労災・職業病の根絶と認定を勝ち取るための特別決議

 日本の長時間労働は国際的にも知られているが、年間総労働時間は労働省の発表によると1,983時間(うち所定外179時間)となっており、総務庁が労働者個人から聞き取った労働力調査によると2,246時間である。その上不払い残業が横行しているが、こうした長時間・過密労働は過労死や過労自殺など重大な事態を生み出している。
 MICの中でも、労災(過労死)事件が発生し、認定を勝ち取っているが、その多くは解決をしていない。時事通信・堺さんは「日常業務に比べて、質、量ともに加重だった」として過労死の認定をされた。また、テレビ新潟・小林さんも労災申請からわずか4ヵ月で業務上死亡の認定を勝ち取り、会社は賠償金の支払いのほか、謝罪と再発防止を約束した。また、大きな社会問題となった電通・大島さんが過労からうつ病となり自殺した事件も、裁量性や自己責任、両親の保護責任まで主張していた会社に対して、最高裁は「使用者は業務の遂行に伴う疲労や心理的負担『過度に蓄積して、労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負え」と明確に判断を下した。
 永井製本・金井さんの事件は東京地裁で全面勝利判決、中央労働基準監督署が控訴した東京高裁での控訴審も8月9日に全面勝訴した。しかし、連続して労働行政の違法な処分が断罪されたにもかかわらず、その労働省が8月3日に最高裁に上告した。こうした態度は、判決に憲法解釈の誤りや法律違反などが明らかな場合に限るとした民事訴訟法394条(上告理由)を無視したもので、救済されるべき被害者・国民を相手どって国が控訴・上告することは、市民感情から見ても異常である。そして、中央労働基準監督署の業務外決定にはじまる労働省の一連の行為は、過労死労災を基本的に認めない、裁判での判決も認めないものとするもので厳しく糾弾しなければならない。
 茨城新聞・村上さんの事件は水戸地裁で勝利したが、労働基準監督署が不当にも控訴し、東京高裁で来年1月23日に判決が出される。時事通信・森田さんの事件の労災認定の支援も強めなければならない。共同プロセス・酒井さんの過労死事件は東京都労働基準局が審査請求を棄却し、労働保険審査会に再審査を請求し、10月26日に公開審理が始まる。
 フリーカメラマン・瀬川さんの過労死事件は、労働保険審査会が再審請求を棄却したため東京地裁での行政訴訟となっているが、「業務起因性」に加えて「労働者性」が争点となっているが、新宿労働基準監督署が「労働基準法第9条の『労働者』とは認められない」としたため裁判所は「労働者性」について「中間判決」を来年1月25日に出すことを決定した。また映画美術監督・佐谷さんも「労働者性」が争点であり、公開審理は終了したが採決がでないまま死去し、労働保険審査会請求は夫人が請求者となり継続しているが、2年以上経過しても採決を出さず「瀬川裁判の中間判決待ち」との疑問が広がっている。
 このように過労死、労災事件が多発しているにもかかわらず、財界の意向によって労働基準法が相次いで改悪されてきた。変形労働時間制、裁量労働制など8時間労働制の弾力化がすすめられ、「女子保護」規定が撤廃され、女性労働者の時間外・休日労働の規制がなくなり、深夜・交替制労働が導入された。
 私たちは、人間らしく生き働く権利への侵害を断じて許さず、過労死労災事件根絶、労災保険制度の改善、労働行政の改革のために奮闘する。
 以上、決議する。

2000年9月30日
               日本マスコミ文化情報労組会議 第39回定期総会