MIC総会宣言

 「戦争の世紀」と総括された21世紀が幕を閉じ、われわれは新しい世紀の扉を開いた。不安のなかにも少しの期待があった。何か変わってくれるのではないか。少しでもよい方向にと。
 しかし、21世紀最初の年も決して明るい展望は開けていない。政治や経済の混迷。加えて、2001年を象徴する出来事として歴史に記録されるであろう「米国同時多発テロ」事件が9月11日に発生した。一般乗客が乗った旅客機を乗っ取り、ニューヨークのビジネスビルなどに突入するという事件は、その悲劇的な映像とともに世界中を恐怖と不安に陥れた。罪もない市民数千人が犠牲になった現実は、単に狂信的なテロリストが起こした事件というだけでなく、民族や宗教の問題が20世紀の負の遺産として、21世紀も解決されていないことを示した。
 テロは決して許されるものではない、しかし武力による報復では解決しないことは明らかだ。テロの根底にある憎悪や怨念は人の心のなかに潜む。背景には抑圧や貧困、搾取などがある。われわれ日本人がそれらの問題にどのような関心を持ち、手を差し伸べようとしてきたのか。答えは明らかだ。グローバリゼーションなどという言葉は、まさに米国を中心とした一部の地域でしか通用しない概念であることをこの事件は見せつけた。
 米国・ブッシュ大統領はテロ事件の本質が明らかにされないままに、「戦争」と決めつけ、同盟国の支援を取り付けて戦争に突入しようとしている。「戦場での貢献」を求められた日本政府は、後方支援策として自衛隊派遣を表明した。戦後、初めて戦場で自衛隊が活動することになる。憲法九条や日米安全保障条約下で制約を受けていた自衛隊の行動規制が一気になくなろうとしている。自民党内でも疑問の声が上がるほどの問題を、小泉首相は強行しようとする。
 しかし、日本は報復攻撃を助長するのではなく、世界に誇る平和憲法を持つ国として、戦争突入を避ける役割を果たすべきだ。 

 一方、国内に目を移すと個人情報保護法や青少年社会環境対策法など、表現の自由、報道の自由を脅かす動きがさらに強まっている。国会での議論はいつスタートしてもおかしくない状況だ。報道被害や過激な性・暴力表現の問題は決して看過できない。マスコミへの批判は強く、それは不信へとつながっている。私たち日本マスコミ文化情報労組会議のメンバーはその対策に知恵を絞り、対応策を打ち出している。しかし、経営側はこの問題に真摯に取り組む姿勢を示していない。そこに行政が付け入る隙がある。報道の自由、表現の自由がない圧政の「暗黒時代」へ時計の針を戻してはいけない。
 バブル以後、この10年でさまざまな企業が放漫経営やスキャンダルで危機に陥った。その企業で労働組合は何をしていたのか。「雇用と生命、健康を守る」「従業員のやりがい、働きがいを失わせない」「仕事を通じて社会に貢献する」という基本的なスタンスを堅持し、経営の監視を怠らなかったか。もし、労働組合が正常に機能していれば雇用や企業そのものを守れたケースが少なくないはずだ。
 労働組合の弱体化が叫ばれて久しいが、世紀を超えて労働組合の存在と果たすべき役割はさらに大きくなっている。

 労働組合の可能性と役割は無限にある。とりわけMICの役割、責任は大きい。産別労働組合では限界がある平和や国内外の政治・経済問題に果敢に取り組む。結集された力は強い。さあ、ともに考え、声を上げよう。
 21世紀を平和と共存の世紀とするために。

2001年9月29日
日本マスコミ文化情報労組会議 第40回定期総会