MIC第43回定期総会宣言

 米英軍の先制攻撃で始まったイラク戦争から1年半が経とうとしている。だが、イラク国内では依然として混乱状況が続き、米軍に対する激しい抵抗闘争が連日のように起きている。米軍の戦死者はすでに千人を超え、イラク市民も数万人にのぼる犠牲者が出ている。「テロと暴力」という報復の連鎖から抜け出せない泥沼のような状態が続いている。
 大量破壊兵器の保有が開戦の大義にされたが、パウエル米国務長官が上院公聴会で「いかなる備蓄も発見されておらず、われわれが発見することはないだろう」と証言し、開戦の根拠は完全に崩れ去った。アナン・国連事務総長も国連憲章に違反した不当な戦争だった、とブッシュ政権を批判した。
 この不法な戦争をいち早く支持し、自衛隊をイラクに派兵した小泉政権の姿勢が厳しく問われていることは言うまでもない。小泉政権の卑屈な姿勢を如実に示した事故が沖縄・宜野湾市で起きた。米軍大型ヘリが沖縄国際大学に墜落、事故現場が米軍の完全な管理下に置かれるという日米地位協定の従属性をあらためて浮き彫りにした。
 平和憲法を放棄し、戦争ができる国づくりを狙った改憲の動きも加速している。年金改革、自衛隊派遣、憲法を争点にした7月の参院選で自民が敗北し、民主が躍進した。共産、社民の護憲政党が議席を減らし、改憲勢力は衆参両院の3分の2を上回る議席に膨れあがった。憲法九条はいま、重大な危機に直面している。
 国家への忠誠や愛国心を植え付けようという教育基本法見直しの動きは、改憲の動きと連動したものとして受け止める必要がある。国民保護法も施行された。名称とは裏腹に国民を戦争に協力させる総動員法の性格が強い法律だ。国が選定した指定公共機関160法人の中に、NHKや民放などマスコミ20社が含まれていることも明らかになった。有事の際に政府の広報機関の役割を果たさなければならず、戦前の言論報国会のようにならないよう厳しく監視しなければならない。
 表現活動を規制する動きも相次いでいる。個人情報保護法の成立、自衛隊派遣にかかわる報道自粛要請、東京地裁の「週刊文春」出版差し止め命令、小泉首相の再訪朝・同行取材団から日本テレビを排除する問題に加え、自衛隊官舎にビラを配布した市民グループ、政党機関紙を休日に配った公務員が不当逮捕される事件も起きている。
 経済のグローバル化が進む中で、日本経済も深刻さを増している。企業の海外移転に伴う産業の空洞化は進み、地域経済の不振も続いている。大規模なリストラ、正社員から派遣などへの雇用の置き換えは拡大し、失業率は5%前後の高水準で推移している。自殺者も6年連続で3万人を超え、「心の病」を抱える人たちも急増している。
 小泉内閣が進める「構造改革」の下で、医療費の負担増、年金の給付削減など社会保障費は大幅に抑制され、今秋には介護保険料の引き上げも狙われている。政財界からは消費税アップを求める声が高まっている。
 こうした閉塞感が漂う中で、われわれを大いに激励する二つの動きがあった。著名な知識人たちが憲法を守ろうと「九条の会」を旗揚げしたこと、プロ野球選手会がストライキで立ち上がったことである。「スト」という言葉が死語になりつつある労働運動の現状をみた時、プロ野球選手たちの今回の闘いに大いに学ぶ必要があるだろう。
 戦後60年を前に、日本国憲法は重大な危機に直面している。閉塞状況を打破し、改憲の流れを押し止めるために、「九条の会」や市民と連帯して平和憲法が花開くよう闘いを展開しよう。
右、宣言する。

2004年10月9日
日本マスコミ文化情報労組会議
第43回定期総会