MIC第44回定期総会アピール

 今、私たちは歴史の大きな分岐点に立っている。
 9月11日におこなわれた総選挙で、与党は衆議院の3分の2を占める議席を獲得した。小泉総理は「郵政民営化の是非を問う」とひたすら絶叫し、反対派に「刺客」候補を送り込んで世間の耳目をさらった。本来、選挙で問われるべきことは一切合財「小泉劇場」の舞台から取り払われ、自民党は圧倒的な勝利を収めた。
 小泉総理は、「官から民へ」「大きな政府より小さな政府」、それが「郵政民営化」の核心だと叫んだ。「官」より「民」が、「大きな政府」より「小さな政府」がいいと、どこでだれが決めたのか。「官」とは、霞が関を支配する高級官僚のことではなく、額に汗して郵便を配達する二十七万人の郵政労働者にどこですり変えられたのか。「民」とは国民のことではなく、実は巨大民間企業のことではないのか。「小さな政府」で国家を統治しようとするなら、より強力で独裁的な政府が必要ではないのか。
 こうした疑問の声が、選挙期間中にマスコミから発せられることは絶えてなかった。
 日本という国は、どこへ向かおうとしているのか。

 選挙後の特別国会では、改憲手続きを審議する憲法調査特別委員会の設置が最優先で決定された。自民党は11月の結党50周年に際して、「新憲法草案」を発表する予定だ。憲法九条を改定し、自衛隊を軍隊に変え、海外で武力行使が可能となる道筋がいよいよ条文レベルで示される日が近い。
 所得の格差が急速に拡大している。「一億総中流」と言われ、世界に類を見ないほどの平等を誇ったかつての日本の姿はもはや見る影もない。不平等度や貧困率は今やアメリカに次ぐ高さだ。4百万人を超すとも言われる、定職につけないフリーターやニートと呼ばれる若者たちが増え続け、若年層の貧困という戦後初めての事態に日本は直面している。
 強者のみが独り勝ちし、弱者をこれでもかと痛めつける「新自由主義改革」はいずれ破綻するだろう。競争原理、市場原理にすべてを委ねれば、社会が必ず良くなると幻想するのは、あまりにも古典的、あまりにも楽観的だ。しかし私たちは「改革」の破綻を、座して待ち続けるわけにはいかない。貧困はまたたく間に拡大し、労働者はもっと痛めつけられ、お年寄りは老後の生活に困窮し、職に就けない若者たちは遅からず兵士として戦場に送り込まれるだろう。

 総選挙の中、労働組合は「特定利益団体」と呼ばれ、「抵抗勢力」の象徴のごとく扱われて、カヤの外に置かれた。弱者が団結して強者に立ち向かうべき労働組合が、強者のための「改革」を推し進める側から忌み嫌われるのは当たり前だ。問われなければならないのは、労働組合に入る術すら持たない、圧倒的多数の労働者の「利益」を代表できる存在として、労働組合が復権できるかどうかだ。

 自由にものをいえない空気が世の中を覆い始めている。自由な報道を規制しようとする動きがますます強まっている。私たちマスコミや文化情報産業に従事する労働組合の責任は重い。
 戦争をする国になるのか、平和な地球を創るのか、私たちの前に道は二つある。今こそ怯むことなく、勇気を持って私たちの声をあげよう! 働くもののいのちを削る競争社会に、確信を持ってNOを突きつけよう! 平和と正義を実現するために、MICの運動を今こそ大きく前進させよう!

2005年10月8日
日本マスコミ文化情報労組会議
第44回定期総会