MIC議長 今 井 一 雄

 昨年も厳しい一年でした。そして新世紀の幕開けも、政事・経済・社会状況は悪化こそすれ、良くなる兆しは全く絶望的です。しかし私自身は絶望していません。それはいつまでもやられたい放題に、こんな状態に追い込まれていることに我慢ならないと怒っている仲間がたくさんいることを、私が知っているからです。彼/彼女たちは、この閉塞状況を打ち破る方策を真剣に考えています。
 ところで「健全な精神は、健全な肉体に宿る」と言います。マスコミ、文化、情報の仕事に携わる私たちは、健全な肉体でいるでしょうか。そうは言えません。となると、私たちの仕事の成果も不健全になる可能性があります。過不足なく安定した生活、豊かな環境下での労働、パンのみでなく文化・芸術の享受、それらが保障されない状況で、読者や視聴者に信頼され支持される言論・表現が可能でしょうか。
 私たちは足腰を鍛え直す必要があります。土台を見直し造り直す必要があります。私たちは労働者です。労働者が自らの要求を獲得するには、労働組合に依拠するのが最も現実的です。私たちの仕事で世の中を変えられると思うのは、幻想です。新年にあたり謙虚にこのことを自覚しましょう。
 地球は急激な勢いで変わりつつあります。韓国の労働者も同じです。昨年何度か見聞きした経験で言えば、日本の労働者だけが取り残されているようです。韓国言論労連の単一化(労組)への転換は、社会変革の可能性を秘めています。私たちはその経験に学び、自分の幸せは自分で掴む、自立した労働者はMICに結集して自ら幸せを掴む、そういう組織と運動の再構築の萌芽を、私は確かなものと感じています。ともにたたかいましょう。

 

 

 
 
MIC各単産
書記長、事務局長に聞く

(1) IT、デジタル化の中の2001春闘に向けて
(2)単産機能の強化と組織拡大の 展望
(3)21世紀を担うリーダーをどう育てるか
(4)(あなたの、単産の、MICの)10年後は?

 

 
 
 鋤柄 誠
(新聞労連書記長)

(1)経営内容の公開を
 近年の春闘では経営分析が労働組合としては最大のテーマであり、武器である。バブルが崩壊してからの春闘は、不況宣伝と経営側の人減らし・賃金抑制の攻撃に対し、労働側としての反撃は弱かったと言わざるを得ない。これからの春闘は経営側に経営内容をきちっと情報公開させ、従業員数、売上高、内部留保などの推移を10年程度の範囲でチェックして、労働側は確信ある闘いを構築しなければならない。

(2)うーん。これが一番難しい
 うーん。これが一番難しい。どの単産でも最重要課題で、組織の存続にかかわる問題だが、新聞労連は役選一つとっても先が見えない。組織拡大どころか、減少に対する歯止めも難しい状態。別会社の印刷工場や販売、運輸の仲間をどうやって増やしていくのか。全国の中執や地連委員長をはじめとする仲間の英知を結集して何とかするしかないが…。
やっぱり、うーん。これが一番難しい。

(3)全国各地の人材を発掘
 青婦協や青年(女性)部の自主的運動を支援することはもちろん、学習・教育活動を旺盛に行い(親組合や単産が指導する)、全国レベルでの交流を通じ、小さな闘いにとどまらず、単組を超え、単産を超える壮大な運動を展望する取り組みを作る。その取り組みの中で、全国各地の優秀な人材を発掘する。と、簡単には行かないと思う…。

(4)そば屋が夢....
 10年後は、「新聞が消えた日」のタイムリミットである。しかし、言論や表現の自由がそう簡単になくなるものではない。著作物の再販制度は3月に見直しが迫っているが、新聞や出版や音楽をはじめ、MIC各単産の産業は規模などが一定縮んだとしても、残っていると思う。私は早期退職? して安曇野あたりで、わさびやネギを自家栽培して、「週休2日、1日の営業時間4時間」でそば屋をするのが夢だが、現実は…。
 

 

 

 
 大原 つくる
  (全印総連書記長)

(1)あきらめムードの払拭
 「どうせ、ダメだよ」こんな春闘あきらめムードを払拭して、もっと怒ってもらわないと、勝負にならない。「みんなもっと怒って、行動しよう」

(2)個人加盟組織の重視
@単産機能の強化
 全印総連の組織的弱点は、@財政危機と専従者の不足、A運動の主体が地方地連にあるため優れた運動の教訓が全国的に波及されにくい、主にこの二つ。
 現在、この弱点を克服するために、徐々に財政と人手を全国本部に一局集中させ、同時に運動の主体も本部に移す組織変更の提案を討議しています。
A組織拡大の展望
イ、非正規雇用労働者を組織するために、個人加盟組織を重視すること、ロ、各地連に組織拡大の専任専従者を配置する、この二点が全印総連の組織方針の目玉です。
 情勢は、企業の枠内で要求を解決する幅をますます狭め、ナショナルセンターや産業別に結集する必要性が強まっています。方針通り実践されれば(実はこれが難しいけど)、組織拡大の展望はある。(あえて言いきるぞと)

(3)共に遊んで、学習して
 お説教したり、口で言うだけではダメですね。一緒に遊んで、一緒に勉強して、一緒に酒飲んで、背中を見せれば自然に育つでしょう。あとはポストを与えればOK。

(4)全印総連はなくなっている?
 全印総連はもうないでしょう。多分、組織統一して別の名前になるから。MICはどうだろう、単産になってるか、ひょっとすると単一組合になってたりして。わたしの10年後は52才か、どこで何をしているか分からないけど、忙しいことだけは確実かな。

 

 

 
羽原 幹男
  (民放労連書記長)

(1)21世紀に希望を託せる放送を
 2001年春闘のスローガンを「放送労働者の働き方を見直し、21世紀 に希望を託せる放送を」とした。放送の業務は地上放送に加えて、BS、CS、それぞれのデータ放送、インターネット業務など、まともな人員補充がないままますます拡大している。超過密の仕事の中で通常の市民感覚が失われるのではないかと危惧する。番組制作の要であるチームワークが壊されない職場づくりをめざす。

(2)賃金・労働条件の格差をなくす
 キイ局・準キイ局と、ローカル局や制作プロダクションとの賃金・労働条件の格差が拡大し、仕事の有り様に違いが出てきている。同じ放送に携わる 者として、一致点をどこに置いて運動をすすめるかが問われている。プロダクション・放送関連企業労働者、派遣労働者の組織化に力を注ぎ、個人加盟組合・放送スタッフユニオンを充実させる。当面の組織目標である「21世紀の初頭に15,000人の民放労連」(現在11,000人)をつくりたい。

(3)日常の仕事や活動で戦闘性を磨く
 経営者も巧妙になり、かつてのように厳しい弾圧反対闘争のなかで育つ組合活動家のイメージは沸いて来ない。自由な言論を通じて民主主義や人間性が花開く時代を、快活な言葉で切り開くリーダーが求められている。日常の活動や仕事の中で戦闘性を磨くことが必要な時代だと思う。

(4)諸国放浪の旅で絵筆を
 民放労連は、政府権力による言論・報道の自由侵害反対のたたかいでウィングを広げ、個人加盟の、一つの大産業別組合となったMICの一員となっている。デジタル化された情報網で団結はさらに強まり、MIC内の職種別グループによる賃金や労働条件の交渉が競争的に行われている。
 私はといえば、年金生活者の身。諸国放浪の旅で絵筆を走らせている、かな?

 

 
 
角田 徹
   (出版労連 書記長)

(1)経営者がその役割と責任を自覚したら...
 経営者たちがみな、自分の企業の目先の利益だけを考えていてはいけないことに気付く。社会的存在としての企業の役割と責任を自覚し、たとえ経営状況がどんなに苦しくとも、そこに働く人々に対して感謝と尊敬の念を持ち、その意見を最大限尊重し、その上で経営者としての決断を下す。それが、ひいては日本全体のためにもなり、めぐりめぐって自分のためにもなる。そう考えた。
 こうして春闘では、賃上げ、一時金、諸要求、いずれについても、すべての経営が回答指定日に昨年実績以上の回答を示し、労使はこの日をもって妥結した。こうした状況下、争議を抱える経営者も、遅れてはならじと組合の要求に沿った解決案を示し、すべての争議が解決した。

(2)教科書闘争、再販制の取組みを通じて
 春闘の成果とともに教科書闘争や再販制堅持の取り組みを通じて、対外的には産業政策課題について役割を果たし、組織内では産別全体でたたかうことの意義が確認され、もって団結が強まる。
職場でも出版労連の強さ・大きさが再認識され、いっぺんに組合加入の申し込みが殺到し、すべての単組・分会が100%の組織率となる。
 またMIC内の各単産どおしの共闘によって個人情報保護基本法、青少年環境対策基本法の成立が阻止され、これが契機となってMICは単産化への道を一気に進む。

(3)四役はすべて20代と30代とする
 すべてを次世代に任せる。中執、地協、小共闘、単組、いずれにおいても、その四役はすべて20才代と30才代とする。責任を与えられた若者たちは、清新な感性にもとづき、前例を踏襲しない新しい運動を展開する。

(4)2001年春闘が鍵を握る
 (1)〜(3)に述べたようなことが実現しているか、あるいは、労働組合などはどこにもないか、あるいは、あったとしても、社会に対しても職場に対しても何の影響力もない労働組合となっているか、さてどちらになっているかは2001年春闘次第でしょう。
 単組の枠を超え、単産の枠を超え、おおきくたたかいましょう。
(新年号ということを踏まえて、思いっきり楽天的に回答しました)

 

 

 
海老原 卓生
(映演共闘 事務局長)

(1)「日本映画振興基金」の実現を
 まだ産別では聞かないが、ネット会議、サテライト・オフィスなどの導入など着々とITが労働環境に入りつつある。しかし、ITは使うものであり使われるものではないのは今までのテクノロジーと同様であり、よりよき労働環境の為に生かすべきもの、労働組合もその点をしっかり押さえて行かなければならないでしょう。   
 新世紀第1弾の2001映演春闘は、2000年映画入場者数が前年の85%との数字を見れば例年以上の厳しい状況が予想される。要求としては合理化反対、大幅賃上げを目指す闘いのみでなく、業界全体の活性化に繋がるような取り組みを図る。例えば、日本映画に公的資金の援助を促す「日本映画振興基金」を諸団体と連携しながら早期実現を目指すなど。

(2)組織編成の原点に戻る
 濃霧で視界不良、手探りで進んでいる状況か。構成単組の弱体化は単産の弱体化に繋がっているのだから、単組を強化すればいいのである。とは言っても、妙案はそう簡単には浮かばない。年々の組合離れ、組合員の減少傾向を各単組が抱えており、拡大より歯止めを掛けるのに精一杯というところか。産別でも着々と進みつつある能力主義型賃金、成果給、裁量労働制の導入は労働者の団結を阻害する資本の攻撃であり、その時流に如何に抗えるかがポイントか。また、機能強化は組織を構成するという意義、単産は単組のために、単組は単産のために何ができるかもう1度よく討議し、お互いに補完関係を再構築する。一部専従者頼みの活動はいずれ破綻する。2001年は組織編成の原点に戻るべきである。

(3)産別・MICの運動で大きな視点を
 半人前の私が述べるのもおこがましいが、これぞと思える良い人材を見つけたら経営に騙されて真っ黒くなる前に、洗脳をはかっても労働組合に参加させ、組織のトップの人間につけ徹底的に資本の横暴、矛盾を教育する。そして、産別、MICの運動にどしどし参加させ、世間の刺激を与え、大きな視点を持たせるべく働きかける。生来のカリスマ性が欠如していても、経験により補完される部分も多分にあるはず。そして熟成を重ねた後、10年後には映演労働者、更には映演産業を救う救世主が出現する。と、言うは易しで全然リアリティがないか。
まるで「2001年私の初夢」のようだが、誰か良い人がいたら、ご紹介下さい(自薦も可)。

(4)「闘う」労働組合だけが生き残る 
 「あぁ、あれから10年たったか」と、何事もなく現状のままダラダラと時は過ぎるのであった。と、言いたいところだが、我が日活労組はこの2、3年の間に労働組合の原点である「闘う」という意識づけを行えなければ、大合理化の怒涛にもまれに揉まれ、撮影所、組合は消滅し、単なる映像商社となる。そして、会社に目を付けられ、迫害の日々を送っている私は田舎に引き篭もるか、まだ会社にいても仕事を与えられずに倉庫の机に体を縛り付けられているでしょう(今と余り変わらないか)。これは日活に限ったことではなく、「闘う」労働組合だけが生き残る、そんな時代となるのがこの10年でしょう。

 

 
 
中島 功
(広告労協 事務局長)

(1)新たなスタートの年
 2001年は、広告労協にとって新たなスタートの年になると考えています。ここ数年、広告の職場では「外資参入」「雇用不安」「新人事制度の導入」等の様々な波が押し寄せてきています。このような様々な変化を乗り切っていくには、組合自体にも変化に対応できる新しさ(提案性)のある組織への変革が必要であり、単産・単組・労働者のあり方を再構築する必要性があると感じています。

(2)単組間の情報交換が重要
 今、加盟単組の多くは困難な課題を抱えています。このような時こそ、単組間のネットワークによる情報交換が重要であると考えます。また、メディアを取り巻く環境の変化、広告業界そのものの構造の変化等への取り組み等、単組レベルではなかなか取り組みづらい課題への対応も広告労協の大きな役割であると考えています。このような取り組みを通して、広告労協の組織の裾野を広げていけるように具体的な活動に取り組んでいます。

(3)既存の概念にとらわれず
 広告業界は若い(意識をもった)人々で成り立っている業界です。労働組合が旧態然としていたのでは、次世代は離れていくばかり。既存の概念にとらわれず、また、「労働組合」という名称にこだわり過ぎず、「広告業界をよりよくするためには、どうしたらいいのか」という発想に立ち戻った活動にのみ、次世代のリーダーたる人材はついてくるのではないでしょうか。

(4)広告会社に「労組」はなくなる?
 10年後には広告会社に「労働組合」は存在しないかもしれません。しかし、「働きやすい職場にしたい」「よりよい業界にしたい」という想いをもつ者がいる限り、今、私たちが目指している組織(それが労働組合や広告労協という名称では無くなっているかも知れませんが)は、在り続けると信じています。そのための、新たなスタートが2001年であると、私は考えています。

 

 

 
乙部 春彦
(音楽家ユニオン事務局長)

 短い紙面なので不十分な記述にならざるを得ないことを前提とします。

(1)著作権ビジネスの立法化を
 このテーマは音楽ユニオン会員の業態から見て、より直接的なものである。昨今マスメディアでは、知的所有権と言う文字が日常的と言ってよい程見受けられる、この中の著作権、それに隣り合う著作隣接権が音楽家に関わり合う大事な要件となっている。社会ではこの知的所有権を背に著作権ビジネスという言葉が出て来ているが、このビジネスが認知され実行されるには立法化があり、立法化による保護により利する側と、その保護と利益を排除或いは低く押えようとする動きが一方に存在する。ここに音楽家ユニオンとしては権利主張の整備と立法化への努力と対策(闘い)が生じて来る。ITの面ではインターネットに依る送信可能化、音楽配信などに関る権利などがある。次にデジタル化の所では昨12月1日より始ったBS放送に於て、コンテンツの地上波との同時放送、再放送、再利用等の問題が既に起きており、まさに春闘の重要な課題となっている。

(2)組織改革の再点検の時期
 音楽ユニオンでは1995年に、以前より探っていた組織財政改革を行った。これは組織の機能をより強化する為、タテ型の楽器別組織(支部)からヨコ型、ネットワーク型の職域組織にしたものであった。現在この改革を総括検証することが課題となっている。組織力の面から言うと、改革前の楽器別支部(タテ型)のよさもあったように思われている。

(3)辛抱強く育てる
 音楽ユニオンに統合前から数えて約30年余りの月日の内、当時中堅層だった人が現在の幹部役員になっている。これは長いスパンで見れば当然、必然の変化であろう。ただ問題は若い人達の労働組合に対する志向のなさと、「何のメリットが」の壁を崩すことにある。
いずれにしても現在のリーダーが、組合の理念、重要さをしっかり身につけて、辛抱強く次世代を育てることが肝要であろう。

(4)さてこの項の3つの設問も短い紙面では無理なものなので、宮澤賢治を借りて……
   雨ニモマケズ 風ニモマケズ
   権力ト横暴ニモマケズ
   東ニ争議アレバ 行ッテハゲマシ
   西ニデモアレバ 集ッテ声ヲアゲ
   仲間ト交ルトキハ アタタカイ心ト
   ヤサ易シイコトバ論理デ
   酒ヲクミ交シ MICヲ語リアウ
   ソウイウ10年ヲ私ハノゾミタイ。

 

 
 
篠塚 芳教
(電算労 事務局長)

(1)技術進歩に怯むことなく
 専門性の高い電算労の組合員は、急速な進歩を遂げているIT産業の中核労働者である。
バブル崩壊以降の不況を乗り越え、あらたな仕事の需要増が期待されている中での2001春闘は賃金の暫減傾向にに歯止めをかけ、賃金引き上げの絶好の機会である。技術進歩に怯むことなく、新技術を吸収しつづけ、そこから生起する問題に正面から取り組む事が、21世紀の労働組合発展の原動力となるであろう。

(2)職業教育と就労の確保に全力を
 労働組合は労働者に何を提示できるだろうか。情報産業には様々な既存企業が子会社を作り、新たに起業する人が増えている。そこに働く多くの労働者は未組織である。企業の分裂や統合が頻繁に行なわれ、労働者は生涯一企業で働ける事など望むべくも無い。失業は労働者にとって最悪の事態である。これを避けるために、労働組合は労働者の職業教育と就労の確保に全力をあげて取り組まなければならない。それをもっと宣伝しよう。結果は後からついてくる。

(3)やってきたことをきちんと伝える
 若い世代はレールが敷かれていることを望まない。彼らのやり方で組織を活性化していきたいと考えている。私たちが次世代に残すものは、私たちがやってきた事の意義や展望、そして経過や背景をきちんと伝えることである。また、自分たちが苦労した事、失敗した事を伝えて行く事である。組織運営や組織拡大をどうやるかは彼らのやり方に委ねるしかない。

(4)日々の積み重ねが10年後に
 10年はあっという間である。日々の積み重ねが10年後の組織のあり様を変えて行く。
企業内に所属する労働者も生涯を保障された切符を手にしたわけではない。将来の安心は自ら職業能力を高める事と人間的なつながりをいかに持つかである。労働組合に結集する事で安心が得られた。加入して良かった。そんな組合員の声を想像しながら全国に仲間が点在している状態を想い描いている。

 

 

 
韓国言論労組来日

 去る11月24日に産別単一組織を発足させたばかりの韓国言論労組の本部役員一行が、12月7日に結成のあいさつと親善のためMIC事務局を訪問した。訪問したのは、金溶泰(キム・ホンテ)副委員長、金容白(キム・ヨンベク)事務処長(書記長)、李英植(イ・ヨンシク)中執の三名。日本側はMICの今井議長と高橋・井戸事務局次長、民放労連羽原書記長、全印総連澤谷副委員長が応対した。
 一行はまず結成時に寄せられたMICや各単産からのお祝いに対し謝意を表明したあと、言論労組結成にいたる経緯や今後の展望について、金溶白事務処長が改めて説明した。金事務処長は既に五年近く前から産別単組への転換が議論されてきたこと、IMF危機を通じて今や韓国労働運動では産別単組転換が時代の流れとなりつつあり、個々の組合員にはもはや大きな違和感がなくなっていることなど、結成の背景を説明した。
 その後双方で質疑応答や意見交換。韓国側はMICの業態を超えた幅広い結集を参考にしてきたことを強調、日本側からは今後日本でも個人加盟方式への転換は大きなテーマであり、ぜひ韓国で成功させて教訓にさせてほしいと激励した。
 また日韓共催のイベント開催を視野にいれながら、今後も交流を強化していくことをたがいに確認した。

(民放労連 井戸 秀明)

 

 
 
関西MICが「歌う望年会」

 12月15日に、関西MIC恒例の「歌う望年会」が行われ参加しました。今年一年を振り返り、来年に望みを託す趣旨は普通のものですが、この望年会は「生音楽に親しむ」ことも同等の目的を持っています。
 音楽ユニオンの仲間による生演奏をバックに、関西MICを構成する7単産の選りすぐりの歌い手が、喉を(喉ばかりでもないようですが)競います。今年は何と第10回という記念の年になるということで、グランドチャンピオン大会となりました。
 第一部で通常の大会、その優勝者が加わり10年間のトップを決めるという二部構成でした。この日、第一部の優勝者小和田吉彦さん(関西共同印刷労組)が、ダブル受賞ということでグランドチャンピオンに輝きました。審査委員長によると、回を重ねるごとに確実に水準が上がってきているとのこと(私にはよくわかりませんでしたが)。100人以上の参加があり、楽しい一夜でした。来年の関西MICの活躍に期待します。

(MIC議長 今井一雄)

 

 
 
再販制堅持、メディア規制法など課題山積
「MIC2001春闘討論集会」開催

 MIC主催の2001春闘討論集会が12月16日(土)、出版労連会議室でが開かれた。第1部では、MIC各単産の年末闘争の報告と2001春闘における基本構想などの報告を聞いた。
 第2部は、上智大学の田島泰彦さんが「メディアへの法規制の背景と問題点」と題して講演。
 個人情報保護法大綱や青少年社会環境対策基本法案、東京都の青少年条例など二法一条例をめぐるメディア規制の動きに警鐘を鳴らすとともに、「メディアが国家のコントロール下に入る危険性に対し、ジャーナリズムはもっと声をあげるべきだ」と強調した。討論集会にはMIC各単産から約30人が参加した。以下、各単産の報告概要。

(田島講演の要約は12頁に掲載)

【新聞労連】
 年末闘争はやっと数年ぶりに増勢基調に転じた、と言える状況になった。8〜9割の組合が対前年比を上回って、諸要求もいくつかの組合が前進を勝ち取ったが、「儲かってもださない」の経営姿勢がハッキリした厳しい闘いだった。
 春闘の課題:@人減らし、人件費抑制、経費節減などの動きに、組合としての監視を強化して、経営ビジョンを明らかにさせる。A再販、特殊指定を守り抜くと言うことで、あらゆる運動を展開する。B販売正常化に向けての努力をしよう、ということで、販売店や読者と連携する道を探る。C報道被害を救済するために何が出来るか、自らの問題として考え、「報道評議会」設置に向けた運動を強化する。ここ数年2.8〜2.9万の要求基準できたが、来春闘では実績勘案型で行く論議をしている。2万円という新聞としてはかなり低い要求に転じて、総原資−人や時短など−アップのたたかいをめざす。

【全印総連】
 年末闘争の最終分析はこれからだが、低いところでの「下げ止まり」といったところ。
 最高時全国で46,000社あった印刷会社は毎年700社減って、2010年の予測では31,000社になると言われている。印刷最大手の凸版では、年間一時金が20万円もダウンし、民事再生法を申請した会社も出ている。春闘の柱は@賃上げと産業における価格破壊を改善させるための公正な競争の条件をつくる最低規制の強化。A間連業界や地域の仲間との共同行動の強化−そのためにはわれわれの主体的力量の強化が中心で、調査・学習・政策・宣伝・組織強化が必要となる。B経営状況も大変だから、組合のチェック機能の強化が欠かせない。具体的には、25才−450万、40才−680万の年収獲得を依然として掲げ、誰でも2万プラス平均1・5万=3・5万の要求。前年に引き続き企業内最低賃金の確立を2段階回答方式で追求していく。出版との合同討論集会、合同決起集会も予定している。

【民放労連】
 年末闘争の背景として、キー局の史上最高の売り上げがある。2年連続の賃下げからやっと年収ベースで0・5%アップ(キー局)、0・3%アップ(プロダクション関連)獲得。
 キー、準キーの30才労働者が年収1千万を越える一方で、年収200〜300万という労働者がおり、ひどい格差が混在している状況だ。裁量労働でも日テレでは、投票の結果導入が決まり、他の局でも論議中のところも有る。労連としては、命と健康、過労死との関係で議論をしていくつもり。12月からデジタル放送が始まったが、セットの機械も、チューナーも高く、番組は増えても人手が足りず、前途多難が予想される。
 賃金要求では、来春闘も一律要求− 2万円以上を基本にする。半年収で10ヶ月分(6ヶ月+一時金4ヶ月)、 最賃では、年額300万、日給1万円をかかげる。スケジュールは、1月末臨時大会、3月1日要求提出、3月14日回答指定日。

【出版労連】
 10月20日に一斉提出した一時金闘争もほぼ収束したが、結果は前年を若干上回ることが予想される。昨年から要求をはじめた介護保険の負担率(7:3)割合も一歩前進した。企業内最賃の協定化の取組みも、東京都の最低賃金などにも影響することから、「協定化」を重視ということでとりくんだ。総じてたたかい取ったというよりも、経営側の都合でだされた年末闘争だった、といえるのではないか。このほか年末時に限らないが、6つもある争議支援のたたかい、新たに光文社を相手にした過労死裁判・労災認定闘争も始まった。来春闘は、去る12月8,9日に第一回目の討論集会を行ったが、一口で言うと「より大きく、より強く」で、意識的に共闘強化の方針を提起した。産別課題としては、教科書問題、再販維持、メディア規制ー青少年条例の改悪ーなどにとりくむ。これらはぜひMIC規模でがんばっていきたい。賃金では、35才ー2万を軸に年功賃金体系の問題を全体で議論をしていく。

【映演共闘】
 年末闘争は、統計の取り方の問題もあって昨年より7〜8万円高いが、実際は昨年とちょぼちょぼ、「下げ止まった」位のところである。映画演劇業界の状況が厳しいので、争議解決を中心にした秋年末闘争であった。映演共闘という組織の制約もあって、春闘の統一的方針などなかなか出来ないが、産業的危機は深まっておりそれに伴うドラスティックな大きなリストラ、企業破壊が起こるとの危機感を持っている。映画館やスクリーンの数は増えても、映画人口は2年前の1億5千万人から今年は1億2300万人(推定)に減るといわれている。日本映画の危機が生まれ、これに伴って大きな問題が次々と生まれる可能性もあり、産業基盤を支える公的助成を求める「日本映画振興基金」をこの夏につくったが、この実現に向けての運動が来春闘の大きな柱となる。「バトル・ロワイヤル」が封切られたが、公的規制の攻勢が強まっており、「プライド」に続き来年には「ムルデカ」の公開予定もあり、映画労働者の姿勢も問われている。春闘の日程は2月初旬から始まる。

【広告労協】
 ここ数年低迷していた広告の売り上げも、今年の3月くらいから関東キー局のTVスポットで120%(前年比)あげるなど回復状況にあり、中規模の代理店では2桁の伸びを示している。年末一時金はまだ中間取りまとめの段階で平均は出ていないが、関東・中堅規模で105〜110%(前年比)アップのところが多いかな、という感じである。こうしたなかでも問題はあって、大手でいうと売り上げは伸びても給与の伸びが足りない。その裏には売り上げが伸びても利益率が伸び悩んでいることがあるようだ。また、関東でも中規模以下のところでは売り上げの伸び悩んで、一時金も前年割れが続いている。地域格差も依然としてある。昨年、一昨年は大阪市況が冷え込んでいて、大阪に拠点を持つ広告代理店では、一時金が前年の半分以下というところがでた。そこは脱したとは言え、依然関東と比べると地域格差が残っている状態だ。 春闘は例年通り、本格的討議は2月初めから開始される。幹事会では上記の格差がある以上、統一要求より、初任給を揃えるということを来年も続けたい、といった議論がされている段階。

【音楽ユニオン】
 ユニオンの年末闘争はオーケストラのみだが、まだ回答が全部でそろっていない段階。
 新聞報道でご覧になったかも知れぬが、東京交響楽団の3割カット、神奈川フイルのゼロ回答など、厳しい状況が続いている。2001年春闘については全国評議委員会で議論をしている。産業状況の分析では、デジタル化やインターネットの音楽配信などの問題があり、厳しく見ている。レコード業界では1年に7社も整理統合される状況で、宇多田ヒカルや吉田兄弟(邦楽)などの例外はあっても、全体の売り上げは21社で8000億円と減っている。オーケストラの業界でも、東フイルと新星日響の合併のように、予算が削減される中で生き残りをかけたいろいろなことが起こりうる。春闘の具体的な要求としては、NHKに12月19日、民放キー局、レコード協会には来年だが、いずれも2・5%くらいの要求を提出する予定。再販維持の闘いもあり、MICとの共闘も強めたい。

【電算労】
 年末闘争はほぼ収束の状況で、昨年と比べて下がっている。年末だけでなく、春闘でもここ数年暫減傾向が続いている。2001春闘ではこの延長で特に目立った傾向はないが、どういう取組みをするか、これからの組織内の議論にかかっている。ここでは裁量労働制の問題について発言したい。電算労のなかでも裁量労働制を導入したいという動きがある。一方で、派遣労働者が増えている問題がある。派遣労働者というくくりではあるが実態は個人事業主として扱われているケースが多い。このように正規労働者には裁量労働制、派遣労働者には個人事業主=裁量労働者という動きがある。この流れは労働者性の否定の動きだと思う。先日、瀬川労災の報告集会に出て感じたのだが、「私は労働者ですよ」ということがどんどん突き崩されている。この状態を労働組合がどう守っていくのか、個人事業主とはいっても、労働者に違いない訳で、このことをもっと主張しないと自らの戦線を狭めることになるというを春闘の中で考えて行きたいと思っている。            

(文責 事務局)

 

 
 
UIP映画リストラ問題解決!

 MGM映画とFOX映画の提携契約に端を発したUIP北海道・九州両支社閉鎖問題は、今年4月から事前協議を開始して、10回の団交を重ねた結果、12月11日協定書を締結することができました。その内容は、
 (1)本年12月末日で両支社を閉鎖
 (2)札幌支社2名の組合員の東京本社配転
 (3)九州支社3名、東京本社2名、計5名の組合員の希望退職と特別退職金の支払い
 (4)組合への解決金の支払い
などです。私たち全洋労として支社閉鎖問題を事前協議で解決するのは2度目ですが、札幌から東京への配置転換という困難はありますが、札幌支社2名の組合員の雇用を確保できたことは、初めてのケースであり、大きな成果であると考えています。事前協議が始まる前月、3月には映演共闘、MIC、中央区労協、代々木総合法律事務所、で構成された「UIPリストラ反対闘争対策会議」を発足して以来、関係者の皆様にはご指導、激励、ご支援をいただき、この10月には東京、札幌、福岡での決起集会を成功させるなど、一定の運動をスタートさせた時点での解決となりました。
 ありがとうございました

2000年12月15日
全日本洋画労働組合
全洋労UIP映画支部

 

 
 
メディアが国家のコントロール下に
「ジャーナリストは声を上げるべき」

 田島上智大学教授は「今の状況はメディアをめぐる基本的組みを変えるもので、かなり深刻だ」としたうえで、現況の特徴として、
@市民的・普遍的価値である人権をかざした規制 であること
A世論に支えられた権力の介入であること
Bチェックが機能不全となっていること――の三点を指摘。「ところがメディアの現場にいる人たちの危機意識が薄い。法機関があるのに新たに行政機関をつくることの危険性に気づかない」と苦言を呈した。
 個人情報保護法について田島さんは「法律ができると、メディアに対し個人情報のファイルをつくれとの行政指導が必ず行われる。新聞も再販制度を人質にとられて拒否しにくい」とし、青少年社会環境対策基本法案の問題点としては「何が有害かを『官』が一方的に判断して勧告し、従わなければ氏名公表など行政措置を行える。官が表現の自由に立ち入ることは危険極まりない。このシステムができれば青少年だけではなく他の領域においても表現内容に立ち入ることができてしまう」と述べた。
 また、日弁連や法務省の提唱する人権救済機関については「公権力の人権侵害を軽視し、『民』とくにメディアによる人権侵害へのウエートが高い。何より人権を侵害してはいけないとされているのは国家権力だが、民間の人権侵害を国家が取り締まる機関となっている」と問題点を指摘した。一連の動きの帰結として「活字を含めたメディアが国家のコントロール下に入ることになる。放送が郵政省の監督下にあるように、人権機関が法務省に、個人情報が総務省あるいは内閣府に、青少年保護が内閣府あるいは総務省にと、それぞれ国家の監督規制に服することになる。活字メディアを含めて法務省の監督下に入るのは憲法二 十一条をもって以降初めてのことだ」と述べた。
 メディア側の課題としては「反対しないよりいいが、ただ反対しているだけではだめ。対案を提示し実践すべき。メディア側は評論家でも弁護士でもないのだから、ジャーナリズムの重要な報道対象として取材し発表し、多くの市民に議論の素材を提供することが大切。当事者としての問題でもあるが、民主社会を支えている重要問題であるとの意識が必要」と述べ、さらに具体的な取り組みとして「MIC、メディア総研とばらばらでやるより、全体の問題として声を上げるべき。大きな取り組みを志向してほしい」と結んだ。

(新聞労連 片岡 伸行)