イラクから自衛隊を直ちに中止・撤退させ、
有事法制の発動を許さず、
  憲法と教育基本法の改悪を阻止する決議

 イラクで大量破壊兵器を捜索していた米中央情報局(CIA)主導の調査団は6日、昨年3月のイラク戦争開戦時に、同国にはいかなる大量破壊兵器も存在しなかったと結論づける最終的な報告書を議会に提出した。アナン国連事務総長から「国連憲章違反」と指弾されたイラク戦争の正当性はさらに厳しく問われざるをえない。
 イラクでの占領を終らせ、イラク国民が主権を回復する道筋を示した国連安全保障理事会の新決議が、6月に採択されたが、国連の主導的役割が示されたものの、米軍主導の占領軍を多国籍軍と名を変えた駐留を認めるなど、イラク国民にとって重大な問題をはらんでいるものである。1月のイラク選挙支援を求める国際的圧力が強まっているが、国連職員組合は6日、イラクに職員を派遣するには危険過ぎるとの見解を示している。イラクにおける真の主権回復は、占領軍、多国籍軍の撤退が必要なことは自明である。
 小泉内閣は、参議院選挙の直前、多くの反対の声を押し切って、イラク多国籍軍への自衛隊参加を表明した。そもそも自衛隊がイラクに派兵されたとき、わたしたちは「戦闘地域」に派兵されたこと自体が第二次大戦後初めてのことであり、直ちに撤退することを主張してきた。さらに多国籍軍への参加は、歴代の政府見解でも憲法違反とされてきたものである。
 わたしたちは自衛隊がイラクから直ちに撤退することを日本政府に要求する。

 自民・公明、民主の与野党は、6月に有事関連法案を強行成立させた。有事関連法案は、私たちがこれまで指摘してきたように、アメリカの戦争に自衛隊や国民を動員する有事体制を完成させるもので、「戦争をする国」づくりに他ならない。自衛隊の参戦・協力をすすめ、国民には刑事罰をともなう戦争協力を強制し、第二次世界大戦中の治安維持法下のように、言論・出版、表現の自由を抹殺する悪法である。
 わたしたちは、憲法を真っ向から踏みにじる、「戦争する国」づくりの有事関連法の発動を許さないためのたたかいを継続する。

 小泉首相は、2005年11月をめどに自民党としての憲法改悪案をまとめるよう指示し、自民党憲法調査会に設置されているプロジェクトチームは、自衛隊を「自衛軍」として集団的自衛権の行使を可能とする改憲要綱案を発表している。さらに人権条項も改悪の対象となっている。また、与党の公明党も改憲論議をすすめることを公表し、野党第一党の民主党も、改憲案づくりをめざす姿勢を明らかにしている。改憲の手続きを定める国民投票法案の国会への提出も計画されている。
 小泉首相は国連総会で安全保障理事会常任理事国入りを表明したが、「現行憲法の枠内で」との直接的な表現は盛り込まれなかったのが特徴である。首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」は今月4日、報告書をまとめ、首相に提出したが、自衛隊の海外派兵を主要な任務(本来任務)にすることを提言し、憲法のもとで武器輸出を禁じた武器輸出3原則について「少なくとも米国との間で、武器禁輸を緩和するべきだ」と明記した。
わたしたちは憲法九条をはじめとする憲法改悪に反対するとともに、憲法に違反して進行する実質改憲をゆるさないたたかいを継続する。

 小泉第2次改造内閣は教育基本法改悪の布陣ともいわれる顔ぶれが特徴である。自民、公明両党の「与党教育基本法改正に関する検討会」は、6月にまとめた中間報告のうち、意見が異なる「愛国心」や「宗教教育」などを除く合意部分について、文部科学省が具体的な法案作成作業に入ることを了承した(9月15日)。
 教育基本法は戦前・戦中の教育に対する深い反省のもとに、教育において憲法の理念の実現をめざすために制定されたものである。「愛国心」を強要し、「戦争ができる国づくり」をめざした教育基本法の改悪は、憲法改悪の前段として位置づけられている。すでに、教育現場では日の丸・君が代の強制がいっそう強められ、侵略戦争賛美の教科書の採択も引き続き画策されている。
わたしたちは、改憲とセットで進められようとしている教育基本法の改悪を許すわけにはいかない。

 わたしたちは、反戦平和と正義を求め、憲法・教育基本法改悪に反対する人々と連帯し、広範な労働組合や市民団体と共同して、イラク派兵を直ちに中止・撤退させ有事法制の発動をゆるさず、憲法と教育基本法の改悪を阻止するために全力で取り組むことを決議する。

2004年10月9日
日本マスコミ文化情報労組会議
第43回定期総会