MIC第42回定期総会宣言

 文明の豊かな起源、チグリス・ユーフラテス。世界の発展に大きく貢献したその大河は、今もよどみなく洋々と流れているのだろうか。
 2003年3月20日、圧政と大量破壊兵器から「イラク国民を解放する」として、ブッシュ米政権はフランス、ドイツ、ロシア、中国をはじめ、世界各国の反対を一顧だにせず、国連憲章、国際法を踏みにじってイギリスと共にイラクへの侵略、攻撃を開始した。
 まさに現代文明への挑戦とでもいえるものであった。世界の憲兵たらんとしてイラクを「悪の枢軸」と一方的に決めつけ、核攻撃も辞さないという脅迫的言辞も交えながらの「先制攻撃」そのものであった。国際秩序を破壊するこの暴挙に対し、世界の人々は人類文明の危機を感じ取り、怒りとともに猛烈な抗議の意思を示し、世界史上にかつてないほどの戦争反対の広汎な国際世論を巻き起こした。
 日米同盟を至上命題とする小泉政権は、国内の圧倒的な反対世論を無視し、いち早く米英の戦争を支持した。イラクでは今、米英軍による占領政策の下で新たな「復興」が試みられているが、様相は一層深刻化し、泥沼化の一途を辿っている。ブッシュ大統領が五月初めに戦闘終結を宣言して以降、米軍兵士の死者は100人に達しようとしている。米英軍の早期撤退、一日も早い国連の全面関与とイラク国民による「自決権」の確立が望まれている。
このような情勢の中、日本政府はアメリカの強い要求に応える形でイラクに調査団を派遣した。十月に来日するブッシュ大統領への手土産として、十億ドルにのぼる資金拠出も検討、年内にも自衛隊を現地に派遣することを決定した。自衛隊派兵はイラクの「復興」に寄与するどころか、日本がこれまで築き上げてきた中東諸国との信頼関係をも壊しかねない。平和憲法の理念をないがしろにした動きは絶対に食い止めなければならない。有事法制、イラク特措法に反対する運動を、立場の違いを越えて今こそ大きく巻き起こそう。

 核兵器廃絶が国際的な焦眉の課題になっている時、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は核兵器保有を「宣言」し、金正日体制の安全を国際社会に要求した。しかし、そうした北朝鮮の戦略が世界から受け容れられないことは明らかであり、ますます孤立化への道を突き進んでいる。この間、中国の仲介でアメリカとの3カ国協議や、アメリカ、韓国、ロシア、北朝鮮、日本による6カ国協議が行われた。全ての参加国が対話継続で一致している中で、北東アジアと世界の平和のために対話による協議が成功することに世界から大きな期待が寄せられている。
 自民党総裁に再選された小泉首相は、9月22日に第二次内閣を組閣、歴代自民党政権が果たせなかった憲法「改正」の政治日程について、2005年中に「自民党試案」を取りまとめることを表明した。最大の狙いが「九条の改定」にあることは間違いない。
 戦後58年間、いかなる戦争にも足を踏み入れさせなかった国の基本法としての憲法。「平和の中でこそ、あらゆる文化、メディアは発展する」という憲法の理念を、いまこそ実現させることが求められている。と同時に、「教育は文化の継承」との立場から教育基本法の「改悪」の動きに注視し、批判の声を挙げていかなければならない。
 戦後最悪の失政といわれる小泉内閣の「構造改革」の下で、国民生活はますます窮地に落とし込められようとしている。最近の政府の調査でも、「生活に不安を持つ人」が60数パーセントの多数に達している。来年4月の年金制度の見直しで、保険料の大幅アップ、給付額の切り下げなど、国民に新たな負担増を強いる「大改悪」が計画されようとしている。さらに、その財源として消費税率の10〜15%への引き上げも政府・財界から盛んに喧伝されている。
 この12月を期して地上波デジタル放送が東京、名古屋、大阪で開始する。政府・総務省が半ば強引におし進めているデジタル化の動きは、視聴者・国民に受信機の購入など新たな負担を押し付けるものであり、国民的な課題として問題を提起し、見直しを求める運動を強化しなければならない。
さらに、若年層の雇用は失業率の「悪化」と合わせて、フリーターと呼ばれる青年層が400万人を超すというような深刻な状況にあり、日本の健全な発展に大きな影を落としている。青年層に「雇用の場を」の声に連帯していくことは、きわめて重要な課題となっている。

 メディアは今、市民から大きく注目されている。真に信頼されるメディアへ発展させるために、働く現場から様々な課題に取り組んでいこう。秋から年末、そして04春闘を展望し、賃下げ、定昇カット、成果主義賃金の導入に全面的に対峙していこう。いまこそMICの出番だ。
右、宣言する。

2003年9月27日
日本マスコミ文化情報労組会議
第42回定期総会