渡邊文樹、梓澤和幸、佐野眞一。[6小泉政治の何がいちばんダメなのか]進行・田原総一朗/大橋巨泉、崔洋一、森永卓郎、福島瑞穂、川田悦子。
 これだけの人が一同に会するのはこれまでにないことで、もちろん個人情報保護法案反対を揃って表明するのも初めてのことだ。田中康夫長野県知事は「右も左も、とにかくここの法案をつぶそうというので集まったんでしょ」と発言していたが、人間として発言しなければならないという気持ちで立場を超えて集まったものだ。
 この集会は個人情報保護法拒否!共同アピールの会及び日本ペンクラブのメンバーが中心となり、MIC、出版労連、新聞労連、民放労連、出版ネッツ、JCJ、メディア総研など15団体が参加団体となった。集会決定が直前であり、九月初めの日曜日で組織動員が難しいといった困難さはあったが、会場には延べ2,600人が参加した。組織に頼らない個人ネットワークの手作り集会という意味でも、「常識を超えた」イベントだった。
 大集会は無事終了したが、10月半ばには国会の内閣委員会で審議が開始されるとの情報もあり、事態は急を要している。テロ対策に名を借りて小泉内閣は自衛隊の海外派兵や武器弾薬の輸送などを決めたが、戦争などの強引な政策を進めようとする時、権力は必ずメディアを規制し、自分の主張のみを流そうとする。マスメディアとネットメディアを同時に規制しようとするこの法案をはじめとした、一連のメディア規制に反対する運動に急いで取り組みたい。

 

 
 
地方MIC活動報告長崎マスコミ文化共闘会議新聞より

 長崎マス共は10月2日付で小泉総理大臣とブッシュ米大統領にEメールで被爆地に働くマスコミ労働者としての声を届けました。

内閣総理大臣・小泉純一郎様
 9月11日にアメリカで起きた無差別テロ行為には「驚き」を隠せずにいると同時に、何の罪もない犠牲者の皆さんに心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈り致します。
 私達、長崎マスコミ文化共闘会議は、先の大戦で原始爆弾を落とされ多くの尊い命を奪われた被爆地・長崎で、毎年「平和フォーラム」などを開き、常に世界の恒久平和を考え続けている長崎のマスコミで働く者たちの集団です。
 先の大戦後、わが国では「どんな事が起きても絶対に戦争はしない」という世界に誇るべき平和憲法が制定されました。ところが、小泉首相の発言などを伺っていると、同盟国であるアメリカの報復に対しては「自衛隊の武力支援もありうる」というように聞こえてきて仕方ありません。
 テロ行為は人道的に絶対に許されるべきものではありませんが、日本が再び「暗い時代」に逆戻りしない様、今こそ小泉首相に冷静な判断と決断をお願いするものです。

2001年10月2日
長崎マスコミ文化共闘会

(訳文)ブッシュ大統領様
 9月11日にマンハッタンで起きた事件は、世界中の平和を愛する人々と同じく、私達も大きなショックを受けました。私達、長崎マスコミ文化共闘会議は、犠牲になった罪のない人々に心からの哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り致します。
 私達は、(世界で2番目の原爆被爆地であり、世界で最後の被爆地であるべき長崎で)毎年平和フォーラムを開き、世界の恒久平和実現について考えています。長崎の原爆で犠牲になった多くの人々は、普通の罪のない人々でした。そして生き残った人々の多くは、放射能の影響で、56年経った今なお、心とからだの病に苦しんでいます。
 私達はいかなるテロをも憎みます。また、テロは決して許されるものではありません。
 しかし、大統領、あなたは、アフガニスタンで多くの罪のない人々が、今すでに、貧困や飢えや寒さなどで苦しんでいるのをご存じのはずです。アメリカの軍事による報復は単にこういった人々を傷つけ、マンハッタンの犠牲者に加え、更なる犠牲者を生み出すことになるだけです。それは更なる報復を誘発するのみで、問題の解決にはなりません。
 私達は、大統領が、軍事力ではなく法の力でテロをストップするという決断をすることで、真の勇気を世界に示してほしいのです。更に、私達は長崎市民として、核兵器を決して使用しないよう強く求めます。もし核兵器が使われたなら、9月11日に私達が見た多くの犠牲者をはるかに上回る、悲劇的な状況が起るでしょう。そしてそれは、今回のテロ以上の罪となるでしょう。
 今回の恐ろしい事件の犠牲者となられた方々とその家族の皆さんに心から哀悼の意を表すると共に、このような無差別で非常識な人命の損失が繰り返されないことを祈ります。

2001年10月2日
長崎マスコミ文化共闘会議

 尚、長崎マス共はこの件につき、10月3日に長崎市役所で記者会見をし、翌日、朝日新聞と長崎新聞が取り上げました。