視聴者を無視した地上放送デジタル化計画の見直しを求める決議

 昨年12月1日、東京、名古屋、大阪を中心とする3大都市圏で地上波のデジタル放送が開始されました。国の計画によれば、2006年までには全国でデジタル放送を開始し、2011年7月24日には現行のアナログ放送の電波が止まることが決められています。視聴者はその日までにデジタル放送対応テレビかチューナーを買わなければ、テレビを見ることができなくなります。すべての視聴者・市民にかかわるこうした重要な問題が、肝心の視聴者抜きで進められていることに大きな疑問を抱かざるを得ません。そもそもなぜ視聴者がデジタル放送への転換を強制されなければならないのかについて、納得のいく合理的な説明がなされてはいません。7年後には現行の放送が停止することになっていることを知る視聴者は未だごく少数にとどまっています。
 デジタル放送は、視聴者に高画質でゴーストのない放送を送ることが可能で、携帯端末での視聴も実現が期待されています。しかし現状のデジタル放送は、アナログ放送をデジタル波に転換しただけの、いわゆるアップコン放送が多くの時間帯を占め、チューナーを買った視聴者は、周囲に黒枠のついた「額縁」映像に悩まされ、プラズマテレビでは両サイドの「焼きつき」現象も問題となっています。携帯端末向け放送も放送開始はまだ先の話であり、デジタル放送のもうひとつの特徴であるマルチチャンネル放送もほとんど実施されていません。地上デジタル放送はまだ「実験」の段階を脱していないといえます。
 今年3月、総務省は「マスメディアの集中排除原則」を大幅に緩和し、隣接地域や東北、九州といったブロック単位での放送局同士の合併や経営統合に道を開きました。本来「マスメディアの集中排除原則」は、放送の機会を多くの者に与えることによって、言論の多様性・多元性を保障し、放送による言論・表現の自由を確保するために設けられたものです。放送局の合併、統合はスタッフや地域番組の削減にしかつながりません。国が進める強引なデジタル化計画によって、放送局の情報発信機能は破壊され、その不利益は視聴者が被ることになります。
 視聴者が無理なくデジタル放送に移行するためには、デジタル放送が視聴可能になってから十分なサイマル(並行)放送期間を確保すること、高齢者世帯など社会的弱者に対する配慮が最低限必要です。このまま現行の計画を進めてもその破綻は誰の目にも明らかです。
 今やテレビは国民の生活に不可欠の存在となっています。私たちは、アナログ放送の2011年打ち切りという今の計画をいったん撤回し、視聴者、国民の理解を得たデジタル化計画に見直すことを求めます。
右、決議する。

2004年10月9日
日本マスコミ文化情報労組会議
第43回定期総会