労働法制改悪に断固反対する決議

 労働法制のさらなる大改悪が進められようとしている。厚生労働省は六月に「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」を労働政策審議会労働条件分科会に示した。この分科会では厚生労働省が来年にも実施したいとしている「労働契約法」の新設と労働基準法の見直しが審議されている。
ところがこの「素案」と呼ばれる厚労省が示した案は、労働行政が推進してきた労働法制の規制緩和をさらに徹底して進めるものとなっており、労働団体はむろん、法曹界からもいっせいに断固反対の声があがっている。使用者側からも残業代の割増率アップに強い反発を示し、このため審議は一時中断する事態となった。
 再開された9月11日の分科会に厚生労働省が示した「労働契約法制及び労働時間法制の今後の検討について」(たたき台)は使用者側には一定の配慮を示したものの、労働側が反対してきた改悪部分はほとんどそのまま「素案」を踏襲したものとなっている。

 厚労省案は労働者への保護措置を大きく後退させる改悪をさまざまにおこなおうとしているが、中でも私たちにとってとりわけ重大なのは「自律的労働」制度の導入として、多くの労働者から労働時間規制を奪おうとしている点だ。「素案」では「自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就く者に、一層の能力を発揮できるように」するとして、残業や休日出勤、深夜業の割増賃金の規定を適用しないとしている。残業代の支払いを免除することが何ゆえに「一層の能力を発揮できるように」なるのか、まったく意味不明であるが、このような制度が導入されれば、現状でさえ野放し状態とも言うべき長時間過密労働が一層深刻化することは疑いない。
 この制度は財界が長年にわたって強く導入を求めてきた「ホワイトカラー・エグゼンプション」をいよいよ法律の上で具現化しようとするものだが、日本経団連はその対象者を「年収四百万円以上の労働者」とすることを求めている。厚労省の「素案」では金額の明示こそないものの、賃金の額が「一定水準以上」を対象とするとし、さらに「年収が特に高い労働者については、労使の実質的な協議を経ずに対象労働者」とするとしている。使用者から交渉義務まで免除しようとする厚労省の感覚には驚くほかない。
 既に多くの労働者が、名ばかりの肩書きを与えられて「管理職」とされ、残業代を召し上げられて実質的なただ働きを強いられているのが日本の企業の現状である。深刻な健康障害の原因となっているこうした現実に改善のメスを入れることこそ、労働者保護のために本来存在する厚生労働省のなすべき仕事であろう。

 「素案」は他にも、不当に解雇されても復職させることなく金銭で解決できる「解雇の金銭解決」、不利益変更であっても過半数組合か過半数代表者と合意した場合には、個別の労働者の意思にかかわらずすべての労働者との合意が成立したものとみなす規定の導入など、到底看過できない改悪をさまざまに含んでいる。
 厚生労働省は当初7月に予定していた審議会の「中間取りまとめ」が頓挫しているにもかかわらず、年内の審議会答申、来年の国会上程というスケジュールを未だ崩していない。私たちはこうした労働法制の改悪を全国の労働組合、労働団体と連帯して阻止するとともに、すべての労働者が人間らしく安心して働ける労働法制の確立を求めて奮闘していく決意をここに表明するものである。

右、決議する。


2006年9月30日
日本マスコミ文化情報労組会議
第45回定期総会