労働者供給事業(労供事業)とは
  「労働者供給」と「労働者派遣」のちがい
  「労働者派遣法」による労働者の保護と労働者供給事業


労働者供給事業(労供事業)とは
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 労働者供給事業は、職業安定法第45条に基づいて労働組合等が行う事業です。
 職業安定法第44条は、「何人も、次条(第45条)に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」と規定し、労働者供給事業の禁止をうたっています。同法第45条は、「労働組合等が、労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる」として労働組合等による労働者供給事業を認めています。
 しかし、近年、多くの産業、業種で、労働者を他人に使用させ、料金を得る派遣が広がり、派遣される労働者の労働実態を悪化させてきました。
 この派遣的労働が職安法第44条で禁止されている「労働者の供給」にあたることは疑う余地が無いところです。
 そこで政府はこうした派遣的労働を追認し、合法化するために、労働者の保護を建前にして「労働者派遣法」を19867月に施行しました。
 さらに、199912月には「改正派遣法」が施行され、それまでの専門的知識や経験が必要な26業種以外でも派遣が出来るようになりました。

「労働者供給」と「労働者派遣」のちがい
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 「派遣」と「供給」とではどこが違うのでしょうか。
 両者とも、何らかの形で自己の管理下(統制下)にある労働者を他人の指揮・命令のもとで他人に使用させるという点では同じものです。
 異なる点は、管理・統制の方法です。
 歴史的にみて、労働者の「供給」には、供給業者による労働者の強圧的支配が伴っていました。その結果、「他人の就労に介入して利益を得る」中間搾取が発生して、「労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定する」(労働基準法第2条)ことなどは期待すべくもなく、労働者を劣悪な労働実態におとし入れてきました。
 労働組合による組合員の統制は、法内労働組合として規約に基づいた民主的なもので、強圧的統制とは根本的に違うものです。
 労働組合による労働者の供給事業は、職安法第44条を守るために、すなわち、強圧的支配による労働者の供給を排除し、雇用の民主化をはかり、その業界を浄化するために、きわめて重要な役割を果たすものです。
もちろん、営利事業ではありませんから中間搾取は生じませんし、労働協約に基づく労働ですから、強制労働も発生しません。
 一方、派遣法における派遣業者の派遣労働者に対する統制は何でしょうか。それは雇用です。
 派遣業者は、派遣労働者を雇用することより支配・従属の関係が生まれます。すなわち前近代的強圧的支配に代わって、近代的雇用の装いで「自己の支配下の労働者を他に使用させる」労働力需給システムが登場し、政府によって公認されることになったのです。


労働者供給
労働者派遣




「労働者派遣法」による労働者の保護と労働者供給事業
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 「労働者派遣法」は、派遣される労働者の保護が建前になっています。しかし、根本的な問題は、使用者と雇用者の分離です。
 近代的な労使関係は、なによりも労使の対等性が前提です。この派遣法のもとでの「雇用」には「対等な労使関係」以前に、「労使関係」すら存在しません。そして、派遣先の「使用者」には、「対等な労使関係」の保障となる団体交渉に応じる義務が明らかにされていません。このような状況では、今後ますます増加することが予想される派遣労働者の保護につながらないことは明白です。
 しかし、労働者派遣法以降とくに一般(登録型)派遣は事務職を中心に広がり続けています(下表参照)。多くの主要な労働組合が、「派遣労働は職安法違反」、「派遣労働に反対」と言うだけで、増大しつづける派遣労働者の組織化・受け皿作りには必ずしも十分に取り組んでこなかったことがこの派遣業の蔓延、隆盛の結果を招いてきました。
 労働組合の責任が問われています。いまこそ派遣業の対象となっている業種の産業別労働組合が、職安法第45条の「労働者供給事業」を開始すべきではないでしょうか。それが、無制限なピンハネに歯止めをかけ雇用の民主化をはかるため、労働組合に残された唯一の道です。

派遣先件数
労働者数
派遣料金
 (8時間換算)
派遣賃金
 (8時間換算)
賃金率
一般(登録型)派遣
577,780
1,074千
17,433 11,927
68.4%
特定(常用雇用型)派遣
111,364
223千
24,541 15,564 63.4%
合計
50,362
1,297千人
     




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