MIC総会宣言

 昨年9月11日、富の偏在を固定化し現在の世界システムを維持しようとするアメリカに対して、同時多発テロという凶悪なかたちで矛盾の鬱積が暴発した。
 経済のグローバル化は、世界をルールなき市場主義に組み込み、「自由」の名のもとに貧富の差が拡大している。科学技術の長足の進歩にもかかわらず、依然として世界の飢餓人口は八億人以上にものぼる。絶望は非人間的に牙をむく。生きてゆく糧を失った人々が捨て身の行動に走ることは、武力衝突のつづくパレスチナや、治安が悪化し警察国家化するアメリカなどで、すでに見てきている。しかし、それを力でねじ伏せても、怒りや恨みが増幅するだけである。
 アメリカは、イラクに対する攻撃を念頭に、核兵器を含む先制攻撃の可能性を強調している。こうした米国の姿勢にはドイツが不参加を言明するなど世界でも反対世論が高まっている。テロ対策を名目にした米軍のアフガニスタン攻撃を支援した自衛隊が、同じ名目で米軍がイラク攻撃を開始した場合、支援を拒否することは不可能であり、日本が参戦させられる可能性は極めて高い。国連決議もない米軍の一方的軍事行動に日本が参加すれば、激しい国際批判を浴び、米国とともに孤立化するのは必至である。
 9月17日、日朝首脳会談がおこなわれ、日本と北朝鮮の国交正常化の第一歩を踏みだした。この会談の中で、日本人拉致の事実が明るみになった。このことは、他国の人民に対する人権蹂躙である。その責任を追及し、真相を全面的に明らかにさせなければならない。今後、国際的な無法行為が清算できるかがカギとなり、軍事に頼らない真の平和が求められている。
 空虚な「構造改革」を絶叫しつづける小泉内閣は、自民党の大企業優遇路線をエスカレートさせ、弱肉強食の政策をふりかざしている。国民が政府に最も期待するのは、景気回復や雇用拡大であるにもかかわらず、「ある程度の痛みはやむをえない」と企業倒産や350万人もの失業者から目をそむける。また、労働法制改悪で不安定雇用を増加させ、労働者を低賃金・無権利状態へ押しこめる。軽くなった労働者の財布にさらに手をこじ入れ、医療保険の負担を国民に押しつけ、雇用保険の改悪や逆進的な税制改革を目論んでいる。
 こうした流れを、私たちは働く現場から変えていこうと、さまざまな課題に取り組んできた。好況期にも満足な賃上げがなく抑えられたまま現在に至り、今度はデフレという理由でさらに賃上げ額が抑制され、一時金が切り下げられている。しかし、景気動向や企業の経営状況にかかわらず、私たちには守るべき生活がある。そのことを、この消費不況の中だからこそ、声を大にして主張していかなければならない。
 この秋の臨時国会では、有事法制やメディア規制など、憲法第九条を蹂躙し戦争のできる国づくりを進める策動、また基本的人権や個人の自由を略奪する動きがなされようとしている。
 これらに抗して、誰もが人間らしく生きられる社会へと向かう舵取りを、私たちの闘いによって実現していかなければならない。
 右、宣言する。

2002年10月5日
日本マスコミ文化情報労組会議
 第41回定期総会